メインコンテンツへスキップ
見出し画像

7/1、1627文字の振替休日

    振替休日という実感もないまま、曖昧な朝を迎えた。10時半。何かを始めるには遅かった。今日も何もできないのだろうと、ため息とも言えない息が漏れ出るのを感じる。月始めは、何かを始めるにはうってつけだ。月始めの生理と寝坊がなければ上手く行っていたんだろうなぁと、そんなことを思っても、きっとそれが無くたってわたしは同じような日を送っていたんだろうと思った。レポートを書かなきゃ。ああ、でもSNSがやめられないなぁ。迫りくる焦燥感で集中もできずにめくるSNSは、面白くてつまらない。ふいに母が来て、スタバに行こうと言った。新作が不味かった、なんて友達の言葉を反芻しながら着替えると、新しい感触に体が起き上がってくる。好きなバンドのジャケットと鞄。ヒール&厚底ブーツで見る174cmのセカイ。服と靴がミスマッチだと母に笑われた。車でスタバに行く。不評な新作なんて頼んでやらない。新作を飲むためにスタバにくる私のような人間は、新作でないものなんて飲んだことが無かったから、実質、わたしが初めて飲むのだから、おまえは新作だ。なんて心の中で言ってみる。店内は空いていて、穏やかだった。平日だと自覚する。インスタを開けば友人がディズニーに行っていた。振休の有効的な使い方なんて私には分からない。店員さんがクリームを多めにしますかと聞いてくれて、頷く。出てきた美味しそうな、少し多めのクリームにストローを刺す。弟が帰ってくるので、注文したアールグレイのを片手に、車で帰った。部屋にドリンクを置いて、レポートに取り掛かる訳でもなくスマホを見ていた。細いストローで吸い上げると、やっぱり、おいしい。すぐに飲み切って、ダイエットしていたことを思い出してしまった。忘れたくて、SNSをめくった。ネットの友達はみんな仕事か学校だ。バタリと音がして、弟が帰ってくる。家に音が戻ってゆく。放置していたら少し氷が溶けていた。ほんのりアールグレイの味がついた水を飲む。やっとスマホから目を離して立ち上がると、忘れていた腹の痛みが再来してくる。プラの容器を掴んで持ち上げると、机にまぁるい水の跡があった。スカートで適当に拭く。顔を上げて見えるのは、いつもの家、やることばかりの家。持ち帰って飲むスタバはちょっぴり割に合わない気がした。届いたときにはあんなに美味しそうだったクリームが、氷にまとわりついて汚くなっていた。片付ける気力がなくて、飲み終わったままキッチンに放置した。蚊は大喜びするに違いない。部屋に戻って椅子に座ると、さっき拭いたスカートが太ももに触れて、冷たくて、少し、不快。人の価値って独自性に宿るものなのかしら、とChatGPTに訪ねてみるけど、返事を返すのが面倒ですぐに画面を消した。良い文章が書ける気がして、メモアプリを開いた。父に自分の文章を褒められていたことを思い出して、投稿してみようと思った。noteの会員登録を済ませ、短い文章を投げる。誰かに見つかってくれればいいな、なんて思った。どうやらいま、なんとか大賞とやらをやっているらしくて、気が向いたので、文章を書いた。誰かに見つかれば、わたしはわたしの価値を見つけられるかもしれないと、思ったのかもしれない。いや、実際はただの、承認欲求か。16歳、高校二年生の振休は、所詮こんなものだと、思う。わたしはわたしの文章に価値を見いだせないのに、すこし良い文章を書いた気がした。こんな短い文章を、誰かが好きだと思ってくれればいいのに。出来た文章をChatGPTに投げる。感想と、改善点が返ってくる。AIに褒められて気持ちよくなれる自分がいやで、わたしの文章を変えられるのがいやで、どうして投げたのかもよく分からないまま、また、閉じた。口が寂しい。やっぱり、店で飲むほうがおいしかった。メモアプリに残る自分の文章の続きに指を置く。たくさん浮かんでくる言葉を文章に変換し続ける。傍らに置かれたレポート用紙は、真っ白のままだ。

    #創作大賞2026 #エッセイ部門

    あなたへのおすすめ