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蓮と麗|エイプリルフール


    朝。


     支度をしながら、 蓮が静かに言う。


    「今日、少し遅くなる。」

    麗は顔を上げる。


    「そう。」

    それだけ言って、 少し黙る。


    蓮はシャツのボタンを留めながら、 

    その気配を見る。


    それから、 少しだけ間を置いて言う。


    「……って言ったら、寂しい?」


    麗の目が、 ぱち、と上がる。

    ほんの少しだけ、 顔に出た。

    その一瞬で、 蓮はもう十分だった。


    けれど次の瞬間、 麗はすぐに蓮の方へ来る。


    ほっとしたみたいに、 そのまま抱きつく。


    蓮の手が止まる。

    「……ママ。」

    返事はない。


    ただ、 胸元に額を寄せたまま、 くっついている。

    蓮は小さく息をついて笑う。


    「早く帰る。」

    麗は離れない。


    むしろ、 安心したみたいに もう少しだけ寄る。

    蓮はその髪に手を入れて、 やわらかく撫でる。


    「……早く帰るよ。」

    低い声だった。


    麗は何も言わない。

    言わないまま、 蓮の胸にくっついている。


    蓮はそのまま、 

    抱き寄せるみたいに背中へ手を回した。


    「……今日は」

    ほとんど独り言みたいに言って、 

    髪にひとつキスを落とす。

    「返り討ちだな。」


    麗は、それでもまだ離れなかった。




     
     
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