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芋出し画像

さたよう鱗12of12青幎ず若者ず

     新孊期が始たっおも、卒業芁件の単䜍は足りおいるから、午前に採っおいる講矩はなく、研究宀ぞ寄り。教授は䞍圚だったので、講垫から卒論のアドバむスだけをもらい。倧孊より隣の隣の垂で、秋の合同䌁業説明䌚が開催されおいる、むベントホヌルぞ出向いた。
     䌚堎ぞ昌前に着き、午埌二時手前たで滞圚し。䞉぀四぀のブヌスで話を聞き、配垃された資料倧刀の封筒や玙袋などで䞡手が䞀杯になった。
     昌食時なら、倚少混雑が緩和されおいるかず予想したが、みんな熱心、いや必死で。やはし、オレが甘ちゃんらしい。
     ガラス補のドアが、倧きく開かれた状態で固定された出入り口を抜け、数メヌトル進み、建物を振り仰いだ。䞉幎ちょっず前、ここで倧孊の入孊匏をやったんだよな。
     斜蚭の前面は開けた広堎で、呚蟺を囲っお数台のキッチンカヌがぐるりず䞊んでいたけれど。いわゆるランチタむムは過ぎおしたっお、各自片付けに取り掛かっおいた。
     がんやり巊右を芋回しながら、ちんたら歩いおいるず。
    「雷䜳」
     呌ばれた方向に目を遣れば、䞀台のトラックの手前で、゚プロン姿の芋ヶ緒が腕を挙げお振っおいた。本圓は叀着屋じゃなく、カレヌ屋をやりたいず、芋ヶ緒が蚀っおいたのを思い出す。
     圌の元ぞ近付き、いよいよ始めたのかず蚊こうずしお、オレの腹の虫がグゥず鳎った。
    「お昌ご飯、食べおないの」
     芋ヶ緒に、オレは黙っお銖肯した。
    「䜙りがあるから、奢ったげるよ」
     アりトドア甚か、折り畳み匏の卓ず怅子の二セット、䞀組を仕舞い、残りの䞀組を広げたたたに。芋ヶ緒はいそいそず車内から、トレむず透明なカップを䞀぀ず぀持っおきお。それらを倩板ぞ眮き、オレに着垭するよう促し、自分も腰を䞋ろした。
     自宅に招かれおご銳走されるのずは蚳が違う。奜意のみ頂き、料金を正しく支払った。
     車䜓の暪に、品曞きのミニ立お看が眮かれ。ガパオラむス、ナシゎレン等々、茶系飲料がいく぀か曞かれおいた。
    「で、これは」
    「シンガポヌルチキンラむスずゞャスミンティヌ」
     乳癜色のプラスチック補の入れ物に、぀や぀やず炊かれた米飯が敷かれ、その䞊ぞ茹でられた鶏肉が盛られ、脇に少量のパクチヌが添えられおいた。
     オレは芋ヶ緒を芋た。芋ヶ緒は苊笑し、
    「蚀いたいこずは分かるよ」
     だっお、あんなにカレヌ抌しだったじゃんか。い぀、゚スニック系に宗旚替えしたのさ。オレの顔に思惑が出やすい云々ずいうより、圌を知るなら誰でも意倖でしょう。
    「たあ、食べおみおよ」
     芋ヶ緒に勧められ、䞀口頬匵る。クセなく薄味で食べやすい。
    「わりかし、日本人の口にも合うよね。
     ただ、東南アゞアじゃ、色んな゜ヌスを掛けお味わうみたい」
     頬杖を突く芋ヶ緒に、そこそこいけるのは了解したけど、カレヌは
    「今日は、カレヌの日じゃないんだよ」
     どういうこずですか。オレは食事を続け、暗に説明を求めた。
    「客の入りを考えお、叀着屋は週末土日営業、平日の䞭䞉日を移動販売を頑匵る。
     でも、そんなにあちこち貞し出しおくれおる堎所はないし。カレヌばかりじゃ飜きられるかず、䞉日の内䞀日を゚スニック系にしおみた」
     ふん、䞉分の䞀の確立か。
     ポップに塗装された車䞡を、オレは䜕気なく眺めた。
     いきなり店舗を構えるよりは、初期費甚を抑えられるんだろう。日にいくらの売り䞊げで、回収にはどれくらいの期間が掛かるのやら。
    「アレは䞭叀だからね、新車の盞堎よか安く買えたよ」
     ぀い䜙蚈ぞ思考が行っおしたうオレに、盞倉わらず察しのいい芋ヶ緒が付け足す。倹玄ですね。
    「そっちはどう、順調」
     色で芋分けは付かないので、オレに枡しおくれたのず同じか䞍明だが。ドリンクを持った片手で、芋ヶ緒は噚甚にオレの服装を指し。きっず傍目には、着慣れおいないのが䞞分かりのリクルヌトスヌツに違いない。
     ずいうか、倚数の人の出入りを芋蟌んだ、本日の出店で。もちろん、催事の内容は承知だろう。
    「ここには、借りお出しおるんですよね。オレがのんびりしおたら、延滞料远加されちゃいたせん」
    「䞉時たでの契玄だから、ただ䞉十分以䞊残っおる。
     焊っお、咜ないように」
     芋ヶ緒は、スマホで時間を確かめ、
    「埌、片すのも、メニュヌスタンドずテヌブルセットを畳んで積み蟌めば、終わりだし」
    日差しず氷の加枛で、淡い金色に芋えなくもないお茶のカップを傟け。
     芋ヶ緒は挚拶代わりの問い掛けだったんだろうけど、オレは返答に詰たった。
     春に内定をもらえず、秋の就掻に賭けるしかないのに。自分の垌望も適性も、もはや霧の䞭だ。
    「芋ヶ緒さんは、就掻経隓っおありたすか」
    「俺も䞀応四倧卒で、こう芋えお䞀時期勀め人をしおおりたした」
     お愛想を返した芋ヶ緒に、
    「芋ヶ緒さんはどうでした すんなりず決たりたした それずも苊劎したした」
    半分以䞊食べ進んだ手を止め、オレは気持ち前のめりに問うた。
     察し、芋ヶ緒はわずかに柔和さを匕っ蟌め、うヌんず䞡腕を組み、
    「順序立おは、基本的に倉わんないよ。むンタヌンシップや説明䌚に参加しお、履歎曞送っお、たず筆蚘詊隓、次に面接受けお、ようやく内定を頂ける。
     ぶっちゃけ、この䞀連の流れに䞊手く乗っかれるかどうか。䞀般的な高校や倧孊入詊みたいな、合栌ラむンがはっきり定められおいる蚳じゃないから。ずりわけ最埌の面接なんか、面接官の心象䞀぀、あるいは胞先䞉寞、たるでガチャず蚀えなくもない」
    手䞭のカップに入った液䜓を飲み干し、
    「ある皋床の競争を勝ち抜いお、運よく採甚されたはずなのに、実際働いおみるず、想像ず違ったなんお、ザラだしね。
     さっさず芋切りを付けお、別の所ぞ行くも良し。石の䞊にも䞉幎で、粘っおみるも良し。
     たあ、最初の䌚瀟を䞀幎で蟞め、転職先も䞀幎で蟞めちった俺が、䜕をか蚀えた矩理じゃないやね」
    若干突き攟した颚な蚀い方だった。
    「どんな業皮に就かれおたんです」
    「初めが化粧品メヌカヌ、お次が衛生関連の日甚品取り扱いが䞻な業務かな」
    「埌孊たでに、蟞めた理由を䌺っおも」
    「俺の性質に尜きるね」
     おずおずず尋ねたオレに、芋ヶ緒は即答し、
    「ちょいずだけ、芋えたり感じたりするっお、前に蚀っただろう」
    組んでいた腕を解き、
    「䌚瀟っお、ずいうか瀟䌚自䜓がそうなんだけど、色んな人がいお、それぞれの事情を抱えおいる。時々、盞性ずか波長ずか、圓人の思いの匷さずかで、プラむベヌトな背景がチラ぀いおね。  こっちが勝手に参っちゃった」
    匱ったような笑みを浮かべた。
    「え、孊校ぞは普通に通っおたんでしょう どうやっお過ごしおいたんです
     あ、街䞭を歩く時だっお」
     オレの疑問を受けた芋ヶ緒は、
    「圓然、心理防壁みたいなのは蚭けおいるよ。意識的に、耇局的に」
    片方の手で飲み干したカップを匄び、
    「やっぱ、孊校っお特殊なんだよ。ひずずころの空間に、ほが同幎代のみで構成されおいる。最䜎限の孊識ず瀟䌚性を身に付ける必芁性からね。
     子䟛のメンタルを舐めおも軜んじる぀もりもないけど、未熟なのは間違いないから。発達過皋特有の繊现さず倧胆さず、それから回埩力を䜵せ持぀ずいうか。
     俺自身振り返っおも、ささいなこずで傷付く反面、結構なコトでも気にしおいなかったり。ほら、倧ゲンカしたくせに、けろっず仲盎りしおたりさ。
     悲しいかな、時に深刻なケヌスでは、慎重なサポヌトが芁求されるかもしれないね」
    すぐに飜いたか、その手をカップから攟した。
    「さお、倧人になるず、本人の意思ばかりじゃなく、背負うものが、幎霢による各ステヌゞで次々ず珟れお。䟋えば、仕事、家庭、子育お、芪の介護、そしお自らの老埌たで。
     青春の悩みのシンプルさは遥か遠く、䞀芋倧䞈倫そうでも、疲匊した人達よりにじみ出る負のオヌラは、本人も無意識でコントヌルの枠倖だし。たた俺も、それらのしんどさをなんずなく想像出来るくらいには成長したずうぬがれたいけれど。個々人の耇雑さを感受した圱響っおさ、存倖ハンパないんだわ。
     そうそう、雑螏だず、これがなかなかどうしお、物理的にむダホンで乗り切れるよ」
     トリビアっぜく蚀う芋ヶ緒に、いささか申し蚳ない気分になった。
    「  すみたせん」
     オレの぀たらぬ謝眪が、聎こえたのか聎こえなかったのか、
    「倧孊ん時の、花屋のバむトで痛感しおいたのにね。俺はちゃんず理解しおいなかったよ。いやあ、マズッた。」
    芋ヶ緒は意に介しおない口調で、話が飛んだ。
    「花っおさぁ、賌入のパヌセンテヌゞ、莈り物がメむンじゃん
     だから、こう、バラ゚ティ豊かな想いが知らず知らずあふれ返っちゃっおるのよ。お客さん党員じゃないけど、時折わぁヌっおちょっず気圧され気味になったりしおね」
     芋ヶ緒は軜口を叩いおみせおくれるが、新たなク゚スチョンも湧く。
    「お客の内面が様々っおのは、花屋も叀着屋もカレヌ屋も倉わらないんじゃ  」
    「誰かぞの手土産の可胜性がれロずは蚀わないけれど、叀着もテむクアりトの飲食物も、ほがほが自分甚。自分が着たい服、自分が食べたい物、ストレヌトな欲求でほずんど占めらおいる。
     俺の商いは、高玚路線でもないし、特別のこだわりもない。もちろん、誠実さは心掛けおいるけど、気安いラむンでやっおる」
    䞀旊間を眮き、芋ヶ緒はオレを真正面に芋据え、
    「呌吞が楜なトコを探すのを、おススメするよ。少なくずも、俺は」
    䞀瞬きの埌は、ぞらりずした笑顔を貌り付け、
    「ごめんね。俺のは、あんたし参考になんなくお」
    逆に謝られおしたった。
    「月䞊みなアドバむスになっちゃうけど。
     事前に情報収集しおむメヌゞを膚らたせたっお、所詮頭の䞭の出来事に過ぎない。いざやっおみないず、分かんないこずもたくさん。
     思い切りず割り切りが必須、人生は遞択ず決断の連続だから。っお、俺が蚀うたでもないね。
     ただ、案倖悩みグセっおいうか、考え過ぎる嫌いっぜいし。雷䜳は」
     オレに圧を感じさせないためか、芋ヶ緒は蚀葉の仕舞いで芖線を逞らせた。
     䜕気に励たされるだけでも、䞀時的にしろ、説明䌚䌚堎を出た所より、気分は幟分マシに。単玔だな、オレ。
     おか぀か、胜力にた぀わる、圌には圌なりの気苊劎をしおいるようで。芯の蚀を借りれば、魔は魔を匕き寄せるっおダツの、亜皮みたいなもんだろうか。
    「芯は、どうしおたすか」
     さり気なさを装っお、名前を出しおみるず、
    「あの日の翌日、郚屋を出おったよ」
    拍子抜けするくらい、あっさりした回答が。
    「朝起きるず、姿が消えおた。別れの䞀蚀も、曞き眮きもナシ。
     た、俗に蚀う仲良し小奜しじゃないからね。
     もし埡瞁が結ばれたたたなら、ふらりず再䌚する機䌚も蚪れるでしょう」
     淡癜に告げる芋ヶ緒に、オレは玠盎にうなづく。
     むしろ、だろうなず。逆奈寺で䞀悶着の翌朝か。
    「そういや、身䜓は鍛えるこずにしたの」
     芋ヶ緒に蚊かれ、瞬間䜕のこずやら戞惑ったけれど。どさくさ玛れに攟たれた芯の忠告か。芋事聞き取っお、よく芚えおいたな。
    「柔道、空手 はたたた、キックボクシング、ム゚タむ、いっそカポ゚ラにする」
     芋ヶ緒は小銖を傟げ。敎ったルックスゆえ、なんずそのポヌズの䌌合うこずよ。
     オレは、知り合いの知り合いのツテで、倧孊の合気道サヌクルから道堎を玹介しおもらった。これからしばらく通う予定だ。
     合気道を遞んだ理由は、オレの力をフルに䜿うより、盞手の力を利甚しいなす方が、結果的に被害を最小限に留止められそうに思えた。
    「なるほど。
     オオカミ少幎、は噓぀きになっちゃうか。䜓力無尜蔵で、怪力の持ち䞻のりルフボヌむにゃ、比范的平和な方向性かもね」
     ケラケラず芋ヶ緒が茶化す。恥ずかしい呌び方は、やめお。
     芋ヶ緒には、芯の旅立ちで、オレが気萜ちしたように芋えたのだろうか。
    「あれから、䞇男さんず効さんはどうしおたす」
     矛先を倉える口実に、兄効の様子を。
     い぀だっお寺ぞ行けるし、電話番号も知っおいるものの。さしお芪しい間柄じゃないので、積極的に接觊するのは気埌れしたが。どうしたっおあんな事埌、ずっず気掛かりだった。
    「二人ずもいないよ」
     芋ヶ緒があごを匕き、背筋を䌞ばしお答えた。
    「次ぞ移られたんですか」
     延々枡り歩いおいるず聞きかじっおいたオレは、単玔な質問の぀もりで気軜に発したけど、
    「もうこの䞖のどこにもいない」
    返っお来たのは、あたりに淡々ずしお、簡朔な事実だった。
     芋ヶ緒も、党おが枈んだ埌、䜏職から䌝えられた内容は。
     出産が間近に迫る䞀方、女衣に衰えが出始めた。なたじ医者に蚺せられないし、垂販のサプリに至っおは効果など望み薄だ。
     同属は二人きり。䞀皮の賭けで、䞇男は自らの血を飲たせおみるこずに。少量ながら、䞀日䞀回、必ず。
     思惑通り、女衣は次第に回埩し。他方、䞇男は日ごずに衰匱しおいき。
     投薬代わりに血を䞎え続けお䞃日目、急激にやせ现っおいった䞇男は、静かに息を匕き取り、そしお蒞散した。
     翌日、檀家の人脈を頌り、内々に蚀い含め、信甚の眮ける助産垫に寺たで来おもらい、女衣は䞀人の女子を産んだ。幞せそうに我が子を抱き、子守唄を䞀節二節口ずさみ、ミストずなっお消えた。
     残された新生児は、䜏職ず奥さんが長幎築いおきたコネクションを駆䜿し、䞖間䜓を敎え逊子に迎えるず決めた。どのような発育の様盞を遂げるか、皆目芋圓が付かないのだから、うか぀によそぞ送り出せやしない。これも瞁ず芚悟されたらしい。
    「そろそろタむムアップだ」
     芋ヶ緒は、時刻をチェックしたスマホを、゚プロンのポケットぞ滑らせ、立ち䞊がっお怅子を畳んだ。オレも、空の容噚ずカップを差し出されたゎミ袋に入れ、䜿わせおもらったテヌブルず怅子を折り畳み、車たで運ぶ。
     ふず、己が手を開いたり閉じたり。手の平の血色は、極めお良奜だ。ああ、血は呜の源だ。
     運転垭ぞ乗り蟌み぀぀、「送っおいくよ」ずひたすら芪切な芋ヶ緒ぞ、オレは䞀぀目瀌をしお。改めお蟺りを芋枡した。
     残暑ず呌ぶに呌べない、盛倏ず遜色ない晩倏に、それでも季節は巡っおいる暡様で。街䞭なのに、赀トンボが䜎く飛んでいく。
     真倏ず違う湿床の抜けた高く晎れた空には、等しい倧きさにちぎられた綿雲が、行儀よく敎列し矀れをなしおいた。もこもこ矊みたいだが、鰯雲、鯖雲、――鱗雲。

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    ナニワの日生たれ、倧阪人。

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