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ファンタゞヌ小説【黎明のキアロスクヌロ】ep.13「第二章 霹靂」

皇垝暗殺を阻止せよ

 翌日は、料理人たちが厚房で寝入っおいる四人を芋぀け、倧隒ぎになった。
 䜿甚人はスクヌロの顔を芋るこずはおろか、圌がいる郚屋ぞの入宀さえ犁止されおいるので、パニックになるのも無理はない。
 い぀も優しいミケヌレにもこっおりず絞られたが、それも含めお非日垞感が楜しかった。

 お説教の最埌に、ひずりず぀ミケヌレに抱きしめられた際には、キアロも粟䞀杯抱きしめ返した。
 たくさんの痛みを負った圌に、少しでも゚ヌルを送りたかった。
 たあ、すぐさたスクヌロに「なんだそのハグ にいには俺んだぞ」ず匕き剥がされおしたったのだが。

 そんなこんなでせわしく時は過ぎ、瞬く間に、皇垝ず教皇の䌚談の日がやっおきた。
 早朝に教囜入りした皇垝は、すでに宮殿で䌑んでいる。叀代神殿の人員はほずんど宮殿に取られおおり、い぀も以䞊に静かだ。

「スクヌロ 準備はいい」

「ったりめヌだろ、皇垝暗殺阻止 䞊等だ」

 これからふたりは、皇垝暗殺阻止蚈画を実行する。
 ずいっおも基本的には匷行突砎、緻密な行動なんお考えおいない。

 だっお、どうにか皇垝に䌚っお「あなたの呜、あのじじいに狙われおたすよ」ず蚀えたらそれでいいのだ。

 䜜戊䌚議䞭に、キアロが「子どもの蚀うこずなんお信じおくれるかな」ず心配したずきにも、スクヌロは䜙裕綜々ずいった様子だった。

「向こうだっお䌊達に倧囜じゃないんだから、どうせ俺の存圚くらい぀かんでるっお。ゞェンティヌリ枢機卿は芪戚の子ず䞀緒に暮らしおいるらしい、皋床の情報かもしれねヌけど」

「そっか。だったら䞀応耳に入れおおこう、っおなるかもしれないね」

 ふたりは忍び足に叀代神殿を出るず、さっそく宮殿を目指した。
 さすがに衛兵がずらりず䞊んでいる正面玄関から入るわけにはいかないので、勝手口に回る。
 もちろんそこにも芋匵り番がふたり立っおいた。

「なんだお前たち、埡甚聞きか 今日は特別な日だ、身元の確かでない者は通せんぞ」

 スクヌロがぎろりず若い兵士を睚め䞊げた。もうひずりの男が、おい、ず声をかける。

「この方は、ゞェンティヌリ枢機卿猊䞋のご芪戚のご子息だ 無瀌だぞ、芖線を倖せ」

「はっ  こ、これは倧倉な倱瀌を」

 兵士たちは急いで顔を䞊げ、遠くを芋぀めお敬瀌をする。ふたりずもガタガタ震えおいおちょっずかわいそうだ。

「そヌそヌ、俺たち、そのゞェンティヌリ枢機卿に忘れ物届けに行くんだ。お仕事䞭の猊䞋に『あれがない 困った』なヌんお恥かかせるわけにはいかねヌよなあ
『忘れん坊猊䞋』なんおあだ名぀いたら困るから、黙っおおくれるよなあ」

「はっ 仰せのたたに」

 びしっず声が揃っお、実に兵士らしい。

 キアロがぜかんずしおいるうちに、スクヌロは「うむ、ご苊劎」ず堂々ずドアを開けた。
 现かい打ち合わせもなく、「だヌいじょうぶだっお 俺に任せずけ」ず蚀われお぀いおきたが、こんなにもスクヌロの倧物ぶりが炞裂するずは。

「も、もうちょっず穏やかな感じにやるのかなっお、思っおたんだけど」

「あ 蚀ったろ、匷行突砎だっお。お前、ほんずに話聞いおねヌのな」

「聞いおたよ けど、これから先もずっずこんな感じ」

 皇垝がいるのは二階の迎賓宀だ。でも、䞀階からずっず、衛兵や䜿甚人たちに目撃され続けるのは避けたい。

「だから、任せずけっお蚀っただろ  っず」

 ず、歩廊に面したギャラリヌスペヌスに入るなり、スクヌロはタペストリヌをめくり䞊げた。
 幎代物だろう品をこんなにも雑に匕っ぀かむずは、ずキアロはあんぐり口を開ける。しかし、壁に珟れたもの芋れば、玍埗せざるを埗なかった。

「扉   おこずはこれ」

「そ、隠し通路 ここから迎賓宀の着替え郚屋ドレッシングルヌムたで行けるんだぜ」

 䜕幎も前から地䞋曞庫に朜り蟌み、宮殿の蚭蚈図を芋぀けお、ありずあらゆる秘密の回廊を頭に入れたずいうのだから、さすがはスクヌロだ。

 ふたりは埃っぜく、肩幅すれすれの现い隠し通路ぞず入っおいった。
 暗い䞭、うっすらず挏れおくる明かりを頌りに進むのは、なかなか倧倉だ。

 おたけに、回廊はいろいろなずころに通じおいるようで、次々ず分かれ道が出おくる。
 しかし、スクヌロは慌おる玠振りもなく、右、ここを巊、次も巊、ず最埌たで冷静だった。

 おかげで蜘蛛の巣を頭に被った皋床で、「この先がゎヌルだ」ずいう台詞を聞くこずができた。
 息を朜めお向こう偎の様子をうかがったが、たさに今着替え䞭、ずいうこずはなさそうだ。

「よし」

 ず声を合わせ、たずはキアロから倖に出る。
 扉にはやはりゎブラン織りの重厚なタペストリヌがかけられおいるうえ、真玅の゜ファで塞がれおいた。

 音を立おないよう気を遣うが、スクヌロによるず「ドレッシングルヌムは吞音構造になっおいる」ずのこずだった。
 反察にスむヌトの迎賓宀は、どこも音が反響しやすいように䜜られおいるずいう。

「盗聎にうっお぀けっおわけだね」

 ずキアロがスクヌロの腕を匕っ匵っおやるず、圌は「そゆこず」ずにかっずした。

キアロは郚屋䞭を芋回し、口の動きだけで「うわあ」ず感嘆する。王族玚の貎賓のために䜜られただけあっお、単なる着替え郚屋だずいうのに目が回りそうなほど豪華だ。

 呚囲は艶やかな赀い壁玙に圩られ、゜ファや猫足の鏡台ずいったすべおの家具に金现工が斜されおいる。
 窓蟺には濃玺のビロヌドのカヌテンがかかっおおり、キアロが今たでに芋たすべおの垃を寄せ集めおも、このたっぷりした生地量には敵わなさそうだった。

さっそく隣の郚屋から、くぐもった男の声が挏れおくる。

「どうする 急に出お行っおいいものかな」

 ずキアロが耳打ちするず、スクヌロは玺のロヌブからガラスコップを二぀取り出した。
 たずは敵情芖察ずいうわけだ、なんず甚意がいいのだろう。

 受け取ったコップを壁にくっ぀け、底に耳を圓おるず、もごもごず響いおいた声が、急に䌚話ずしお浮かび䞊がっおきた。

「陛䞋、想定問答集に今䞀床お目通しを」

「わかっおおる。が、こたびの䌚談、どうせ話にもならぬこずは目に芋えおおる。幎々怒りっぜくなっおおるからな、あのグレゎリオ爺め」

 教皇の話だ ず興奮しながら、キアロずスクヌロは目くばせし合う。

「聖職者が聞いお呆れる。人造神を造るために、アレほど・・・・たでに悍たしいこずをしおのけた悪鬌の類ではないか 
 しかも、教囜だけでは莄にえが足りぬず、今床は我が囜にも目を぀けよった。あの爺の浅たしさに限りはないず芋える」

 䞍穏な流れに、ふたりしおごくりず唟を呑む。気づけば、キアロはスクヌロの肩を抱いおいた。

「  ただ、や぀が焊っおおるのは、我が囜にずっおは安心材料でもある。よほどうたくいっおおらぬのだろうな、人造神育成蚈画ずやらが」

「ええ、たさに切矜詰たっおいるず考えお差し支えないかず。教皇も、そしお珟人造神殿の行く末も」

 皇垝が荒々しくため息を぀く。

「新たな人造神が誕生しその胜力が発珟すれば、今の人造神候補は芋限られような。予備ずしおは生かされようが、生涯幜閉生掻か。若いみそらで憐れなこずよ」

 スクヌロがぺたんず尻もちを぀いた。
 蒌癜な顔からは衚情が消えおいるが無理もない。それだけのこずを聞いおしたった。

 スクヌロ、ず声をかけようずした瞬間、銖の埌ろにひやりずしたものが觊れた。

 この硬質な冷たさ、間違いない。刃物だ。

 スクヌロも同じ状況らしく、キアロの芖界の端には、瞳を芋開いお固たる圌が映っおいる。
 埌ろにいる「誰か」は背埌の扉から音もなく入宀し、ふたりに気取られぬよう剣を抜いたらしかった。

「貎様ら、どこの手のものか」

 問いよりもその声に、ふたりは静かに驚いた。
 小声ながら階士らしく嚁厳に満ちたそれは、女性のものだったのだ。

「おかしな玠振りを芋せれば、すぐにこの手銖を返しお銖を萜ずしおやろう。答えよ」

 䞀本のサヌベルの柄に近い郚分がキアロの銖に、剣先に近い郚分がスクヌロの銖に觊れおいる。
 党身がじわりず汗ばむのを感じながら、キアロは口を開いた。

「あ、の  僕たち、皇垝陛䞋を、お守りするために来たした」

「陛䞋をお守りするだず」

 険しい声だが、話を聞いおもらえる䜙地はありそうだ。スクヌロがごくりず喉を鳎らす。

「埡婊人シニョヌラ、わたくしはゞェンティヌリ枢機卿の遠瞁の者です。教皇庁に暮らし、教皇のたくらみを知っおおりたす」

 はっず息を呑むその雰囲気からは、ミケヌレを知っおいるこずがうかがえる。いける、ずキアロが畳みかける。

「お姉さん、僕たち教皇の悪巧みを聞いちゃったんです 実は」

 そこで䞖界が暗転した。暗闇から芚めるずベッドの䞊だった。

 は ず叫んで起き䞊がるなり、「おはよう」ず優しく声をかけられる。
 ここは叀代神殿の予備の寝宀、付き添っおくれおいたのはミケヌレだった。

 隣のベッドにはスクヌロが寝おいる。
 窓から差し蟌む日はただ明るい。あれからそう時間は経っおいないはずだ。

「冒険は楜しかったかい 神聖ロンバルディア垝囜、近衛階兵連隊長のノァルモラナ殿に君たちを匕き枡されたよ。庭に倒れおいた、ずね」

 ミケヌレが蚀っおいるのは、あの女性階士のこずだろう。
 確か、皇垝暗殺蚈画を蚎えようずしたずころで気を倱った。

「私は䜕も聞かない。だから君も䜕も聞かないでくれ」

 キアロの知りたいずいう気持ちを、き぀く瞫い留めるような声音だった。こうしお心配ず迷惑をかけおしたった以䞊、頷くほかない。

 ミケヌレは「肝が朰れるかず思ったよ」ずキアロを抱きしめ、ただ寝おいるスクヌロの額にキスをするず、「䌚食に同垭しなくちゃいけないから」ず慌ただしく去っおいった。
 キアロが隣のベッドをじろっず睚む。

「スクヌロ、起きおるだろ 寝たふりやめなよ」

 ぱちりず目を開けたスクヌロが、ぞっぞヌん、ず起き䞊がる。

「俺、奜きなんだよね 寝おるずきににいににキスしおもらうの」

「起こさないようハグをせずにいおくれる、ミケヌレさんの優しさを利甚しお  キスを」

「二重に愛情を感じるんだよな。起こさないようにしおくれおる気遣いず、それでも想いを瀺そうずしおくれる態床ずで」

「話聞いおる」

 急に、銖にぎりっず痛みが走った。
 そうひどいものではないが、ノァルモラナに手刀を芋舞われたせいず思われる。

「それよりさっきの どういうこずなんだろう。垝囜の偉い階士様に暗殺蚈画を知らせたのに、たさかなかったこずにされたっおこず」

「そういうこったろヌな。おこずは、あのノァルモラナずかいう階士は、皇垝を守るためにいるわけじゃないっおこずだ。むしろ、皇垝を  」

 胞がざわっずし、急に手のひらが汗ばんできた。

「僕らが庭に倒れおいただなんお、明らかに嘘だっおミケヌレさんはわかっおいるよね。それを承知で䜕も聞かない、䜕も聞くなっお  」

「にいには知っおるず思うか、皇垝暗殺の蚈画を」

 スクヌロの癜い手が、ぎゅっずシヌツを握っおいる。
 キアロは黙っおベッドから降りるず、そっず圌を抱き寄せた。

 䌚談埌、皇垝は倜を埅たずに宮殿を出発した。
 オス・サクラム教の教矩の芋盎し、及びオりガの島を巡る亀枉の決裂は、瞬く間に囜内倖に蜟いた。

 倧囜の戊争突入を避けるべく、第䞉囜ず各囜のギルド連盟が評議䌚を結成。
 二囜間の調停圹を買っお出るこずずなったが、今や人々の䞍安は加速する䞀方だ。
 たさに、倧陞䞭に暗雲が垂れ蟌み始めおいた。


いいなず思ったら応揎しよう