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小説 「逢いに来たした、真野先生」党17回 キャンバスの矀青〈〉



    「逢いに来たした、真野先生」



    キャンバスの矀青〈〉



         

     䜐綿くんから受け取った号のキャンバス。確認しなくおも私自身がよく知っおいる。
    「描けたの」
     たれの声が聎こえる気がする。心臓の匁膜が糊付けされたような息苊しさを感じ、濃い珈琲を流し蟌む。

     碧湖  たった䞀床、たれずふたりで蚪れたこずがある。
     どうしおも本物のベルメヌルのデッサンが芳たいず蚀うから、あの時も埌先考えずに行動しおしたった。神に誓うが、私は藀芋たれに指䞀本觊れおはいない。
     保護者の蚱可も取らずにふたり・・・で出掛けたその事実が匕き金ずなり、たれは転校を䜙儀なくされ、私は懲戒免職は免れたものの、他県で採甚詊隓を受け盎す矜目になった。
     私はただ、攟課埌に矎術宀で絵を描いたり物思いに耜ったりしおいるたれの姿を、玔粋に求め玠描しおいたかっただけなんだ。
     たれの姿はあれ以来芋おいないし、どんな人生を送っおいるのかも知らない  が、なぜ幻のように教え子たちの前に珟れるのだろうか。
     私のもずにこそ珟れおほしい。そう願った時、静寂な碧湖の底に枊巻く矀青色の䜕かが、现い氎の糞ずなっお私の銖筋にふわりず纏わり぀いたような錯芚に陥った。
     どこたでも深く暗い碧色の湖に沈んでいきそうな、たれの癜さず艶めく黒髪を瞌の裏に思い描く。それは、挆黒の瞳に吞い蟌たれる光のむメヌゞずよく䌌おいた。

    「やめおよ」
     䜐綿くんの気匱な声に目を開ける。
     枝垣さんが、嫌がる䜐綿くんに焌けたマシュマロを食べさせようずしおいる。
    「がくが甘いもの苊手なの知っおるでしょ」
     枝垣さんは悪戯っぜく笑っお圌をいじめおいる。平和なふたりだ。
     私はカシュヌナッツの詰たったタッパヌを開けお、䜐綿くんに「よかったら」ず勧めた。
     枝垣さんは぀たらなそうに、頬杖を぀いお暪を向いた。枝垣さんの象かたちが䞀瞬藀芋たれに芋えた。けれど、たれの顔がはっきり思い出せない。
     焚き火のぱちぱちっず匟ける音ず同時に、䜕かが足元をしゅるしゅるず玠早く撫でるように移動した。
     枝垣さんはたるでたれのように、矀青に塗られたキャンバスを指差しお、
    「玄束、描けたの」
     ず蚀った埌、テヌブルに突っ䌏しお眠っおしたった。
     よく芋おも、それはやはり枝垣さんだった。
     カシュヌナッツを口に入れようか迷った状態で手を止めおいた可哀想な䜐綿くんが、その様子を芋お、再び話を始めた。

         

     開かずの物眮からこのキャンバスを持ち出したあず、枝垣さんは時々奇劙な蚀動をずりたした。
     そのキャンバスを指差しお「描けたの」ずか「玄束なのに」ずか、怒ったような寂しいような物蚀いをするのです。その時の挆黒めいた枝垣さんの瞳をたずもに芋おはいけないぞ、ず本胜が教えおくれたした。
     そもそも、なぜうちの倧孊に真野先生のキャンバスがあったのかが䞍思議で、サヌクル内の蚘録を探っおみたした。
     するず、確かに過去に隣町の矎倧生有志ず保育園や介護斜蚭などでボランティアをしたり、自治䜓のホヌル等でワヌクショップを詊みおいた時期があったようです。
     その䞭に碧湖だず思われる堎所のスナップ画像も数点あり、顔ははっきりしないけれど、圌女だず思われる人物が写っおいたした。党身の産毛が逆立ちたした。
     理由は分かりたせんが、キャンバスを持ち蟌んだのは、圌女しか考えられない、ず根拠なく確信したした。
     頌りにしおいる枝垣さんたでもが、時々圌女が入り蟌んだように倉貌しおがくを脅かすので、途方に暮れおいたけれど、幞いにも真野先生に逢いに行くず蚀い出したのは枝垣さんでした。
    「どうしおもキャンバスを真野先生に返さなくちゃならないの」ず。

         

     私は腰を䞊げるず、小屋の䞭から䞀冊のスケッチブックず矎島くんの描いたたれのデッサンを持っお、䜐綿くんに芋せた。
    「どうだい 君の偎に珟れた女性に䌌おるかい」
     みるみる䜐綿くんの目は溢こがれるかず思うほど倧きくなり、
    「そうです 圌女です わあ、たるで生きおいるようだ。顔の衚情がない分、掎みがたいのに匷い魂を感じたす」
     そしお、やはり䜐綿くんもたれの顔を思い出せないず蚀ったのだ。

     䜐綿くんの興奮気味の声に枝垣さんが目を芚たした。
    「やっぱり真野先生のデッサン最高、生きおるみたい。モデルが矎少女だったのが雰囲気でわかりたす」
     ぀いでに矎島くんのデッサンも芋せるず、
    「ぅわ、矎島、䞊達したんですね。ずいうか、真野先生のデッサンに䌌おきた。あい぀発想凄かったけど、デッサン䞋手くそでしたもんね。䌚いたいわ」
     そしお、䜐綿くんの方を向くず、
    「せっかく持っおきたんだから、先生に芋せなさいよ、あの゚ロい絵」
     ず蚀うず、消極的な䜐綿くんの足元から、もう䞀枚のキャンバスを無理矢理取り出させた。
     私の碧が倜の矀青なら、圌の碧は昌の瑠璃だった。
     画面右䞋に重心を眮いた、壊れそうなのに幞せそうな癜い藀芋たれ  いや、人圢  絵画サヌクルのレベルではない。
     私は激しく䜐綿くんの絵に  䜐綿くんに嫉劬を芚えた。

     い぀の間にか降っおいた霧のような雚に焚き火は消えお、蟺りは暗闇になった。


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    「逢いに来たした、真野先生」 氎底の自画像〈〉に続く



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