
第10回 130万円かけて気づいた、私に合わない生き方――結論として
連載(全10回):引き寄せが苦しかった理由〜130万円で得たトランサーフィン
全10回にわたって綴ってきたこの連載も、今回で最後になります。
130万円を投じ、心も体も追い込まれた日々。
そこから離れ、トランサーフィンという考え方に出会い、今の私が感じていることを、ここにまとめたいと思います。
「怒り」が連れていった場所
私が公務員を辞めたとき、心の中には強い怒りがありました。
どれだけ頑張っても評価されない
責任の重さと報酬が釣り合わない
ここから逃げ出したい
そんな思いが積み重なっていました。
当時の私は、「外の世界に行けば、正当に評価されるはずだ」と強く信じていました。
今振り返ると、その期待と焦りこそが、私を別の苦しい環境へと導いてしまったのだと思います。
怒りはエネルギーになります。
けれど同時に、視野を狭くし、選択を極端にする力も持っています。
私は「自由になりたい」と思いながら、別の形の不自由さの中に飛び込んでしまったのでした。
今振り返ると、不思議なことに気づきます。
あのビジネスコミュニティは、いつも「あなたのため」「みんなを幸せにしたい」という言葉を掲げていました。
けれど実際にそこにあったのは、ごく普通の利益の構造でした。
言葉自体は、何も悪いものではありません。
問題は、それを聞く側の状態にあったのだと思います。
心が弱っているとき、人は「あなたのため」という言葉を、検証せずにそのまま信じてしまう。
元気なときなら立ち止まって考えられる一言が、焦りや不安の中では、そのまま心に入り込んでしまうのです。
これは私だけの弱さではなく、誰の心にも起こりうることだと思います。
だからこそ、こうした構造に「気づく人」が少しずつ増えていけば、耳ざわりの良い言葉だけで人を集める手法も、いつかは効きにくくなっていくのではないか。そんな小さな期待を、今は持っています。
幸せは「獲得」ではなく「調和」だった
この考え方に出会ったのは、特に何かを探していたわけでもない、ある日のネットの中でした。
「トランサーフィン」という理論の存在を、たまたま知ったのです。
読み進めるうちに、それまで自分を縛っていた感覚が、少しずつ軽くなっていくのを感じました。
特に響いたのは、第5回で触れた「重要性」と、第7回で触れた「振り子」という二つの考え方でした。
執着を下げるほど視野が開けるという「重要性」の感覚、そして人々のエネルギーを集めて大きくなっていく「振り子」の力学。
あのビジネスコミュニティが使っていた「あなたのため」という言葉も、今思えばこの振り子の力学そのものだったのだと感じます。
自分の中の「重要性」を少し下げ、振り子の力学に気づくこと。
それだけで、世界の見え方は大きく変わりました。
多くの成功法則はこう言います。
「今の自分を変えろ」
「もっと強く願え」
「高い目標を掲げろ」
けれど、私が経験から学んだのは、少し違う感覚でした。
幸せは、何かを無理に勝ち取ることではなく、自分が無理をしていない状態と調和することなのではないか。
焦りを手放し、過剰な期待を下ろし、「今の自分が落ち着ける場所」に身を置く。それだけで、現実の見え方は大きく変わりました。
公務員時代の苦しさも、ビジネスコミュニティでの挫折も、今思えばすべて「自分の中心からズレている」ことを知らせるサインだったのだと思います。
このケーススタディから言えること
ここまで書いてきたことを、改めて整理しておきます。
・強いストレス下では、最初に出会った「答えらしきもの」に飛びつきやすい
・すでに払ったコストは、これからの判断材料にしてはいけない
・「覚悟」「マインドの問題」という言葉は、冷静な検討を省略させる働きを持つ
・「重要性(執着)」が強いほど、視野は狭くなり、選択肢を見落としやすくなる
・心配や不安は、それ自体が間違いではなく、執着を下げる役割を果たすことがある
・発信が向く人と、沈黙が向く人がいる。手法に優劣はなく、相性の問題である
・内側の状態は、言葉よりも先に相手や状況に伝わる
今の私は、再び組織の中で働いています。
今は正規ではなく任期契約という形で働いていますが、以前とはまったく違う感覚でそこにいます。
評価や期待に振り回されず、どこか一歩引いた場所から、自分の人生を見ている感覚です。
環境が変わったというより、私の見方が変わったのだと思います。
自分でビジネスを起こし、すべてを背負うよりも、組織の中にいる方が、心穏やかに過ごせる。
それが今の私にとって、安心できる選択だったのだと思っています。
終わりに
130万円を失ったことは、決して軽い出来事ではありませんでした。
けれどその経験がなければ、「自分に合わない方法」に惑わされ続けていたかもしれません。
無理に変わらなくていい
無理に明るくならなくていい
無理に発信しなくていい
静かで、慎重で、誠実な自分のままでいい
自分の内側を整え、「これなら呼吸が楽だ」と感じる場所を選ぶ。
それが、私にとっての本当の自由でした。
もし今、同じような違和感を抱えている人がいるなら、その違和感は、あなたが間違っている証拠ではなく、あなた自身の性質を知らせるサインかもしれません。
世間の「正解」よりも、自分自身の「不快」「違和感」「疲れ」を判断材料にすること。
それが、この130万円の経験から私が得た、もっとも実用的な結論です。
もし今、ビジネスの場で思うように前に進めず、答えの出ない焦りの中にいる方がいるなら
その停滞は、あなたの努力不足のサインではなく、立ち止まって視野を整えるタイミングなのかもしれません。
トランサーフィンという考え方が、私にとってそうだったように、誰かにとっての小さな足がかりになれたら、それ以上に嬉しいことはありません。
今の私は、大きく稼ぐことよりも、日々の暮らしを整えることに心の落ち着きを感じています。
その具体的な工夫については、また別の場所で書いてみたいと思っています。
ここまで読んでくださった方に、心から感謝します。