
もふもふ村のみっくす ―キラキラのひみつ―
お日様がポカポカと照らす「もふもふ村」。
子グマのみっくすは、学校の授業中に居眠りをして先生に怒られ、しょんぼりと肩を落として歩いていました。
「うぅ……ボク、また寝ちゃった。お相撲の練習なら頑張れるんだけどなぁ……」
そんなみっくすの隣で、おしゃまな子グマの女の子、こーりんが励まします。
「もう、元気出しなさいよ!そんな顔してたら、せっかくの可愛いお顔が台無しよ?」
二人がお家へ帰る途中、道端の草むらで「キラリ」と光る何かを見つけました。
みっくすがそっと拾い上げると、それは見たこともないほど綺麗な、宝石のついたアクセサリーでした。
「わぁ、これ……すっごくおいしそうなキャンディだよぉ!イチゴ味かな?」
「ちょっと、みっくす!それ、食べ物じゃないわよ!」
こーりんが慌てて止めましたが、みっくすの頭の中はもう、甘いキャンディのことでいっぱいです。
二人はそのまま、みっくすが暮らしているまいけるの家へと飛び込みました。
そこは、村のみんなに慕われる、頼れるお兄さん猫のまいけるが営む「カフェM&N's」です。
「まいけるー!ただいま!見て見て、おいしそうなもの拾ったよ!」
みっくすが自慢げに見せると、カウンターで手際よく準備をしていたまいけるが、目を丸くして身を乗り出しました。
「コラコラ、みっくす!それはキャンディじゃない、誰かの落とした宝物だよ。ほら、まずはキッチンで綺麗に洗ってあげようね」
まいけるがピカピカに洗ってくれたそれは、見たこともないほど上品な輝きを放つブローチでした。
「これ……シティの雑誌で見たことある!最新のブローチよ!」
こーりんが身を乗り出して叫びました。
「もしかして、これをお返ししたら、私、モデルへの道が開けちゃうかも……!ねぇ、持ち主を捜しに行きましょう!」
チョコレート通りにあるカフェM&N'sを飛び出した2人は、持ち主の手がかりを探すために、村で一番情報が集まる「クッキー広場」へと向かいました。
広場の真ん中には、猫のにゃんたが運転する、とってもおしゃれなワゴン車が停まっています。
「にゃんたさーん!ちょっと聞きたいことがあるんだよぉ」
みっくすが声をかけると、にゃんたはワゴンの中からひょっこり顔を出しました。
「おや、みっくすにこーりん。いらっしゃい。今日はソーダかい?」
「ううん、これを持っていた人を知らないかな?」
こーりんが、さっきまいけるに洗ってもらったピカピカのブローチを見せました。すると、にゃんたは「あぁ!」と手をポンと叩きました。
「さっき、とってもスラリとしたカモシカさんが、困った顔をしてコーヒーを買っていったよ。どうやら大切なものを失くしたみたいで、あっちの岩場のほうへ探しに行っていたなぁ」
「カモシカさん……!?きっとシティから来たモデルさんに違いないわ!」
こーりんの瞳が、ブローチ以上にキラキラと輝き始めました。
「みっくす、急ぐわよ!カモシカさんが遠くへ行っちゃう前に!」
「えぇ〜、ボク、もうお腹が空いちゃったよぉ……」
文句を言いながらも、みっくすはこーりんに引っ張られて、岩場の方へと走り出しました。
ところが、岩場に着いた2人が目にしたのは、困り果てた様子のカモシカさんと、大きな岩の間に挟まってしまった「もうひとつのキラキラ」でした。
驚いたカモシカさんが、ブローチと対になっているイヤリングを、岩の奥底へ落としてしまったのです。
「どうしましょう……私の力では、この岩はびくともしないわ……」
シュンと肩を落とすカモシカさん。それを見たみっくすが、キリッと表情を変えました。
「ボクにまかせて!これでも、お相撲の練習は毎日頑張ってるんだから!」
みっくすは、むぎゅっと岩に手をかけると、短い足をふんばって……。
「ふんぬぬぬぬ……どっせーーーい!」
ズズズ……と、大きな岩が、みっくすの力に負けてゆっくりと動きました。
イヤリングは、岩の隙間からコロンと転がり出てきました。
「あったー!」
みっくすが拾い上げると、カモシカさんがパッと顔を輝かせました。
「まあ……!本当に、ありがとう!」
ブローチとイヤリング、ふたつのキラキラが揃ったのを確かめて、カモシカさんはほっとしたように胸に手を当てました。
「実はこれ、大切な人からのプレゼントなの。なくしたときは、もうどうしようかと思ったわ」
みっくすは、ちょっと照れくさそうに頭をかきました。
「お相撲の練習、頑張っててよかったぁ」
「もう、それだけじゃないでしょ!」
こーりんがぷくっと頬をふくらませましたが、その顔はにこにこしています。
カモシカさんはふたりを見て、くすっと笑いました。
「あなたたち、とっても素敵なコンビね」
夕日が、もふもふ村をオレンジ色に染め始めた頃。
みっくすとこーりんは、並んでチョコレート通りを歩いて帰りました。
「ねえみっくす、今日ちょっとかっこよかったわよ」
「え、ほんと?……えへへ」
ポカポカのお日様が、ふたりの影を長く長く伸ばしていました。