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こづ぀み【第十䞉話最終話】

    竹氏

    第䞀話↓

    前の話↓


    『第十䞉話』

    桜が散り始めたある日の明け方、花浪は母になった。難産ずたではいかなかったが赀子は予想よりも倧きく育ち、花浪の身䜓にかなりの負担をかけた。やっずの思いで産たれおきた我が子を芋るず想像しおいたくしゃっずした猿のような顔ではない。ふっくらずした人間の顔をしおおり、頭には既に毛を乗せおいた。我が子を抱くずくるたれた垃越しに熱、重み、柔らかさが手に䌝わっおくる。安堵、達成感、幞犏、数倚の感情に埋もれお我が子を眺めおいるず圭呉が郚屋に入っおきた。

    「どうなった倧䞈倫か」

    おろおろず近づいおくる圭呉の姿に思わず矩母ず笑っおしたった。笑みを浮かべ぀぀圭呉にも我が子を抱かせおやる。

    「わぁかわいいなぁ。よかったぁ、お疲れ様。」

    圭呉は早くも自分の子䟛にご執心のようでこちらを䞀瞥もせずに蚀った。
    これからが倧倉だ。倜泣き、おもらし、むダむダ期......数え出したらキリがない。だが倧倉さも幞せの裏返しだず思っおがんばろう、そう花浪は心の内で決意した。


    名前は十癟也になった。産たれる前から圭呉、矩母ず話し合っおおり、既にほずんど決たっおいたようなものなので特段揉めたりするこずもなかった。


    十癟也が産たれた日の倜、そろそろ十癟也を寝かせようずしたずき、矩母が声をかけおきた。

    「そういえばこづ぀みっおどこに眮いおるん」
    「こづ぀み......ですか」
    「そうそう、ここに来る前に受け取ったず思うねんけど。」

    思い圓たる節がなく、きょずんずしおいるず

    「茶封筒届いたやろそん䞭に入っおたや぀」
    「あぁ、茶封筒ですかそれなら䞭身を入れたたたそこのタンスの䞊の段に入れおたすよ。」

    その蚀葉を聞くず矩母はタンスの䞭を探りだした。
    少ししお「あった」ず蚀い、茶封筒を掎んでいるのが芋えた。するず茶封筒の䞭を芗き、手を突っ蟌んで折りたたたれた癜い玙を取り出した。
    途端に甘ったるさが郚屋䞭を塗り぀ぶしおいく。

    

    矩母は玙を持぀ずもう甚枈みず蚀わんばかりに茶封筒をタンスに攟り蟌み、こちらぞずやっおきた。ベビヌベッドの䞊で玙を開き、そこに十癟也をそっず乗せる。そしお開いた玙を閉じ、十癟也を包んだ。

    

    行動が理解できない。

    「䜕しおるんですか」

    思わず顔をしかめ、語気が匷くなっおしたった。

    「子包みするんよ」

    圓たり前のこずのように蚀われるが蚀葉の意味がたったくわからない。困惑し、蚀葉に぀たっおいるず矩母は語り始めた。

    「ややさんはただ産たれたばっかりやから神様ず人間の狭間におるんよ。そのせいでこの䞖のもんじゃない鬌ずかが芋えおしたった怖がっお寝れんかったり、泣いおしたったりするんよ。やからこうやっお子包みしお山神さたに守っおもらっおよくないもんが近づかんようにするんよ。」

    たた蚳のわからない颚習を蚳のわからない理論で説明された。だがなぜか息をする床に「なら包たないずかわいそうだな」ず心境が揺れ動いおいく。反論しようずも思ったがその日は出産で䜓力を䜿い果たし、もうそんな気力もなかったためそのたた玙にくるたれた十癟也ず眠りに぀いた。

    


    

    翌朝、花浪は甘い銙りに包たれお目を芚たした。起き䞊がり、我が子の寝顔を眺めようずベビヌベッドの䞭を芗く。

    「ひっ」

    花浪は思わず声をあげ、小さく埌ろに飛び䞊がった。

    ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ

    その村ではある颚習がありたした。田舎の村にはよくある「昔からの蚀い䌝え」みたいなものです。「子包み」ず村人たちは蚀っおいたした。出産しお䞀幎間、こづ぀みず呌ばれる玙に赀子をくるんで倜寝かせおおくそうです。そうするず「子包み」をした日から赀子が泣かなくなるんです。普通なら芪は毎晩倜泣きに苊悩するのに。こづ぀みをした日からさっぱり、倜に起きるこずも泣くこずもなくなるんです。
    矩母は「鬌の気配が消えお泣き止む」ず蚀っおいたした。
    本圓にそうでしょうか確かに泣かなくなりたす。ですが代わりにニタニタ涎を垂らしながら笑うんです。赀子らしいかわいらしい笑い方なんかじゃありたせん。たるでシンナヌを吞った䞭孊生のような、女子䞭孊生を芋おいる痎挢のような、そんないやらしい顔をするんです。生たれおすぐの赀子が。あの日、こづ぀みにくるんだ倜、果たしお赀子に䜕が起きるのでしょうか。

    ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ

    十癟也は嗀っおいた。涎を垂らしながらニタニタずした笑みを浮かべおいる。ずおも産たれたばかりの赀子がする衚情ではない。

    

    どこからずもなく音がする。

    こんな顔を果たしお赀子がするだろうかいやするはずがない。
    呌吞が荒くなる。

    「元気そうに笑っおいおいいじゃないか。」

    そんな思いが頭を埋め尜くそうずしおきた。息をする床にどんどん気持ちが萜ち着いおいく。

    息............。匂いだ。詊しに花浪は十癟也、正確には十癟也を包んでいる玙に顔を近づけた。濃密な甘ったるい匂いが顔を包んでいく。それず同時にそんなに焊る必芁はない。普通のこずだずいう考えが措氎のようにどこかから沞き起こっおきた。
    なんずか顔を離し、銖をブンブンず振っお纏わり぀いた空気を远い払う。
    やはり匂いだ。この甘ったるい匂いが自分をおかしくしおいるのだ。そう結論付け、十癟也を再び芋据える。
    なら、そんな甘い匂いの元を身䜓にくるんでいるずどうなる......
    答えはでない。だが䜕か普通ではないこずが起きるこずはわかる。そう考えおいるず気が぀いたずきには身䜓が動いおいた。息を止め、十癟也に手を䌞ばし、玙を掎む。そしお無理やり砎きながら玙を匕き剥がした。ビリビリビリィず倧きな音がなる。くしゃくしゃになった玙から顔をそらしながら郚屋の隅に投げ぀け、十癟也を抱く。

    

    「䜕しおるんだ」

    突然の声に凝然ずした。声のした方を向くず圭呉が眉を顰め、郚屋の入り口を塞ぐように立っおいた。
    花浪は䜕も蚀わず、十癟也を抱いたたた立ち䞊がる。

    「お前、こづ぀みはどうしたんだ」

    十癟也の姿を芋お圭呉は問いかけた。だが、花浪は沈黙を貫く。その目には確かな意志が蟌められおいた。
    もうこんなこずには付き合わない。
    だが䞀぀、花浪には聞きたいこずが残っおいた。

    「この甘い匂いっおなんなの」

    なぜこれたで疑問に思わなかったのか。疑問に思わないこずすらも匂いのせいなのか。
    するず圭呉は眉を顰めたたた口を開いた。

    「それは印だよ、山神さたに守っおもらうための印」

    

    突然恐ろしくなった。
    我に返ったような
    今たでは倢う぀぀であったかのような
    それがたった今晎れたかのような感芚
    恐怖がじわじわず身䜓を駆け巡る。

    もういいかず圭吟がため息を぀き郚屋に入っおくるず歩みを止めた。

    「お前、本圓に䜕しおるんだ......」

    緊匵が走る。

    「なんでこづ぀みがこんなにぐちゃぐちゃになっおるんだ......」

    声は静かだが怒気を孕んでいる。

    党おが恐ろしい。匂いも、音も、颚習も、人も。誰も味方ではない。膝ががくがくず震え出す。

    「なぁ」

    そもそも最初から党おがおかしかったのだ。劙に圭呉が移䜏を掚しおきたのも、家も車も仕事も党おが甚意されおいたこずも、村のどこにいおも甘い匂いがしおいたこずも、こおさめなどずいう非倫理的なしきたりも、こづ぀みが送られおきたこずも......。

    「なんか蚀えよ」

    にじり寄っおくる。

    「おい、いい加枛に」

    肩を掎たれる寞前のずころで花浪は走り出した。掛け垃団を圭吟に抌し付け、僅かばかりの時間皌ぎをする。家を出ようず玄関に向かったが、なぜか台所に足が向いた。塩の入った袋を掎み、もう䞀床玄関ぞず走る。今床こそ玄関にたどり着き、サンダルを匕っ掛け、扉を開けた。倖に出お数歩螏み出したずころでぐいっず肩を埌ろに匕かれる。

    「䞀回家に戻れ。こんなこずしおも無駄だぞ。」

    嫌だ、もう戻りたくない。無我倢䞭で塩の袋を匕き裂き、埌ろに勢いよく䞭身をばらたいた。

    「ああああああああああ」

    目に入ったのか、それずも別の理由か、埌ろから絶叫が錓膜を震わせた。そしお絶叫に混じり、ずいう音が遠ざかっおいくのを感じた。匱たった手を振り払い、家を飛び出る。畊道を駆け抜けおいく。ズボンの裟に匕っ付き虫を぀けながらず音をたおお走る。時折足に草が刺さり、チクチクするが構わず道を進む。しばらくするず道の䞊に䜕かがぶら䞋がっおいるのが芋えおきた。道切りだ。あず少しだず力を振り絞り、走る。

    

    走る。あず少し。

    

    あず䞀歩。

    

    道切りを越えた瞬間、音は聞こえなくなった。聞こえなくなる寞前の音に少し寂しさを感じた。

    幞いなこずにい぀の間にか玙ず財垃を持っおおり、玙にくるたっお寒さを凌いだ。二日ほど山道を歩いた埌、なんずか隣町にたどり着き、心蚱ない財垃の䞭身から札を䜕枚か抜き、小さな民泊に泊たった。案内された郚屋に入るず、どっず疲れがやっおきた。

    緊匵の糞が切れたのか、村から出れたずいう事実に安堵し、その日はそのたた眠っおしたった。

    翌日、朝起きるず十癟也は甘い銙りず共に「こづ぀み」にくるたれおいた。それを䞀瞥し、掗面台に顔を掗いに行く。鏡の䞭の花浪は顔を歪めおニタニタず笑っおいた。

    

    ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ

    

    ある日、こづ぀みが届いたんです。私を包んだ玙が。匂いが染み付いおいたんでしょう。この甘い匂いはマヌキングのようなものです。おそらく匂いさえ぀いおいれば、ある皋床の人数さえ確保できれば誰でもいいんです。もう手遅れかもしれないですがせめお劻ず子䟛だけでも倖で生きおほしい。だから私はもう向かいたす。子䟛の成長が芋られないのは残念ですが......。

    

    あぁ、そういえばあなたにもだいぶ、銎染んできたしたね。

    

    私たちは䞀䜓.......䜕になっおしたうのでしょうね。



    これは山間郚のある村で起きた話です。

    そしお、これから起こる話です。

    ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ

    第䞀話↓

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    竹氏

     
     
    ホラヌを曞いお人を嫌な気持ちにさせるために今生きおたす。 どうか気を悪くしおいっおください

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