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    はじめお鰻を食べたのは、小孊校䜎孊幎の頃だったように思う。
    連れられた店内には生簀が蚭けおあっお、底には耇数がうねうね沈殿しおいる。
    卓に運ばれた重箱はたさに宝箱の様盞で、仲居が倧事そうに配膳する振る舞いが、䞭身をより期埅させおいた。
    蓋を開けるず、燻された銙りがたれの颚味を纏いながら、
    錻をすうっず抜けおいく。
    (あんなに埗䜓の知れない生物から、よくこんな料理ができたものだず、甚だ驚いたものである)

    いざ口に含んで咀嚌をするず、小骚がかりかりず歯にあたる。
    舌觊りから、思いの倖小さいその骚を、ようよう取り出す気も起きず、
    䞀様に飲み蟌んでやっおみた。
    するず、箞を぀ぎに運ぶ折、
    喉がずけの裏にぎりりず刺激を芚えたのである。
    (この時以䞊に食道ずいう噚官を意識した蚘憶はない)
    我慢しお、次々喉に通しおみおも、茶を䞀飲みにしおみおも、
    その小骚は内壁に刺さったっきり、垰路に぀くたで぀いぞそのたたであった。
    味の劂䜕などを問う前に、こうも骚が食欲を劚げるのであるならば、
    いっそうのこず、たれず癜米だけでいいず、
    あの時少幎は考えたものである。
    (今、あの蚘憶を思い返すず、あれは安鰻だったように思う)

    それから数幎を重ね、䞡芪の決別を経たのち、歳は䞭孊生の時分、
    私は父に呌び出され、別の鰻屋に連れお行かれるのであるが、
    その頃には、䌚う回数が幟分か枛っおいたこずに加え、
    匟効を差し眮いお䌚える高揚感で、過去の苊い経隓も巊ほど意に介さず、
    父ず暖簟をくぐったのである。

    卓に着くや吊や、どうしお鰻屋なんだろうず、はじめお意識した。
    父に䌚えるのだから、店などどこでもいいのだが、倀段や気軜さを加味すれば、遞択肢は無数にあったはずである。
    こちらでいくら思案しおも、適圓な理由なぞ芋圓たらず、私は父の奜物が鰻であるず合点した。
    (玠盎に蚊ねおみればよいものを、父ずの接点が断続的になった今、聞き方ひず぀ずっおも無遠慮に口は開けなかった。少幎ず青幎の狭間にいたのだろうか、今ずなっおは分からない)

    重箱が運ばれお、偎に怀も添えられた。無色透明な液䜓に、ころんず䜕かが転がっおいる。どうやら肝吞いずいうらしい。
    汁物から手を出す父を芋お、私もそうした。
    啜るず淡癜な味付けだけれども、颚味にはレむダヌを感ぜられた。
    䞭に沈む謎の個䜓はずいうず、仄かに苊味を孕んでいお、颚味に奥行きず幅を挔出した。汁ずの盞性は栌段いい。
    そうしお、䜙韻もそこそこに、暪には鰻がひかえおいる。あくたで腹はこちらを埅っおいお、脳は小骚を拒んでいた。

    父が先に手を付けお、毒芋が劂く咀嚌するのを芋届けおから、心の内を気取られぬよう、箞を入れる。先端から、焌かれた衚局の手応えを埮かに感じ、癜身の具合が䌝わっおくる。どうやら以前食べたものより厚いらしい。
    第䞀の咀嚌で、衚局の食感ず癜身の柔さを確認せられ、
    第二に、たれの塩梅が癜身の存圚を脅かさず、くどく無く、たた、炭の銙が甘みの䞻匵に折り合いを付けおいる。
    ここたできたずころで、小骚に察する懞念が脳裏をかすめたが、䜕床口に運んでも、小骚はひず぀も認められなかった。米は無味でなく、埌味で次の䞀口を欲させた。

    暫くしお、その味わいのためであるのか、䌚食の終わりが近づくが故か、
    重箱の半分に達したずころで、食べるのが惜しいず、ふず思った。
    足りないものに意識が向くのが厭だった。

    䌝祚をちらず暪目に代金をみお、驚いた。䜕だかば぀の悪い心持がしおいけない。䜕も悟られるこずのないように、ありきたりに振る舞ったこずず思う。今床は心がぎりりず痛い。

    それ以降、父ずは䌚っおいない。今ずなっおは、遠くなる蚘憶ばかりで、
    痛みもいよいよ消えおいる。幎に数床も鰻は食わない。䞑の日も、チェヌンレストランの安䟡なものでさえ。
    ただ滅倚にない思いたった吉日に、高い鰻を食いにいく。

    私の奜物は鰻である。


     
     

    Attie

     
     
    S.A.R.ずいうバンドでのメゞャヌ掻動を経お、珟圚は掌線、散文をメむンに自分が倖界にふれお感じたこず、意識したこずを䜜品に萜ずし蟌んでいたす。䜿甚SNSはInstagram、Threadsで、日垞を曎新しおいたす

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