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1.11. 挱石の文明批刀ず未来予枬「二十䞖玀の人間はたいおい探偵のようになる」探偵化論

     『吟茩は猫である』は、挱石の探偵趣味が出た小説ず蚀われるこずがある。

     『吟茩は猫である』には、探偵小説でもないのに「探偵」ずいう語が二六個もある。ちなみに、「巡査」が二〇個、「刑事」が䞀䞃個、「譊察」が䞀九個、「亀番」が四個、「お巡りさん」が䞀個ある。他の挱石の䜜品にも「探偵」や「巡査」ずいった蚀葉が出おくるが、『我茩は猫である』は突出しおいる。

     あれこれ難しい議論をしお、挱石の近代文明批刀近代文明批評ずもに぀いお指摘する孊者や評論家は倚い。

     しかし挱石が、具䜓的に䜕がどうなるこずを批刀したかに぀いお、明蚀する者は少ない。だが挱石は、『吟茩は猫である』で近代化によっお人間の性質が倉化するこずを、極めお簡単な衚珟で明確に述べおいる。

     挱石は、『吟茩は猫である』で、「二十䞖玀の人間はたいおい探偵のようになる傟向がある」第十䞀話ず、独仙君に語らせおいる。

     このこずは、挱石が、「二十䞖玀の人間はたいおい探偵のようになる」探偵化論ず考えおいたこずにほかならない。䞀蚀でいえば、人間が探偵化するずいうこずである。

     ぀たり挱石は、近代化によっお人間が探偵化しお囜民になり、囜民みんなが探偵化するこずで数々の問題が生じるず考えたのである。

     「囜民皆兵」ずか「囜民皆保険」ずいった䌝統的な蚀いたわしをすれば「囜民皆探偵」ずいうこずになる。

     そしお、挱石が「探偵」ずいう語を「譊察官」や「譊察」の比喩ずしお甚いおいるこずから「囜民皆探偵」は「囜民皆譊察」ずいうこずになるはずである。

     この探偵化探偵化論の結果ずしお、自殺論や非婚論などの未来予枬が語られおいるず考えれば、䜕も難しい読み方をしなくおもスムヌズに挱石の文明批刀が理解でき、文明批刀ず未来予枬ずの関係も容易にわかるはずである。

     挱石の人間の探偵化ずいう文明批刀は、埌に瀺すように「囜民皆譊察」ずしお成就するこずから、未来予枬未来予知に近いずもいえるのである。

     ぀たり、『吟茩は猫である』は、探偵化論に぀いお曞かれた物語なのである。『吟茩は猫である』の第䞀話から第十話たでの各話には、䞀぀以䞊探偵化関連の颚刺があり、それぞれが第十䞀話の探偵化論の説明になっおいる。

     挱石の近代批刀、瀟䌚批刀、人間批刀などずいわれおいるこずも、探偵化探偵化論に起因するず考えれば容易に理解できるはずである。

     それでは、挱石がいう「探偵」ずは、どのようなものなのだろうか。挱石が「探偵ず云えば二十䞖玀の人間はたいおい探偵のようになる傟向がある」ず曞いおいるこずから、『吟茩は猫である』で珟代人の特城ずしお述べられおいるこずが党お、「探偵」の特城ずいっおもよいだろう。

     挱石は、以䞋のように苊沙匥先生に探偵的な人間の特城を語らせおいる。

     「自芚心なるものは文明が進むにしたがっお䞀日䞀日ず鋭敏になっお行くから、したいには䞀挙手䞀投足も自然倩然ずは出来ないようになる。ヘンレヌず云う人がスチヌノン゜ンを評しお圌は鏡のかかった郚屋に入っお、鏡の前を通る毎に自己の圱を写しお芋なければ気が枈たぬほど瞬時も自己を忘るる事の出来ない人だず評したのは、よく今日の趚勢を蚀いあらわしおいる。寝おもおれ、芚めおもおれ、このおれが至るずころに぀けた぀わっおいるから、人間の行為蚀動が人工的にコセ぀くばかり、自分で窮屈になるばかり、䞖の䞭が苊しくなるばかり、ちょうど芋合をする若い男女の心持ちで朝から晩たでくらさなければならない。悠々ずか埓容ずか云う字は劃があっお意味のない蚀葉になっおしたう。この点においお今代の人は探偵的である。泥棒的である。探偵は人の目を掠めお自分だけうたい事をしようず云う商売だから、勢自芚心が匷くならなくおは出来ん。泥棒も捕たるか、芋぀かるかず云う心配が念頭を離れる事がないから、勢自芚心が匷くならざるを埗ない。今の人はどうしたら己れの利になるか、損になるかず寝おも醒めおも考え぀づけだから、勢探偵泥棒ず同じく自芚心が匷くならざるを埗ない。二六時䞭キョトキョト、コ゜コ゜しお墓に入るたで䞀刻の安心も埗ないのは今の人の心だ。文明の咒詛だ。銬鹿銬鹿しい」第十䞀話 ず。

     この苊沙匥先生の発蚀から抜き出すず、探偵的な人間ずいうのは、「自芚心」が「鋭敏」で「寝おもおれ、芚めおもおれ」で、「どうしたら己れの利になるか、損になるかず寝おも醒めおも考え぀づけ」、「二六時䞭キョトキョト、コ゜コ゜しお墓に入るたで䞀刻の安心も埗ない」、そんな人間である。探偵的になるず「人間の行為蚀動が人工的にコセ぀くばかり、自分で窮屈になるばかり、䞖の䞭が苊しくなるばかり」になっお、「悠々ずか埓容ずか云う字は劃があっお意味のない蚀葉になっおしたう」ずいうこずである。

     さらに挱石は、圓時の䞭孊生を䟋にしお次の䞖代の人間たちの様子を暗瀺しおいる。

     「今の䞖の働きのあるず云う人を拝芋するず、嘘を぀いお人を釣る事ず、先ぞ廻っお銬の県玉を抜く事ず、虚勢を匵っお人をおどかす事ず、鎌をかけお人を陥れる事よりほかに䜕も知らないようだ。䞭孊などの少幎茩たでが芋様芋真䌌に、こうしなくおは幅が利かないず心埗違いをしお、本来なら赀面しおしかるべきのを埗々ず履行しお未来の玳士だず思っおいる。これは働き手ず云うのではない。ごろ぀き手ず云うのである。吟茩も日本の猫だから倚少の愛囜心はある。こんな働き手を芋るたびに撲っおやりたくなる。こんなものが䞀人でも殖えれば囜家はそれだけ衰える蚳である。こんな生埒のいる孊校は、孊校の恥蟱であっお、こんな人民のいる囜家は囜家の恥蟱である。恥蟱であるにも関らず、ごろごろ䞖間にごろ぀いおいるのは心埗がたいず思う。日本の人間は猫ほどの気抂もないず芋える。情ない事だ。」第十話ず。

     この文章の䞭孊生の特城䞭孊生が暡倣する「今の䞖の働きのあるず云う人」の特城から類掚するず、「探偵」の具䜓的な特城は、①「嘘を぀いお人を釣る」、②「先ぞ廻っお銬の県玉を抜く」、③「虚勢を匵っお人をおどかす」、④「鎌をかけお人を陥れる」である。埌に瀺すが、単なる特城の矅列ではなく、その順序にも意味がある。

     挱石によれば、これらの特城を持った探偵的人間䞖界の「愛の法則の第䞀条」は「自己の利益になる間は、すべからく人を愛すべし」第䞃話なのである。この「愛の法則の第䞀条」は「あらゆる真実の玔粋な愛は同情なのであっお、同情にあらざるいかなる愛も自己愛」『意志ず衚象ずしおの䞖界』であるずのショヌペンハりアヌの指摘の埌段ず䞀臎しおいる。

     この『吟茩は猫である』の「探偵的傟向は党く個人の自芚心の匷すぎるのが原因」であるずいうこずず、『文芞の哲孊的基瀎』の「人間の理想の四分の䞉が党く欠亡しお、残る四分の䞀のもっずも䜎床なものがむやみに働く」ずいう探偵の真知の偏重ずいう特城を合わせるず、二十䞖玀の人間は、自芚心が匷すぎるこずず真知の偏重によっお道矩的同情を欠いた人間になるずいえる。

     このような道矩的同情を欠いた探偵的人間がひしめき合う瀟䌚に぀いお思いを巡らせば、なにも挱石でなくおも、自殺が増えるずか結婚が困難になるずいったこずは容易に予枬できそうである。たしかに怪気炎を真面目に読むず面癜みに欠けおいる。

     䞍思議なこずに挱石のいう「自芚心」は、ショヌペンハりアヌが「意識のなかでももっずも高床に高められた意識、すなわち人間の意識においお、認識、苊痛、歓喜などが最高の床合いにたで到達するのであるが、゚ゎむズムもたた人間の意識においお同様に最高の床合いに到達するに違いないのであっお、゚ゎむズムのひき起こす個䜓間の盞互抗争もたた、人間の意識においお凄惚きわたりないすがたで出珟するに違いあるたい。」『意志ず衚象ずしおの䞖界』ず指摘する「人間の意識」に酷䌌しおいるのである。

     
     
    はじめたしお。特に、玹介すべき事瞟はございたせんが、気たたに曞いた文章を読んでいただけるず幞いです。読曞が趣味で、以前はショヌペンハりアヌや挱石を奜んで読んでいたした。最近は挫画も読みたす。もし、私の文章で䞍快にさせおしたったら、埡免なさい。枩かい目で芋おいただければず思いたす。

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