
自閉症児と旅する心得
息子を連れていざ旅行へ!
それも国内ではない、初の海外旅行なのだ。
5歳の息子は様々な特性を持っている。
なのでこういう時にまず思い浮かぶのは「息子、歩けるかなぁ」などという心配である。
世間でいう家族旅行といえば、話題の観光地を調べたり、その土地ならではの料理を事前に写真なんかで見て浮き足立つものだと思うが、我が家はそれとは少し違う。
冒頭にもある通り、息子は自閉症+ADHDの特性がある。つまりじっとしているのが難しい性分。
その息子がまず安全に歩けるかということ。急に走り出したりしても良いように街の雰囲気は念入りに調べる。慣れない土地で小さな拘束(座ってね、置いてある物は触らないよ等)が続くと彼に限界が来るので、それを発散させる広場なんかがあると尚良し。調べるのはSNSで話題の映えスポットではなく、グルメでもなく、ノー癇癪ノーパニック計画なのだ。
グルメの面で言えば、ポテトが置いてあるお店は大切。発達界隈で特に愛されるのがマックのポテト。これは世界中どこにでもあるから嬉しい。とはいえせっかくの海外旅行なので、マックのポテトは保険にさせてもらい、当日は【大人も楽しめるポテトがあるお店】を探して練り歩く。
ここまでの旅の流れを知り合いに話すと、決まって「大変だね」と労ってもらうことが多い。そこには発達関連について知識がなく、何と言っていいか分からないから、なんとなく言った言葉でもあるだろうが、一般的な旅行よりも思考を凝らすという点では素直な感想なのだと思う。
しかしながら当事者である私は、ある種の計画ありきの旅慣れで、まぁまぁ、それなりに、楽しい。
さて、練り歩いて辿り着いた先はお洒落イタリアン!海外で食べるイタリアンは素敵。
日本よりも一品の量が多いし、ピザのチーズはよく伸びるし、お冷にレモンが浮いている。お洒落〜!条件付きのお店にありつけた安心からか、写真付きのメニューに写るポテトはいつもより上等に見えてワクワクする。なによりも子供ファーストである店内は終始、穏やかで優しい時間だった。
思えばこの土地では、ハンデを持つ人に対して周囲は非常にスマートで、やりたい人がやればいい、のような空気感があった。できない時や気が向かない時はやらない。街中で息子がパニックを起こした時も通常なら視線が向けられる場面であったが、絶賛パニック中!な息子に脇目も振らず何人も通りすがった。こんなことは初めてで、その振る舞いがとても気持ちよかった。
一方で、またある時は子供に向ける人々の笑顔が眩しいと感じるほどで、奥にいるスタッフまでわざわざ子供を見に来ては幸せそうに笑ってくれる。
辿り着くまでの出来事を脳内再生しながら、テーブルいっぱいのご馳走を夢見心地でたらふく食べた。
そんなわけで、大変と労われる我が家の旅もなかなか悪くないのだ。悪くないどころか、息子の育児経験がある分、人の優しさに触れた時に心から最高だと思える。生きててよかったー!と心底、思うのだ。
息子も同じ思いだろうか。
今にも涙が落ちそうで目頭が熱いまま、息子に聞いてみる。
「旅行、楽しかった?」
「マックのポテト!美味しかった!」
涙はスーッと吸収されて、代わりに笑いが吹き出てしまった。
息子にはマックのポテトが一番のご褒美。
旅行の心得である。