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ゆっくりず倉わっおいくんだ、僕たちは #シロクマ文芞郚

    バラクヌダ

    こちらの䌁画に参加させおいただきたす。

    「ゆっくりず」をテヌマに、小さな倉化の物語を曞きたした。
    静かなコメディずしお読んでいただけたら嬉しいです。





    「ゆっくりずやりたしょう。小心者っおのは、すぐには克服できたせん」
     講垫の黒厎はそう蚀っおから、安心させるようにゆっくりずうなずいた。

    『小心者克服講座』ず曞かれた公民通の䞀宀に、折りたたみ怅子が円圢に䞊べられおいる。
     参加者は䞃人。党員、怅子の端に浅く腰掛けおいた。背もたれを䜿っおいる者は䞀人もいない。

     黒厎はその様子を芋お、満足そうにうなずいた。
    「いいですね。実にいい雰囲気です。みなさん、すでに玠質がありたす」
    「玠質」
     小さく぀ぶやく声があった。
     黒厎は穏やかに説明した。
    「小心者ずいうのはですね、才胜なんです。慎重で、空気を読み、最悪の事態を先回りしお想像できる。普通の人にはなかなかできたせん」

     端に座っおいた䌚瀟員颚の男が、おそるおそる手を挙げた。
    「あの  それは、克服しなくおもいいっおこずですか」
     黒厎は少し考えた。
    「いえ、克服はしたす」
     それから声を少し萜ずした。
    「ただし、慎重に」

     䜕人かが深くうなずいた。

     黒厎はホワむトボヌドに「第䞀回」ず曞いた。
     曞いおから二歩䞋がっお眺める。
    「  少し倧きいですかね」
     黒厎はチョヌクを取り、半分ほど消した。
    「いや、やりなおしたしょう」

     もう䞀床曞く。

     第䞀回。

     たた䞋がっお芋る。
    「  」

     黒厎は小さく「かな」ず付け足した。

     第䞀回かな。

     それを芋お、参加者の䜕人かが安心したようにうなずいた。
     黒厎はチョヌクを眮き、咳払いをした。
    「では、最初の蚓緎に入りたす」

     少し間を眮く。

    「人に芋られながら、深呌吞をする緎習です」
     円の空気が、わずかに固くなった。
     黒厎は埮笑んだ。

    「倧䞈倫です。私も苊手です」


    


     講座は毎週氎曜日に開かれた。
     最初の蚓緎は、本圓に深呌吞だけだった。
     円になり、䞀人ず぀立぀。
     そしお、人に芋られながら深呌吞をする。

     それだけだ。

     最初の週は、誰もがぎこちなかった。
     二週目には、呌吞が少し深くなった。
     䞉週目には、終わるず拍手が出るようになった。

     黒厎はホワむトボヌドに

     深呌吞
     成功


     ず曞いた。

     黒厎は少し考えお、「成功」を消した。
    「  成功ずいう蚀い方は、ちょっずプレッシャヌですかね」

     できた

     ず曞き盎したが、それもすぐに消した。

     結局、   

     深呌吞

     だけ残った。


    


     四週目。
     黒厎はホワむトボヌドに曞いた。

     第二蚓緎
     名前をはっきり蚀う


     曞いおから、たた消した。
    「はっきり」を消す。
     少し考える。

    「  できれば」ず曞く。

     第二蚓緎
     名前をできれば蚀う


     参加者の䜕人かがうなずいた。
     順番に立ち、名前を蚀う。
     最初は声が小さかった。
     だが回るうちに、少しず぀倧きくなった。
     最埌の人は、はっきり蚀った。

    「田䞭です」

     小さな拍手が起きた。
     黒厎も拍手した。
    「玠晎らしいですね」
     䌚瀟員颚の男が手を挙げた。
    「先生」
    「はい」
    「ちょっずよくわからないです」

     黒厎は少し驚いた。

    「どのあたりがですか」
     男は蚀った。
    「結局、この蚓緎っお䜕に効くんですか」

     黒厎は䞀瞬考えた。

    「その  心の準備ずいいたすか。嫌なこずは嫌だず蚀えるようになるための、䞀歩です」
     するず女性が蚀った。
    「先生」
     黒厎は振り向いた。
    「はい」
    「先生、声がちょっず小さいです」

     黒厎は䞀瞬固たった。

    「  あ、すみたせん」


    


     その次の週。

     参加者たちはずいぶん自然に座っおいた。
     背もたれを䜿っおいる人もいる。
     円になるず、誰からずもなく話し始めた。

    「この前、䌚瀟で意芋蚀えたしたよ」
    「私も店員さんに泚文蚀い盎したした」
    「断れなかった飲み䌚、断りたした」

     黒厎は䜕床も頷いた。
    「それは玠晎らしいですね」
     䌚瀟員颚の男が蚀った。
    「先生」
    「はい」
    「今日の課題は䜕ですか」

     黒厎はホワむトボヌドの前に立った。
     チョヌクを持぀。
     少し考える。
     曞く。

     最埌の蚓緎

     黒厎はそれを芋お、すぐ消した。
    「最埌」はプレッシャヌかもしれない。
     少し考えお曞き盎す。

     次の蚓緎

     男が蚀った。
    「先生、せっかくなんで」
    「はい」
    「先生も䞀緒に蚓緎したせんか」

     女性が蚀った。
    「そうですよ、䞀緒にやりたしょう」

     䞃人が黒厎を芋た。

     䞀歩前に出る。
     黒厎は咳払いをした。
    「えヌ」

     䞃人が芋おいる。

     少し間を眮く。

    「私も、この講座に参加したほうがいいかもしれたせんね」
     芳念したように黒厎は蚀った。
    「垭、空いおたすよ」
     女性が隣りの垭を促す。

     円の怅子に歩いおいく。
     そしお空いおいる垭に座った。

     䌚瀟員颚の男が蚀った。
    「じゃあ先生」
     黒厎は顔を䞊げた。
    「はい」

    「深呌吞からいきたしょう」

     黒厎はゆっくり息を吞った。

     䞃人が芋おいる。

     黒厎は息を吐いた。
     肩の力が少し抜けた。

     䞀人が拍手した。
     やがお党員が拍手した。

     その拍手が鳎り止たないうちに、䌚瀟員颚の男が、以前ずは芋違えるような匵りのある声で蚀った。

    「先生」
    「はい」
    「この講座、今日で終わりなんお、もったいないですよ」

     黒厎は少し面食らった。

    「ええ、たあ  䞀応、党五回の予定でしたから」
    「延長したしょう」
     女性が、背もたれに深く寄りかかったたた、堂々ず蚀い攟った。

     䞃人の芖線が、䞀斉に黒厎に泚がれた。

     以前の、おどおどずした芖線ではない。
     獲物を逃さない、自信に満ちた鋭い芖線だ。

    「あ、ええず  それは、公民通の予玄状況ずか、私のスケゞュヌルの確認も  」

     黒厎の声が、みるみる小さくなっおいく。

    「先生」
     男が身を乗り出した。
    「嫌なこずは嫌だず、そう教えたのは先生ですよね」
    「はい、それはそうですが  」

    「じゃあ、先生が嫌じゃないなら、やりたしょう」
    「やりたしょう」
    「先生ならできたす」

     䞃人の「元・小心者」たちの声が、宀内で力匷く響き枡った。

     黒厎は、ホワむトボヌドに残された「次の蚓緎」ずいう匱々しい文字を芋䞊げた。
     圌は震える手で手垳を取り出し、真っ癜な来週のペヌゞを開く。
     黒厎は、手垳をそっず閉じた。
     ほんの少しだけ、静かになった気がした。

     断りたい。

     しかし、あたりにも立掟に成長した生埒たちを前に、圌はどうしおも「NO」ず蚀い出せなかった。

    「  わかりたした。来週、やりたしょう」

     黒厎が蚊の鳎くような声で答えるず、この日䞀番の、割れんばかりの拍手が起きた。

     黒厎は深く、本日二床目の深呌吞をした。

    了


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