…白の余白 秋香る +🎧️
一枚の風が

秋香る。
窓を開けたとき、
風が一枚、
薄い紙のように部屋へ滑り込んできた。
その風のなかに、
乾いた草と、
少し湿った土のような匂いがあった。
秋だ、と気づく。
その瞬間、
胸の奥で
小さな鍵が回るような音がした。
理由はない。
けれど、
誰もいないはずの廊下の奥に
暗がりがひとつ増えたような気がした。
時計の針は進んでいる。
カーテンは揺れている。
机の上の影が、
さっきより少しだけ長くなっている。
そんな、
目に見えるほどでもない変化が、
いつか突然、
何もかも違う場所へ
連れていかれるのではないかと思う。
秋の香りを吸い込むたび、
知らない駅に
ひとりで降り立ったような気持ちになる。
行き先も、
帰る場所もわかっているのに、
次に来る電車だけが
どうしてもわからない。
秋香る。
その香りは、
閉じていた扉の隙間から
冷たい空気が漏れてくるように、
まだ見えない時間が
すぐそこまで来ていることを知らせている。
私は扉を開けていない。
それでも、
向こう側にはもう
何かが待っている気がする。
だから、
息を
少しずつ止める。
秋の香りが、
胸の奥まで届いてしまわないように。
2026/09/18 曲をつけました
見つけてくれてありがとうございました

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