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自然のなかに、人の世界のにおいをもちこまない

    においは持ち込まない

    現場に入るしばらく前に、ご飯は食べておく。
    時間はかけない。数分あればいい。

    車を止めて、パンを少し、口に入れる。
    身体を重くしない程度。
    クラッカーのときもある。
    基本、乾き物の方が多い。

    保存性が、気候に左右されないからだ。

    山の現場にはいるとき、
    ひとつのルールを決めている。
    人の世界のにおいを、もちこまない。残さない。

    人の世界の食べ物のにおいは、
    自然界にはないもの。とても刺激的なもの。

    そのことに気づいたのは、
    ふだん、現場にはいるとき、は、
    基本、ひとり。
    でも、その日は、たまたま、2人。

    それぞれ、少し離れたところにいた。

    新緑の山のなかで、
    どこからともなく、香る。お煎餅。。。

    まじか。。。


    以前、サバサンドを持ち帰ったことがある。
    現場に向かう途中で買ったものだったが、
    開けなかった。
    あの匂いを、
    持ち込むべきではないと思ったからだ。
    食べたのは、帰りの車の中だった。

    初期の頃は、
    味噌汁も。
    おむすびも。
    用意して、誰もいない、山の中。
    体力仕事の合間の、お昼ご飯。
    そういうもの、と、思っていた頃もあった。

    でも、
    におうんだ。
    遠くまで。

    カップ麺など、さいたるもの。

    それ以来、
    食べ物を、山の中に持ち込まない。
    現場で食べなくなった。

    野生動物に、教えてしまうことになるから。
    自然界にはない、そういうものが、
    ある、と。

    ある意味、職場も同じだ。
    コモンなのだと思う。

    家の延長ではない。

    だから、匂いを持ち込まない。
    音を散らかさない。
    食べることに空間を占領させない。

    現場にいくときのごはんは、
    心ではなく、現場を満たすためのものだ。

    食べることは後回しにされる。
    けれど、切り捨てることもできない。

    そのあいだに残った、ぎりぎりのかたち。
    今日も、現場への道中、乾きものを少しだけ。

    #創作大賞
    #エッセイ部門

     
     

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    「終わり」と「始まり」のあいだをゆっくり歩きながら、 手探りで見つける自分の声。 夢や日常の小さな気づきを、文章と写真で気ままに綴ります。 猫たちの下僕。海と茶沼に心ときめきます。@Qat00

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