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小説 「怪物 〜曖流のなんでもない日垞〜」 第13回 〈第四章 氎平線 〉


    「怪物 〜曖流のなんでもない日垞〜」 


    第四章    氎平線


    


     実梚果はホットコヌヒヌを䞀口啜るず、ゆっくりず数本の新聞の切り抜きを曖流のに送った。
    「溝巻氏が連茉コラムを海原新聞に寄せおるのは知っおるわよね。どうせ曖流は新聞読たないだろうから、ここ最近の圌のコラム、切り取っおきたわ」
     あの斜に構えた独特な芖点で偏屈闘病生掻でも淡々ず曞いおいるのかず思いきや、昔の、それも今たで語られなかった子䟛の頃の゚ピ゜ヌドを懐かしさを隠しお淡々ず綎っおいる。
     曖流がそれらの文字を远っおいる傍そばから、実梚果は語る。
    「その海原新聞から連絡が入ったのよ。私に溝巻氏のコラムを匕き継いでくれないかっお  この意味、曖流なら分かるわよね」
    「え」
     曖流は手の䞭の切り抜かれたコラムから、䞀気に実梚果の真っ盎ぐな目に自分の驚いた目を移した。心臓が急激に収瞮した。
    「私、居おも立っおもいられなくお、無理にでも圌に䌚おうず病院たで行ったのよ。ここのずころも既読スルヌだったし」
    「  䌚えたの」
    「いいえ、䌚えなかった。もちろん面䌚できないのは溝巻氏の意思よ」
    「この期に及んで  なんお頑固なの」
    「頑固で意固地はあなたもよ、曖流。あなたたち䌌おるのよ」
    「䌌おないわよ」
    「ほら、そういうずころ。でね、神の巡り合わせか、ちょうど圌の病宀から出おくる溝巻氏のお姉さんに䌚ったの。䜕床かお目にかかっおるから、向こうもすぐに気づいおくれた。そしお、教えおくれたのよ」
     溝巻の身䜓に、深刻な別の病が加速床的に進行しおいた事実。本人がそれを受け止めた事実。自分が死ぬたで他蚀無甚・・・・だず、姉に口止めをした事実。
     溝巻垌の姉が信頌する実梚果に「他蚀無甚」だず告げたこずを、実梚果は「他蚀無甚」だず同志である曖流に告げた。ここたでだ。
     出版瀟や新聞瀟には、溝巻自ら執筆䌑止宣蚀をしたようだ。
    「でもね、たずえ可胜性が限りなくれロに近いずしおも、圌の匷い意志のもず、これから切陀の手術に螏み切るのよ」
    「  生きたいのよ。曞きたいのよ。俺は奇跡なんお信じないっお豪語しおたけど、明らかに奇跡に賭けおる  いえ、瞋っおる  愛おしい」
    「そう  愛おしい。私たちも奇跡を信じお祈りたしょう」
    「うん、祈るわ 眠る間も惜しんで祈るわ」
    「  極端ね、曖流は」
     い぀の間にか険しかった顔が、い぀もの優しい顔に戻った実梚果の目にも、憎しみを背負い続けおいる曖流の目にも、同じ枩床の涙が流れおいた。

    『ずにかく祈ろう』

     こんな時にも蒌の声が聎こえた。
    「そうね、蒌。ずにかく粟䞀杯祈り続けるわ」

     初倏の星空、黄色い魚が、愛おしみも憐れみも慈しみの月に運び去っおいった。

         

     五月の倧型連䌑も過ぎお、ようやく街の様子も元に戻った。
     曖流は起き抜けからの頭痛が治らなくお、たった今本屋のアルバむトを早退しおきたばかりだ。
     五月晎れのセルリアンの空を仰ぐず、なおさら頭痛が暎れだす。曖流はそれを自虐的に匷いるように、䞉角公園のベンチに腰掛けた。本屋のスタッフに芋られたらさがりだず思われおしたいそうだが、なぜか垰宅したくないのだ。
     その日二床目の匷力な鎮痛剀を口に含むず、やがお脳内に靄もやがかかったようにもやもやず眠くなる。
     初倏の陜気ず薬の䜜甚で、曖流はベンチで眠っおしたった。
     倪陜の匂いを吞収した猫の䜓枩を隣に感じお、曖流はそれに寄り添うように無意識にからだを倒す。
    「なんか懐かしい匂い、知っおる感じ  」
     猫を抱き寄せようずした曖流の腕は、そのかたちが猫ではないこずにやんわり気づく。
    「なにやっおるの、こんなずころで寝ちゃっおさ」
     芚醒し切らない目を眩しそうに片方だけ開けるず、蒌の愛らしい顔が眉毛をハの字にしお曖流を芋䞋ろしおいる。
     曖流は蒌の膝を半分枕にしお、その䞡腕を蒌の腰に回しおいた。反射的に飛び起きたから、瞬間脳貧血を起こしお反察偎に倒れる。キヌンず刺すような頭痛を指で抌さえながらふらふらず起き䞊がる。
     蒌は滑皜な曖流の様子に遠慮もせずに、わははず倧笑いをしお芋せた。
    「、党く既読぀かないし通話も出ないから心配になっお来おみれば」
    「だっお  若い・・蒌の邪魔をしおはいけないのだもの。あたしは蒌より十こも歳䞊だし、無垢な蒌の前途を塞いではいけないのだもの。それに、蒌に蚀えない邪よこしたな秘密もあるから蒌ず双子なんかじゃないもの」
     蒌は眉間に指を圓おお少しだけ黙っおから、再びわははず笑っお、
    「曖流は本圓にがくより幎長者なのかい。蚀っおるこずが幌すぎお笑っおしたうよ」
    「  倱瀌ね」
    「秘密の無い人間なんおひずりもいないよ。いいかい、がくなんお生たれた瞬間から秘密を  憎むべき秘密を持っお生たれおきたんだよ」
    「  そうなの」
    「そ。だから無垢なんおありえない」
    「人は無垢に近づきたくお自分の䞭の神に赊しを請うのかしら」
    「そうかもね。憎しみを消したいず願うのかもね」
    「  家庭教垫はどう」
     違う。蚊きたいのはそんなこずじゃないのに。
    「ああ、順調順調。自分も基瀎孊習の焌き盎しができるから有意矩だず思うよ。それに、自分のための時間が倧いに出来た。新しい長線に着手しおるんだ」
     雲ひず぀ない空は、矜ばたく鳥の姿をくっきり捉えるこずができる。


     無垢に憧れるなら掌が透明になるたで芋぀めなさい



    画像


    第四章 氎平線  に続く


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