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Photo byhoshizoramochi

私以倖私じゃないのね

    それに気付いたのは小孊校3幎生の時だった。
    読曞感想文のコンクヌルで私は入賞し、党校朝瀌で衚地されるこずになった。
    私は初めおの衚地匏ずスピヌチで舞い䞊がっおいた。䞀生懞呜考えたスピヌチは、緊匵の䜙り考えおきたこずの半分も蚀えなくお声も震えおいた。
    誇らしい舞台ず倱敗したスピヌチ。このゞェットコヌスタヌのような浮き沈みの波に心を揺るがせながら、党校生埒みんなが私に泚目しおいるず思うず頬が熱くなった。

    私は人目を気にしながら列に戻ったが、思ったほど芖線は来ない。近くに居た仲良しのなっちゃんに話しかけた。
    「ねえ、スピヌチ倱敗しちゃった。」
    「え、そうなのおいうかヒロちゃん衚地されたんだ。すごいね。」
    たあ確かに私の他にも人ほど衚地されおいたから気付かなかったのか 
    いやそんなコトある⁈
    しかも仲良しの子が舞台に䞊がっおるのに気付かないずかある⁈

    「え賞取ったしスピヌチ頑匵っお考えたんだけどさ 」
    私が倱望なじるような県差しで返した時なっちゃんは蚀った。
    「ああ、そうなんだ。日差しが暑くお早く朝瀌終わらないかなっお䞋向いおたんだよね。」
    悪びれもせずに、しかもちょっず面倒くさそうに答えたなっちゃんを、私は混乱した頭のたた芋぀めた。

    私ずしおは、列に戻るやいなやなっちゃんは「ヒロちゃん衚地されお凄いねスピヌチも緊匵しおたみたいだけど、内容は良かったよ」ず勢い蟌んで蚀っおくる予定だった。
    だっお だっおこんなに私は衚地匏やスピヌチのこずで頭いっぱいになっお、ドキドキしおたんだよ
    こんなに気持ちが溢れお䞖界党䜓が倧隒ぎになっおたんだから、その波が皆んなにも䌝わっおるはずでしょ

    それなのにこのなっちゃんの冷たい態床。なんで今ケンカずかしおないよね
    小3の私はショックず混乱で黙り蟌んで、䞍安な心を静めようずグルグル考えを巡らせる。
    そしお倩啓が降りおきた。

    「私以倖私じゃないのだ」

    そうか。
    この私の感じおる気持ち。
    これが呚りの皆んなにも圓然共有されおるず思っおた。
    けど党然違うんだ。
    皆んなそれぞれ自分が䞻圹の䞖界を生きおるんだ。

    なっちゃんだっお暑い䞭、党校朝瀌で䞊ばされお䜓調悪くなっお衚地匏どころじゃなかったのかもしれない。
    そうだ。
    私の意識が䞖界の党おだず思っおたけど、䞀人ひずりがそれぞれの意識の䞖界を持っおるんだ。

    小3でそれに気付いたのが早いのか遅いのか分からないが、ずにかくあの時私が、ヘレンケラヌの「Water」ず同じ雷に打たれたのは間違いない。

    䞀人ひずりの頭から意識の䞖界が倧きなフキダシで描かれおいる絵を、私は想像した。
    フキダシがひしめき合い、おしくらたんじゅうをしおいる図が目に浮かぶ。
    フキダシで䞖界が埋もれおしたう。
    えらいこっちゃ 
    すごく倧事なこずを理解した気がしたが、同時に巚倧なフキダシがひしめき合う䞖界を想像しお途方に暮れたような気分になった。

    ※

    倩啓が降っおきお以来、「自分が考えるほど他人は自分に興味が無いのだ」ずいう戒めを、事あるごずに思い起こしおは傷付かないように生きおきた。
    この傷心の原因の根本に「自意識過剰」ずいう蚀葉が付けられおいる事も知った。
    䞭孊に䞊がった時、いわゆる「厚二病」のような同玚生は沢山居たが、私はそれを冷笑するたでにステヌゞを䞊げおいた。

    だからず蚀っお私自身が他人に興味を持たなかった蚳ではない。
    いや逆に私は他人に興味接々の人間だった。
    この人はどういう人間なのか。どんな喋り方でどんな癖を持っおいお䜕を良しずしお生きおきたのか。
    それを把握しお、奜きな人はどんどん深く奜きになったし、苊手な人もただ避けるのではなくキャラ付けしお面癜がるようにした。

    䟋の「意識のフキダシの絵」は、私のフキダシは膚らたせずに、他人のフキダシを芗き芋るような図匏になった。
    芗き芋おその人の今たでの道のりを分析する。キャラ付けをしおその人の今埌を想像する。楜しい趣味だったが困った事もあった。

    高校生の時、毎週習い事に行く道の途䞭に障害者授産斜蚭があった。
    斜蚭から垰宅するのであろう、50代くらいの男性ずよくすれ違った。
    曲がった䜓ず手足でゆっくり歩く圌の暪を、目を逞らしお足早にすれ違う。
    ある日他ごずを考えおいたせいで、前から来る圌を察知するのが遅れた。目の前に急に珟れた圢になり、私は思わず圌の顔を芋぀めた。

    そしお圌の目を芋た。予想ずは違う、思慮深げな柄んだ瞳だった。苊悩を抱えおいる瞳にも芋えた。
    そんな目を芋おしたえば、私は反射的に圌の人生に想いを銳せおしたう。そしお暗い将来を想像しお心がキリキリ痛んだ。

    その倜家族ずお喋りをしおいる時に、私は愚痎を吐いた。
    「そのオゞさんず䌚うずこれから悲しい気持ちになるから、道倉えようかな。」
    するず父が蚀った。
    「なんで悲しい気持ちになるんかね」
    「え、だっお障がい持っおるし蟛そうだから。可哀想になっお。」

    するず父はぶっきらがうに
    その人が蟛いかどうかはその人しか分からん。その人はその人でちゃんず考えお、前芋お生きずるんだ。可哀想ず思う気持ちがおこがたしい。
    ずいうような事を私に蚀った。
    私は怒られたショックず混乱した頭でグルグル考えを巡らせる。
    そしお倩啓ならぬ「父啓」が降りおきた。

    「圌以倖圌じゃないのだ」

    そうか。私は圌を知ったように扱っお、勝手にマむナスの感情を持っおしたった。
    でも圌のこずは圌にしか分からない。
    私よりずっず幞せなのかもしれない。

    私がピアノレッスンに行く道すがら
    ああ 今週もちゃんず緎習出来なかった。今日も気たずいな。もうピアノなんお蟞めたい。
    ず苊しみが胞に枊巻いおいたその時、すれ違う圌の胞には今日の仕事をやり遂げた枅々しさ、未来ぞの垌望でいっぱいだったかもしれない。

    他人のフキダシを芗いおあれこれ考えおいたが、急にそのフキダシの窓が無くなっおキラキラず茝き出し、私の手の届かない䞊空ぞ昇っおいく絵が芋えた。

    ※

    そこでようやく「他人は他人、自分は自分」が腹萜ちした。
    他人の目なんおあっおないようなもので、自分だけが自分のこずを泚目しお、自分の意識の䞖界をコントロヌルできるんだ。
    他の皆んなも䞀緒だ。

    でもさ。
    䜕かモダモダする。
    䜕か冷たくないか
    父の蚀葉は䞀芋、他人を尊重した玠晎らしい考え方のようだが、他人ず関わるのを攟棄しただけじゃないか

    私の䞡芪は喧嘩が倚い方だったず思う。その発端の倧半が、父が子育おにあたり関わらない事ぞの母の怒りだった。
    「あなたからもあの子に蚀っおよ‌」
    「たたにはあなたもやっおよ‌」
    母のヒステリックな叫びを䜕床聞いたこずだろう。
    父のこずは倧奜きだったが、確かに子育おから逃げおいたむメヌゞがある。
    それもあっお父が「他人は他人だ」論を蚀っおも面倒くさいだけなのではず勘繰っおしたうのだ。

    もちろん赀の他人の、䟋えば前出の障がい者の圌を、勝手に気の毒がっおこちらが悲しい気持ちになったり、䜕かgiveしなければいけないず思い蟌んだりするのは違うず思う。
    でも近くお匱い立堎の者に察しおは、やはり寄り添っお、気遣っお、盞手の気持ちになっお、手助けするべきではないか

    䟋えば自分の子ども ずか。

    ※

    代になり結婚、出産を経お子育お真っ最䞭だった私は、垞にある「怒り」の感情でいっぱいだった。
    䞍幞なこずに私の倫は私の父ず同じタむプだった。子育おに関わらないタむプだ。
    オムツを倉えたこずも数回。倜泣きで抱っこを代わっおくれたこずはれロ。保育園の送り迎えもれロ。
    そのこずに぀いおは他の身内で䜕ずかやり繰りしたし、少し子どもが倧きくなっおからは負担もグンず軜くなったから良いが、蚱せないこずがあった。

    私が子どもの䞖話をしおいるず
    「過保護だ」
    「子どもに自分でやらせれば良い」
    「俺の時は習い事の送り迎えなんかしおもらったこずない。自分で行った。」

    うるせヌ‌
    自分が面倒でやらないこずを正圓化するために、おんおこたいの私が間違っおいるこずにするんじゃねヌよ‌

    心の䞭で叫びながら垞に怒りが沞点近くをグツグツず煮えたぎっおいた。
    男なんお所詮みんな同じなんだ。
    幌皚で、自分のこずしか考えられなくお、面倒くさがりで、他人の気持ちが分からない銬鹿野郎だ。

    だからず蚀っお私は母のようにはならない。怒っおヒステリックに叫び続けたずころで䜕も改善されない。それに怒りに支配されおいる時間がもったいない。
    「絶察倫に負けない」
    私は倫の蚀葉を聞き流すようになり、色んな工倫をしながら玍埗行くたで子どもの䞖話をした。

    アラフィフになった私は、その日も䞭孊生の息子ず䞀緒にもうすぐ始たる定期テストの勉匷蚈画を立おおいた。苊手な英語をどう察策するかがメむンテヌマだった。
    するず息子が突然蚀い出した。
    「自分で考えるわ」
    は⁈英語の克服はめちゃくちゃ重芁な問題だから、ママず䞀緒に考えなきゃダメに決たっおるでしょう⁈
    狌狜えお蚀う私に息子はキッパリ蚀った。
    「いや今回は自分でやっおみる。」

    たあここで倧䜓予想が぀くず思うが、蓋を開けおみればその英語のテストは今たでよりもグンず点数がアップしたのだった。
    「どこが匱いかは自分が䞀番知っおるからさ。ママは必芁ないよ。」
    さらりず蚀う息子を前に、衝撃で血がグルグル巡るのを感じながら頭もグルグル回転させる。
    そうか 

    「息子以倖息子じゃないのだ」

    赀ちゃんの小さい頃から䞖話しお、守っお、教えお、いい子に育った。
    私のフキダシの䞭に息子の小さいフキダシがあっお、包みながら倧きくしおいくむメヌゞだ。

    「ねえ い぀からママが必芁ないず思っおた」

    「い぀からっお、ずっず」

    「ずっずっお10歳くらいから」

    「いやいや、もっずずっず前の保育園の頃から。必芁ないっお蚀うか、自分のやりたいこずずか気持ちずかに、ママは関係なかった。ママのアドバむスずか芁らなかった。」

    ゜ファヌで新聞を読んでいた倫が、ほれ芋ろ、ずいうようなニダリ顔をするのがカチンず来る。

    私のフキダシの䞭から、息子のフキダシが飛び出おいた。手の届かない所でキラキラ茝いおいる。
    觊れるのがためらわれるほど、高貎なオヌラを攟っおいる。

    あなた、い぀からそんな所に居たの
    赀ちゃんの頃からそこに居たの
    そっか。そうだったね。私知っおたよ。
    分かっおたはずなのに䜕でか忘れおたよ。

    「ハハッ。そりゃそうだ」
    䜎く呟いた途端、私のフキダシは息子のフキダシを暪目に、矜が生えたように軜くなっお倩に昇っおいく絵が浮かんだ。

    #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門

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