
冬を過ぎても相思想夢を見る
桜の花びらを降らせる小雨の音に包まれ。
プードルみたいな髪のぼくとあどけない素っぴんのきみが向かい合わせで座って、お互いの話をぽつりぽつりとしながら、くだらないことで笑う。
お揃いのパーカー、まろやかさは自然体、世界中にふたりだけ、切り離された緩やかな甘く、柔らかく、とろける、何よりも大切な時間。
「なんか映画っぽいね」と照れたきみが言った。
こんな日常を描いた映画がぼくらの中でずうっと撮影されるんだ。
◆
「怖い夢を見た」と起きたてのきみに甘えた。
ぼくの頭を撫でながら、「もう大丈夫だよ」「わたしはここにいるよ」?
嘘つき。どうせ帰るくせに。
でももっと嘘つきはぼく。そもそも夢なんて見ていない。
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きみがこの部屋にいた痕跡を少しでも残したいから、ぼくは洗面台を詰まらせてしまう長い髪の毛を敢えてそのままにしておく。
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冷蔵庫を開けるといくつか作り置きがあって、きみの丸い文字でカラフルに綴られるぼくへの気持ち。たまらなく愛おしいのにそこにはもういない空っぽを人は寂しさと呼ぶ。
