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【乳がん】今朝のコーヒー

    温かいコーヒーが喉の奥へ、すっと染み渡る。

    一口、一口が本当に美味しかった。

    私は、がんと診断されてから、朝ゆっくりとコーヒーを飲むことはなくなっていた。
    何か食べたい、飲みたいと思うことさえ、不思議なくらいなくなっていた。

    でも今朝は、身支度を整える前に、一杯のコーヒーを淹れた。

    立ちのぼる香り。
    手のひらに伝わるカップの温もり。
    そして、喉を通るコーヒーの優しさ。

    その一つ一つが、私の心を静かに整えてくれた。

    今日は、一人で病院へ向かう。

    これまでは、姉がいつも隣にいてくれた。
    でも今日は、一人で検査結果や、これからの治療について向き合う日。

    婦人科、呼吸器外科、乳腺科。
    検査結果を聞き、術式を決める大切な一日が待っている。

    まずは呼吸器外科。

    待合室へ向かいながら、すれ違う人や座っている人たちに目が留まった。

    白や水色、チェック柄、花柄。
    さまざまな服が目に入る。

    その数だけ、それぞれの想いがあるのだろう。

    大学病院の待合室には、多くの人が静かに順番を待っていた。
    きっと誰もが、それぞれの不安や願いを胸に、この場所へ来ている。

    診察を待つ人の多さに、私は静かに息をのんだ。

    その姿を見ていると、病気と向き合っているのは私だけではないのだと感じた。
    そう思えたことで、ほんの少しだけ心が軽くなった。

    待合室で、誰かが咳き込んだ。

    普段なら、少し身構えてしまう場面かもしれない。

    それでも、その場には誰かを責めるような空気はなかった。
    ただ静かに、見守る時間が流れていた。

    その優しさに、私の心も少し温かくなった。

    ふと、自分の服に目を落とした。

    黒のパンツに、黒のシャツ。
    今日は、自然とこの服を選んでいた。

    今、私は穏やかに、この待合室で自分の名前が呼ばれるのを待っている。

     
     
    人生の幾つもの転機を経て、それでも笑って生きることを選びたいと思う。 見落としそうな日常の大切さや、 心が動いた瞬間を言葉にしています。 読んだ人が、いつもの毎日を少し愛おしく思える文章を届けたい。 いつか、一冊の本として届けることを夢見て。

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