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じいちゃんと姪っ子と暑い夏の日

    私には2歳になる姪っ子がいる。
    活発で天真爛漫という言葉がぴったりな、妹の一人娘だ。

    クリクリとした真ん丸な瞳が特徴的で、本当に可愛らしい。言葉も少しずつ覚えてきたお喋りさんは、生まれてから毎月のように母親である私の妹に連れられて帰省してくる。

    エネルギーの有り余る2歳児は外出が大好きで、毎回どこに連れていくか頭を悩ませられるのだが、帰省すると必ず遊びに行くのが祖父母の家。姪っ子からみると曾祖父母にあたる、じいちゃんとばあちゃんの家だ。

    夏真っ只中、朝から気温が30度を超える8月中旬。母の運転する小さな車に、妹と姪っ子と乗り込み、20分ほどの距離にある祖父母の家へ。近場に住んでいるにもかかわらず、私が祖父母を訪ねるのは数年ぶりだ。仕事を理由に会いにいけていなかったことを後悔しつつ、久々に祖父母に会うのを楽しみにしていた。

    祖父母宅に着くと、同居している叔父と叔母が出迎えてくれた。姪っ子を見るや否や「おお!来たね!」と、満面の笑み。叔父夫婦にも孫がいるのだが、孫とはまた違った可愛さがあるのだろう。姪っ子のことも溺愛してくれている。

    ダイニングルームから少し離れた祖父母の部屋へ、妹と姪っ子と向かう。引き戸を開けた私を見た瞬間に、祖母に「ほお!めずらしい」と驚かれた。2人とも、私が来ることを知らなかったらしい。そんな2人と一緒に、長い廊下を歩きダイニングルームに戻った。

    訪ねたのはお昼どき。叔母が近所のスーパーで美味しそうなお惣菜を買い揃え、簡単な軽食も作ってくれていた。姪っ子には特大の子ども用ウインナー。2歳の小さなお姫さまを囲んでの楽しいランチタイムは、あっという間に過ぎていった。可愛いひ孫を目の前に、終始、目を細めている祖父母。私や妹が小さかった頃も、こんな眼差しを向けてくれていたなと、ふと懐かしくなる。

    夏にお出かけするとき、姪っ子は必ず帽子をかぶる。綿素材のツバ広なハット型で、後ろには首元をガードしてくれる布が付いているタイプのものだ。幼稚園児が集団でお散歩をする時によく被っているあの帽子。この日も、姪っ子はその帽子を持ってきていた。ランチが終わって外遊びをしたい姪っ子に、妹が帽子を被せたその時、祖父が言った。

    「兵隊さんみたいな帽子やなぁ」

    祖父にとっては何気ない一言で、単純にその帽子の見た目に対する感想なだけ。他の家族も、特に気にも留めてないようだった。だけど、私はその一言に祖父の若い頃の記憶がたくさん詰まっていた気がしてならない。

    8月9日、長崎に落とされた原爆の最初の標的は、鉄の街である小倉だった。90歳を超える祖父母は、今でこそ福岡の片田舎に住んでいるものの、幼い頃は小倉に近い街に暮らしていた。もし、あの原爆が小倉に落ちていたら、私は生まれていなかった。そして、姪っ子を囲んでの団欒も、きっと存在していない。

    祖父母の戦争の記憶はどんなものなのだろう。90歳を超えた2人に聞いておきたい気がするけれど、辛い記憶だったらと思うと迂闊に聞けない私がいる。

    よく思い出してみると、小学生の頃に何気なく聞いたような。だけど、その時は軽くあしらわれた覚えがある。きっと、あまり話したくないんだろう。そりゃそうだ。心の奥底に閉まっておいた辛い時代を話したくない気持ちは十分に理解できる。だから、私も軽い気持ちでは聞けないのだ。

    あの日も、きっと今みたいに暑い日だったに違いない。時代が変わり、便利になった現在。クーラーの効いた部屋で、90歳差のひ孫をニコニコしながら見つめるじいちゃん。

    早く外に行きたい姪っ子は、あの帽子を被ったままだ。













     
     

    Ayaka

     
     
    日々のできごと、回顧録、最近はじめたピラティス記録など、ざっくばらんに。30代OLの全くキラキラしていない日常とか考えてることとかを気の向くままに綴っています。

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