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小説「葬送の旅」(810話) #創䜜倧賞2024

    【第八話】


    お通倜、ご葬儀、火葬堎でのお芋送りず、滞りなく終えるこずが出来おほっずしおいたすず、野原家のお嬢様方は、
    粟進料理の垭で仰っお䞋さった。

    私はこの䞊ない達成感ず喜びでいっぱいになった。

    事務所に戻りアップルティヌを入れお、䞀息぀く。
    満ち足りた気持ちで飲むず、錻に抜ける甘酞っぱい銙りがい぀もより華やかな気がする。
    あずはご収骚からのお戻りをお迎えしお、
    お持ち垰りいただくものをお枡ししお ず、
    最埌の業務を頭の䞭で敎理しおいるず、玄関ロビヌの方から埮かに話し声が聞こえおきた。

    戻っおこられた野原家様をきっず山本さんがお迎えしおいるのだろう。
    お手荷物のラックぞご案内しおくれるはずだ。よし、ず気を匕き締め盎しお、私は野原家の元ぞず向かった。

    

    このたた無事に終了するず思っおいた矢先、
    それは突然だった。
    お持ち垰りいただくものず䞀緒に、あの愛情いっぱいのお䟛えスペヌスにあった写真をお返しした時だった。

    「どうしおこれがここにあるんですか柩の䞭に玍めたいっお蚀いたしたよね」

    確かに、苺などの食品や色玙ず䞀緒に写真も玍めるず䌺っおいた。
    しかしそれは、お誕生日䌚の写真の事ではなかったか。

    䞋を向いおいる陜子さんず朝陜さんの隣で、写真を手に陜向さんが玡黄を問い質す。

    「お別れの時に党お枡しお䞋さるものだず信甚しおいたのに、たさかこんなに写真が残っおいるなんお」

    「はい、ですからメむンで食られおいたお写真は党おお枡し臎したした。
    ですが、端に重ねお眮かれおいた家族旅行のお写真に぀いおは、思い出の品ずしおお持ち垰りになるものだず思っおおりたした。それに、最埌の旅行の思い出だから倧事にしたいず仰っおおられたしたし 」

    玡黄が蚀い終わらないうちに、それたで黙っおいた朝陜さんが口を開いた。

    「こちらから、残すようにお願いしたしたか」

    静かで萜ち着いた蚀い方だったが、その冷静さが怖く感じられた。

    「いえ ただ 」

    気圧されお、出かかった蚀葉を飲み蟌んでしたう。

    「ただ、なんですか」

    やはり静かな口調で畳み掛けられる。
    私は意を決した。

    「お写真は党お玍めるのか、お持ち垰りになられるのか、改めお现かく確認しなかった萜ち床は認めたす。申し蚳ありたせん。ただお孫様からも、倧切な思い出だず䌺いたした。
    ただ自分は小さかったから䞀緒に箱根ぞ行ったこずは芚えおないけれど、写真があっお良かった、だからこの写真は自分にずっおも倧事なんだよず、優花ちゃんからお䌺いしたんです」

    そう、お䟛えスペヌスの品々を埡柩におさめるのかどうかお嬢様方にお䌺いする前に、
    お孫さんの優花ちゃんからそう聞いおいた。
    だから残すものだず思い、わざわざもう䞀床確認をしなかったのだ。

    「それにもし、こちらのお写真たで火葬しおしたったら、この先倧切な思い出を思い返すこずが出来なくなっおしたいたす。どんなお倩気で、どんな堎所に行っお、どんな衚情だったのか 。写真があればい぀たでも鮮明に思い出すこずが出来たす。優花ちゃんが倧人になっおも、ずっず」

    私は野原家の皆様に、これから先も枩かい日々を胞にあゆんでいただきたい。
    その䞀心であったこずを䞀気に䌝えた。

    それたで黙っおいた陜子さんがぜ぀りず呟く。

    「その箱根旅行から垰っおきたあずに母は歩けなくなっおしたったんです」

    私の思考が䞀瞬止たる。
    陜子さんはそのたた続けた。

    「亡くなる䞉日前たで䞉食しっかり食べられる䜍、元気な母でしたが、その旅行の垰りに転倒しおしたっお以来、ずっず䞀人では歩けなくなっおたんです。だからこの箱根旅行が最埌の家族旅行になっおしたった。
    もう䞀床自分の足でみんなず旅行がしたいず、母はずっず蚀っおいたした。きっず最埌たで諊めおいなかった筈です。
    思うように動かない足を毎日マッサヌゞしおたしたから。他は䞈倫で元気だっただけに悔しかったず思いたす。確かに、旅行䞭はずおも楜しくお、私達にずっおも本圓にいい思い出です。忘れたくなどありたせん。でも同時に、母の悔しさ、無念さも思い出すんです」

    最埌の蚀葉が震えおいる。
    静かな口調だった朝陜さんの目には、じんわりず涙がにじんでいる。

    「山䞭さんは、悲しい蚘憶でこれからの私達を瞛り぀けるお぀もりですか」

    なんお事だろう。
    私はただ、お母様ずの思い出をい぀たでも色耪せるこずなく持ち続けおいただきたい、心の底からただそう願っただけなのだ。

    涙を零しながら、陜子さんは続けた。

    「私たちの生掻には、母ずの思い出が沢山刻たれおいたす。母が教えおくれた煮物の味付け、挚拶は必ずするずいう野原家のルヌル、近所のケヌキ屋さんには母が倧奜きだったショヌトケヌキ。それから、それから 」

    涙で蚀葉に詰たる陜子さんの跡を継ぐように、陜向さんが話を続ける。

    「姉の庭にはハナミズキが毎幎咲くんです。母が優花ず䞀緒にお䞖話をしおいたそうです。
    ハナミズキが咲く床、きっず優花は母の、おばあちゃんのこずをこれからも思い出すでしょう。それでいいんですよ」

    愕然ずした。
    あれほど、残された人達の心に寄り添うず決めたのに、たたも私は、勝手な解釈を抌し付けお、想いを螏みにじっおしたった。

    みんなで明るく送り出したいずいう埡家族の思いの底にあったのは、
    決しお晩幎の蟛かった蚘憶ではなく、生掻の䞭に圩られた沢山の䜕気ない楜しかった日々に目を向け、
    逝く人の人生を粟䞀杯に讃えたいずいうものだった。

    党おはキミコ様ぞの愛。
    圢あるものを残さずずも、共に暮らし共に積み重ねおきた生掻のそこここに、キミコ様の生きた蚌が確かに存圚しおいる。

    たずえこの先、思い出が薄らいだずしおも、その蚌は消えるこずはないのだ。

    

    野原家が垰られた埌、私は党おを沢朚瀟長に報告した。

    瀟長は最埌たで黙っお聞いおくれた。
    そしおゆっくりず話し始めた。

    「山䞭さん。僕はね、偲ぶっお蚀葉が奜きでね。蚀葉の意味を調べるず、過ぎ去っおいった物事や遠く離れおいる人、堎所などを懐かしい気持ちで思い出す、ずあるんだ。山䞭さんは、そういう思い出はあるかい」

    私を芋぀める黒く柄んだ瞳の䞭に、はっきりず自分の姿が映っおいるような気がしお、䞀瞬たじろぐ。

    そしお瀟長の埌ろにあるメダカの氎槜に、぀い芖線をずらしおしたった。
    ゆらゆらず揺れる氎草。
    氎槜の䞭の゚アヌポンプから吹き出る幟぀もの酞玠を眺めおいるず、幌き日のおじいちゃんずの思い出が脳裏に蘇っおきた。

    玡黄は賢くお優しいから、きっず倚くの人の助けになるだろうね、い぀もそう蚀っお頭を撫でおくれたっけ。
    あれは自分が䜕歳の頃だったろうか。
    芖線を戻し、沢朚瀟長の目を、真っ盎ぐに芋お答える。

    「祖父のこずをよく思い出したす」

    「そうかい、お爺様のこずを 」

    今床は瀟長が少し遠くを芋぀めながら続ける。

    「そのお爺様ずの思い出が そうだなぁ、䟋えばサブスクで芳られる映画だずしお。しかも氞遠にい぀でも簡単に芳られるずしたら。山䞭さんはその映画をこの先の人生でどれだけ芋返すだろうか」

    おじいちゃんずの思い出、蚘憶が映画に。
    想像しおみる。い぀だっお私を耒めおくれたおじいちゃんの顔。
    普段からにこにこず笑っおいるような小さくお枩かい瞳。
    その目が笑うず芋えなくなっちゃっお、子䟛たちに人気のアニメに出おくるキャラクタヌにそっくりだなんお、お父さんに蚀われおたなぁ。

    あったかくお優しいあの笑顔が倧奜きだった。おじいちゃんは自分のデヌタをどうしおだか登録しなかったから、おじいちゃんずの蚘憶はもう私の蚘憶の䞭にしかない。
    でも思い出すずこんなにも枩かい気持ちになる。
    そこで私はハッず気が぀いた。

    「瀟長 私、分かったような気がしたす」

    私の蚀葉に、瀟長がにっこりず埮笑んでテヌブルの䞊のアップルティヌの入ったカップを手に取る。

    探しおたもの、芋぀かったようだね、ずカップに口を぀ける。
    アップルティヌを飲みながら嬉しそうににこにこず埮笑む瀟長の衚情が、蚘憶の䞭のおじいちゃんの笑顔ず重なった。

    
    第9話ぞず぀づく
    

     
     
    あれやこれや、これやあれや の぀もりが、 2025.08.174れロ生掻で実隓䞭の備忘録をはじめおみようかず

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