Course1 ささみとみょうがの炒め物
第五皿 由良
1. 食堂の片隅で、めんつゆと引き立て役の話
由良が茄子を切っている横で、日奈子が冷麦と素麺を見比べていた。
「夏らしいですね」
「じゃあ、夏らしい話をひとつ」
由良は包丁を置いた。
「バーベキューって何味だと思う?」
「ケチャップとウスターソースを混ぜたような……」
「マスタード?」
「ありそうです」
「焼肉のたれ?」
「それも」
「塩とレモン?」
「もう何でもありですね」
由良は笑った。
「だよね。でも、バーベキューって本来は味じゃなくて調理法なんだよね」
「あ」
「語源はスペイン語のバルバッコア。さらに遡ると、カリブ海地域の言葉に行き着くとされてる」
「へえ」
「で、『炉』を意味するラテン語が focus。そこからフォカッチャとかフーガスとか――」
由良は一度黙った。
「……まあ、今日は素麺の付け合わせなんだけど」
日奈子が笑った。
「急に戻ってきましたね」
「私も途中で、何の話してるんだろうって思った」
「何の話でしたっけ?」
由良はみょうがを薄く切りながら答えた。
「夏」
「広すぎます。しかも栗須さんに似てきましたね」
「だよね……」
二人は顔を見合わせて笑った。
「夏になると、どうしてもそうめんや冷麦だけで済ませたくなるでしょ?」
「確かに。」
「でも、それだけじゃ栄養が偏っちゃう。」
由良はささみを手に取る。
「だから今日は、主役じゃなくて、主役をもっと美味しくする料理。」
2. そうめんを引き立てる夏野菜とささみの香ばし炒め
🍳 材料(2人分)
* ささみ:1パック
* 茄子:1本
* 油揚げ:1/2枚
* みょうが:3本
* ごま油:適量
🍴 作り方
① 下ごしらえ
特別な相手とのデート前にネイルやエステへ行く見えない努力のように、ささみの筋を丁寧に取り除く。ささみは斜め切り、茄子は扇形、油揚げは1cm幅、みょうがは薄切りにする。
② ごま油で順に炒める
ごま油でささみを八割ほど火を通し、茄子を加えてしんなりするまで炒める。油揚げを加え、最後にみょうがをさっと炒める。
③ 盛り付け
器に盛り、そうめんや冷麦と一緒に、めんつゆへくぐらせながらいただく。
💡 ワンポイント
この炒め物には味付けをしません。
めんつゆと合わせて初めて完成する一皿です。そのため、単体で食べても美味しくありません。
3. 日奈子の食レポ
日奈子はそうめんと一緒に炒め物をめんつゆへくぐらせる。
「なるほど……。」
ささみの旨味。茄子のやさしい甘み。油揚げのコク。
そして最後に、みょうがの爽やかな香り。
「そうめんだけでは物足りなかったのが、一気に食事になります。」
由良は嬉しそうに微笑んだ。
「引き立て役って、大事だから。」
「この料理だけ食べても完成しない。でも、そうめんと合わせると驚くほど美味しい。」
由良は静かに頷く。
「人も、そういうことってあるよね。」
4. 日奈子のペアリング
🌾 おすすめの一杯:冷たい麦茶
香ばしい麦茶は、ごま油の風味やみょうがの清涼感を邪魔せず、夏らしい最高の組み合わせになります。
🍶 夜なら:辛口の純米酒(冷酒)
めんつゆの出汁の風味ともよく調和します。
© 2026 Nishikawa. All Rights Reserved.
本記事に掲載する文章・歌詞・画像・楽曲等の無断転載、複製、改変、再配布はご遠慮ください。
掲載レシピを参考に、ご自身で料理を作って楽しんでいただくことは歓迎します。
生成AIによる個人的な読解・解説・考察も歓迎します。
