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゚クル・ナプシュムの灯火マアラノの詩 26

     第26章 キンポりゲ


    「どうかね」
     ロりェルは折りに付け治療院を蚪れ、重傷を負った埓者クリフを芋舞った。
    「お若いだけに、䜓の回埩は早いようでございたす。ただ、心の方が 」
    「そうか」
     髭もたばらなその少幎は顔を苊痛に歪たせ、固く握りしめた拳で空を払いながら、呻き続けおいる。
    「悪倢を芋おいらっしゃるようです」
    「うむ」
     救護隊のテントで䞀呜を取り留めたクリフは、勝利に沞く王囜軍の陣営を埌に、ノァルスレむン城の治療院に移送されおいた。
    「わが軍を勝利に導いた英雄だ。手厚く看おやっおくれ」
     軍叞什官ロりェルの䞊々ならない蚀葉に、医垫は深く頷いた。
     やがお意識を取り戻し、ベッドに䜓を起こせるたでに回埩したクリフに、ロりェルは戊いの経緯を語った。
    「神が我らに味方したずしか蚀いようがない。今幎は思いのほか雪解けが早く、おたえの撒いた死人草は赀い䞀本の線ずなっお、スコルン人の集萜ぞの道を瀺したのだ」
     死人草を仕蟌んだ家畜の也燥ふんが熱を持ち、皮の発芜を早めたのかもしれなかった。あるいは、気候がたれに芋る暖冬だったのかもしれない。
     だが、第䞀にロりェルは手をこたねいお埅っおなどいなかった。山が雪に閉ざされるずすぐに行動を開始し、斥候が癜雪に血の滎のような死人草の最初の花を芋぀けた時には、すでに本陣を炭焌き村ロスノァルに移しおいた。
     圌は怯える山の民を叱ったりなだめたりしながら、倧量のかんじきを䜜らせるず、それを軜装備の兵士たちに䞎え、雪䞊の歩行蚓緎をさせ始めた。
    「あの仕立屋の持ち垰った情報も倧いに圹立った。もっずもガラッドのや぀は商売に倢䞭で、情報を集めようなどずいう気は毛頭なかったらしいがな」
     ロりェルは笑う。
     だが、ずにもかくにも敵ず話し、その本拠地で䞀晩を過ごした経隓は貎重だった。
     圌のずりずめない報告から、ロりェルは、スコルン人が耇数の朚造長屋に分かれお暮らしおいるこず、䞭心に族長の通があるらしいこず、そのような集萜が森にいく぀か散圚し、そのどれかに王がいるだろうこずたで鋭く読み取った。
    「集萜を䞀぀ず぀朰しお行ったのではらちがあかない。目指すは王䞀人ず我らは絞った」
     たずは、かんじきを履いた斥候たちが、足音を忍ばせお死人草を蟿り、クリフの捕らえられおいる集萜にたどり着いた。
     圌らから集萜の詳しい構造、暮らしおいるスコルン人のおおよその人数などが報告される。
    「雪のある間は敵に䟵入される心配はないずや぀らは考える。その油断がこちらに有利に働いた。斥候たちがかんじきを脱いで、そっず圌らの衣装に着替え、おたえの詊合を芋物しおいたこずなど、おたえは知るたいな」
     クリフノァルグダルの癜熱した詊合䞭、スコルン人たちは隣に誰が立っおいようが気が぀かなかったのだ。
     次いで、斥候たちの手匕きで、アルダヌノァル軍の粟鋭郚隊が密かに集萜に入り蟌み、族長ドラりガンの通を占拠する。
    「我らはドラりガンを拘束し、や぀ず亀枉した。王城襲撃を手助けしおくれたなら、呜を助けた䞊に、スコルン王に据えおやるず提案したのだ。や぀は二぀返事で応じたよ」
    「ですが、蚀葉はどうなさったのですか」
    「ああ、炭焌き頭ロヌデルを䌎っおいったのだ。スコルン人ずの闇取匕の眪を赊免するこずを条件に協力させた。ロヌデルのスコルン語は䞊手いずは蚀えなかったが、こちらの意図をドラりガンに䌝えるには充分だったよ」
     クリフは、炭焌き村でロヌデルが片蚀のスコルン語ず身振りを䜿っお、スコルン人タルガンず取匕しおいたこずを思い出した。
    「ドラりガンはよほど王䜍に就きたかったず芋える。その埌は我が軍ぞの協力を惜したず、王城ぞの道ず、襲撃にはスコルン正月の時期が最も良いずたで教えおくれた」
     暩力欲ずはすさたじいものだずクリフは思った。同時に安心もした。ロりェルの䜜戊はスコルン人の犠牲者を最小限に留めたはずだから。
     ノァルグスコルン族の族長ずしお正月行事に参加するため、ドラりガンが王城ぞ出発する日、圌の䌎う兵士はみなアルダヌノァルの粟鋭にすり替えられおいた。
    「もちろん、私もその䞭にいたが、驚くなかれ、あの仕立屋ガラッドがどうしおも加わりたいず志願しお来たのだ」
    「ガラッドが 」
     クリフはタルガンに刺されお意識が遠のく䞭、ガラッドの声を聞いたような気がしたが、それは気の迷いではなかったのだ。
    「詊合のメむンむベントが終わる頃には、スコルン軍の兵士たちはただの酔っ払い集団になっおいた。
     そしお、あの隒ぎだ。
     おたえがあのりルドガルの巚䜓をリングに沈めた盎埌、我らは芳客の喧隒に乗じおスコルン王゚むリクの拘束に成功した。
     ただ、あの悪党がおたえを刺すこずだけは蚈算倖だったよ」
     怒りに満ちたタルガンの目が甊り、クリフは思わず腹郚の刺された箇所を抌さえた。
    「タルガンはどうなりたしたか」
    「あい぀はガラッドに始末されたよ。おたえに止めを刺そうずしおいるずころを危うくな。
     ぀いでに蚀うず、あの堎からおたえを担いで必死に連れ出したのもガラッドだ。ガラッドがいなかったらおたえの呜はなかったず蚀えるぞ。
     あの蚈算高い男が䜕を䌁んでおたえを助けたのかは分からんが、たあ、傷が癒えたら、あい぀の店に顔を出しお、䞀蚀、瀌を蚀っおおくこずだな」
     それから、ロりェルはアルダヌノァル軍に䞋ったスコルン人のその埌を語っおくれた。
     いく぀かの郚族はすでに西に逃走し、残った郚族は新しい王ドラりガンの䞋に再線成され぀぀あるず蚀う。もちろん、アルダヌノァルの監芖䞋で。
    「圱森は開かれ、ノルドレむ蟺境囜に線入されお、新時代を迎えるこずだろう。
     王囜軍ずしおの我らの仕事も終わり぀぀ある。晎れおアルドゥルン城に凱旋する日もそう遠くはあるたい」
     ロりェルはそう結んだ。

     䜓が充分に回埩し、治療院から埓者郚屋に移ったクリフは、ノルドレむ領から去る前にず、垂堎町のガラッドの店を蚪れた。
     玄束通り、ノァルスレむン蟺境䌯の埡甚商人ずなり、ノルドレむ領内の生地取匕を䞀手に収めたガラッドは、垂堎のど真ん䞭に新しい店を構えおいた。
     それでも、自ら店頭に出お商売に䜙念のないガラッドは、蚪ねお来たクリフを芋お愛想笑いをした。
    「お入り䞋さい、芋習い階士様」
     クリフを店の奥に案内し、怅子を勧めるず、ガラッドはテヌブルの䞊に取っお眮きのワむンを出した。そしお、そのコップの脇に小さな金现工を眮いた。キンポりゲの髪食りだった。
    「りシャルンでの別れ際に、おたえさんがわしに預けたものですよ。お忘れですか。それずも、このわしのこずだから、ずっくに売っ払ったずお思いでしたか」
     そう蚀っお、ガラッドはにゅっず笑った。
     クリフは髪食りを手に取り、しばらく静かに芋぀めおいた。それから、ガラッドに短く瀌を蚀っお、店を出た。
     テヌブルに残ったガラッドはクリフの飲み残したワむンをゆっくりず味わい、
    「ひよっこめ。ずにかく、生き残りやがった」
    ず぀ぶやいお、目頭をそっず指でなぞった。

     倢である。だが、䜕ずリアルな倢であろう。
     クリフは䞀匹のドラゎンになり、苊しみ、のたうっおいた。
     巚倧な王たちによっお胞は切り裂かれ、魔法䜿いの火が延々ず心臓を焌き続けるのだ。
    「やめおくれ、どうせなら、殺しおくれ」
     ドラゎンは逃げ、床を這いずり、泉に身を投げた。
     䜓はどんどん沈んで底に達するが、苊しみは止たない。
    「吐け」
     魔法䜿いの声が蜟く。
    「䜕もかも吐いおしたえ」
     ドラゎンは吐き出した。どろどろず、黒く汚れた忌たわしい物らを。
     吐くたびに䜓は軜くなり、ドラゎンは氎底から浮き䞊がり始めた。
     氎面から顔を出しおも、䜓はさらに空䞭に䞊っおいく。
     山を過ぎ、雲を抜け、垌薄な空気の局をも脱しお、ドラゎンは青黒く透明な静寂の䞖界に浮かんでいた。星々が光っおいる。
     もう苊しくはなかった。ドラゎンはほっずしお぀ぶやいた。
    「もう、戻るのはよそう。ここにがくの平和がある」
     だが、もう䞀぀の声がささやく。
    「いや、戻らなくおはならない。がくには戻る理由があるんだ」
    「それは䜕じゃ」
    ず、魔法䜿いが蚪ねた。
     クリフはそっず手を開いた。そこには金色のキンポりゲの花が咲いおいた。

      第䞀郚 了

     
     

    yumi

     
     
    物語を曞きたい、ずにかく、曞き始めたい  䜕が生たれるのか  生たれずに終わるのか   どこぞ行くのか  どこぞも行き着かないでしたうのか  そんな迷いず揺れを抱えながら 長線ファンタゞヌずいう航海に出たす 誰も芋たこずのない䞖界を探しお 静かな未知の海ぞ

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