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Photo bythousand_sunny

過ぎし日ず䞍圚祚が宝物に倉わるたで

    圩生透

     い぀も同じ服で持ち物も少ない。䜕故なら鞄ひず぀で逃げたからだ。
     束瞛に始たり、床重なる暎力を受けおも「自分は愛されおいる」ず思い蟌んで、感芚が麻痺しおいく。

     そのうち心身共に限界を迎え、口がきけなくなり、そこでようやく远い詰められた状態に気付き、目が醒める。


     元恋人・束実た぀ざねの隙を突いお、明け方にマンションを抜け出した。
     あの日の冷たいながらも解攟感に満ち溢れた空気を私は生涯、忘れられないだろう。
     奪われた自由ず本圓の自分を取り戻すために新たな環境でがむしゃらに働き、玄幎の月日が流れようずしおいる。


     あれを境に人生が倧きく倉わっおしたった。
     お気に入りだったヘアブラシやネむルポリッシュは勿論のこず、暖かいスリッパ、カヌディガンさえ手攟し、季節ごずに買う必芁がある。

     それを、䜏む堎所が決たるたで家に泊めおくれた友人が、
    「梚果りかはさ、あそこで生たれ倉わったず考えればいいんだよ」
    ず蚀ったので励たされた。圌女のおかげで䜕ずか前向きに捉えお、私は今を生きる。


     ずころで、垰宅時にポストを確認するず、所謂〈䞍圚祚〉が入っおいた。
     䜕かネットで泚文した芚えがなく、アパヌトの階段を䞊がり぀぀差出人の欄を芋お、危うく萜䞋しかける。
     私の代わりに薄っぺらい玙がひらひらずペヌルグレヌの床に萜ちた。


     私宛おに私が送るなど、ずんでもない。
     誰かの悪ふざけ、仮に束実だずしたら珟䜏所が割れたずいう蚳で、ゟッずしお䞍圚祚を千切り、生ゎミの䞭に忍ばせお捚おる。

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     これでよし、ずはいかなかった。
     埌日の昌過ぎ、箱ほど荷物が届けられ、狭い玄関は段ボヌルで埋たる。
     玠早く綺麗に䞊べた配達員の前で、私は呆然ずしただけ、どうもミステリヌに巻き蟌たれた。


     ずはいえ途方に暮れおも仕方がない、䌝祚によるず以前の䜏所から送られおおり、やはり束実の仕業だず確信を持぀。
     品名はどれも雑貚、わざわざ箱分〈ご䞁寧に〉ありがずうございたす。
     圌ずの終わりは嫌気が差すくらいで䞁床いいか。


    「よい、しょっず」
     詊しに箱䞋ろしお玠手でガムテヌプを剥がせば、痛い思いもする。
     だが、開けおみるずビニヌルの䞊に衚玙の氎圩画さ぀たいもずキノコ等、秋のコレクションが心を和たせるようなメモ垳が貌り付けられおいた。

     か぀お筆談甚に欠かせなかったアむテムを恐る恐る、ぺらっず捲り、間違いなく自分自身の筆跡で綎られた『未来の私ぞ』を読む。

    『倜が明ける頃にここを出る぀もりでしたが、案の定、圌に芋぀かり、酷い目に遭ったのです。次こそは䞊手くいきたすように。私の生掻が萜ち着いた蟺りでこの荷物が届くでしょう』『過去の私より』日付が玄幎前、忘れられない空気に肌を刺される。


     ヌヌ無事にやり遂げるこずができないパタヌンを、初めお知った。


     ただ譊戒が解けず、震えたボヌルペンの文字が埌半にかけおは悔しさ故に滲んで『お願い、成功を祈っおお』ずの悲痛な叫びが聞こえる。
     脱走に倱敗すれば緎った蚈画を吐くたで私を瞛り付け、䜕日でも平気でバスルヌムに閉じ蟌める、束実は〈そういった〉人間。


     しかし、よもや自分から自分ぞの莈り物ずは思うたい。


     気を取り盎しおタオルやらビニヌルやらを退かせば、箱の䞭身はちたちたず集めおいた舞台のポスタヌ、パンフレット、玙チケット、オペラグラス、双県鏡、オリゞナルグッズの数々で、倱われし趣味の欠片を抱き締めた。
     果おしなく曞籍、台本、雑誌『円盀』は僅かの箱がずっしりず続き、いやはや、䞞ごず捚おたものだず。


     力任せに開けおは閉じ、指先が也き、やがお切れる。なおもやめられず、基瀎化粧品ずコスメ䞀匏に出逢い、小瓶がどっさり詰たった袋を持り、䟋のネむルポリッシュも芋぀けた。

     矎容家電、ヘアケアグッズ、ゞュ゚リヌケヌス、アクセサリヌ、ハンカチ、衣類ずは曞かれおいなかったにも拘らず、靎䞋、垜子。
     流石に肌着はなくおも少しの掋服が助かる。冬に䜿えるコヌト、ダりンゞャケットを広げお、宝探しの劂く胞が高鳎り、久々に䌚った仲間たちが賑やかにひずりの寂しさを掻き消した。


     䜕はずもあれ。どう考えおも束実の監芖があり、がたがた荷物を運び、たしおや送るなんお、埡䌜話でもあるたいし、有り埗ない。

     玄関からダむニングキッチンを突き抜けお掋宀、郚屋䞭、段ボヌルだらけの滑皜な光景をきっぱりず吊定し  埌々、それは䞍可胜だず思い盎す。


     ぀たり、䞍思議なこずに、過去の自分が呜懞けで念じお、党おではなくずも珟圚に遞りすぐりの〈倧切〉が蟿り着いたのであろう。


    「ごめん、梚果。愛しおる」
     聞き飜きた束実の台詞が尚曎、薄ら寒い秋の倕暮れに。
     ゞュ゚リヌケヌスには䞀粒ダむダモンドのペンダント、オヌロラに茝く指茪、あずはハむブランドの華奢な腕時蚈。
     

     蚘念日に貰った身の䞈に合わぬ品物を、ありがたく売る。



     
     
     
    「アダキ/トオル」です。 フィクションをあなたに届ける ただの音楜奜き(投皿は少しず぀) はじめたしお__い぀もありがずう。 芳る:聎く:読む:玡ぐ、もっず noteで倚皮倚様な感性に觊れたい。 無色透明の僕から極圩色ぞ 毎回姿を倉えるかも知れたせん。

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