
ユニバ帰りの電車で、やさしさを2回ももらった日
ユニバーサルシティ駅から、電車に乗り込んだ。
エスカレーターを下っている時点で、ホームに停車していた電車は、すでに乗客がほとんど乗り終えていた。発車まではあと1分。そんなに焦る必要もないので、少し考える。
「1本見送って、次の電車に乗った方が座れるのでは?」
朝から夕方までユニバで思いきり遊んで、足はもうくたくた。おまけに、「つかれちゃった、もうあるけない」と言う娘を抱っこしている。できれば座って帰りたい。
でも、今停まっているのは大阪環状線直通の電車。次に来るのは西九条止まり。つまり、1本見送ると乗り換えが1回増える。
「まあ、座れなくてもしゃーないか。仕事で疲れたわけでもないし、遊んできただけやし」
そう思って、目の前の電車に乗り、立って帰ることにした。
娘を抱っこしているので、ドア付近の混雑を避けて、車内の奥へとじわりじわり移動する。ある程度スペースを確保して、「さて、つり革でも持つか」と思ったそのとき、斜め前に座っていた男性がすっと立ち上がった。
「こちら、どうぞ」
(えっ、申し訳ない……わたしたちは遊んできただけなので……)
そう思って「いえ、大丈夫です」と一度は断るものの、「どうぞ」と促され、その男性はそのまま別の場所へ移動してしまった。
「ありがとうございます!」
聞こえるように伝えて、ありがたく席に座る。世の中はやさしい。
大阪駅で乗り換える。次に乗る路線はダイヤが乱れていて、ホームは大混雑していた。本来なら、この乗り換えタイミングなら座れるはずだったけれど、今日はそうもいかない。
まあ仕方ない。立って帰ろう。そう思いながら乗車する。
案の定、空いている席はない。車内はほぼ満員に近い状態だった。
(でも、数駅進めばきっと空くだろう)
いつもの乗降の流れから、「この駅では座れるはず」と見込みを立てる。それまで少しの辛抱。
ところが、腕の中で眠ってしまった娘の重みが、じわじわと堪えてきた。抱っこ補助ベルトを使っているとはいえ、眠った4歳児を抱え続けるのはなかなかきつい。さらに人の多さで車内は暑く、顔もじんわり火照ってくる。
(ちょっと、これは限界が近いかもしれない……)
大きめの駅に停車する。人は降りたものの、近くの席は空かない。
(次の駅ならきっと座れる)
そう自分に言い聞かせて、もう1駅耐える。快速なので、体感としては数駅分の長さだ。
そして次の駅。
……それでも、近くの席は空かなかった。
向こうの方で空いた席に、近くの人がさっと座るのが見える。腕はもう限界に近い。これはもう、誰かに声をかけるしかないかもしれない——そう思いながら顔を上げたとき、通路に立っていたおじいさんと、ばっちり目が合った。
そのおじいさんは、こちらを見ながら、手で「こっちにおいで」と合図をしている。
(わたし……?)
半信半疑のまま人混みをかき分けて近づくと、
「しんどいやろ、ここ座り!」
なんと、席を確保してくれていたのだ。
さっきまで、少し離れた場所に立っていたはずのおじいさん。向こうで席が空いたのを見て、そこに移動し、わたしのために空けてくれていたらしい。
ありがたい。本当にありがたい。
「すみません」「ありがとうございます」を何度も繰り返しながら、その席に座らせてもらう。
今日は、人に席を譲ってもらってばかりだ。ユニバで遊んできただけなのに、なんだか申し訳ないくらいに。
最寄り駅に到着し、降りるとき、改めておじいさんにお礼を伝えた。
「ありがとうございました!!」
聞こえるように、少しだけ大きな声で。
人からもらった親切は、ちゃんと覚えておきたい。そして、今度は自分が渡す番になりたい。
ひとりで電車に乗っているとき、同じ車両に少ししんどそうな人がいたら——そのときは、迷わず席を譲ろう。そう、心に決めた。