
【引き寄せの法則・潜在意識】今夜、彼女と、はじめてのデート、してみる|妄想日記 As If③-B
電気、消した。
スマホも、伏せて、枕の横に、置いた。
毛布を、首まで、ひっぱりあげる。
ふー、と、長く、ひとつ、息を吐く。
そしたら、肩のあたりが、ふっと、降りていく。
──ね。
聞いてくれる?
今夜ね、わたし、ちょっと、ふしぎな実験、してみたいんだけど。
あなたも、付き合ってくれない?
ふとんの、なか。
22時半。
冷蔵庫の、ちいさな、うなり。
となりの部屋の、テレビの、ぼんやりとした音。
それくらい、しか、聞こえない。
ねえ、知ってる?
ネヴィル・ゴダードってひと、こんなこと、書いてたんだよ。
夜、眠るときは、恋人との待ち合わせに、出かけるみたいに、出かけなさい。
──恋人との、待ち合わせ。
ふしぎな、言い方、するでしょ。
寝ること、なのに。
でもね、最近、わかってきた。
潜在意識って、たぶん、ほんとに、そう。
眠りの直前に、あなたが、何を、感じていたか。
それだけを、しずかに、聞いて、明日の朝に、運んでくる。
だからね、今夜は、「待ち合わせ」、してみよう。
まだ会ったことのない、これから出会う、彼女との、はじめてのデートを。
ふとんの、なかで。 ふたりで、いっしょに、ね。
目を、閉じて。
吸って、吐いて、を、3回。
ゆっくり。
吐くときに、肩から、首から、こめかみから、力を、降ろす。
そう。
そのまま、そのまま、で。
──金曜の、18時半。
あなたは、姿見の前で、ネクタイを、ちょっとだけ、ゆるめてみる。
きっちり、しめすぎてた。
今夜は、もう少し、リラックスしたほうが、いい。
シャツは、白。
さっき、お風呂のあと、ちゃんと、ひげも、剃った。
顎の、すべすべした感じ。久しぶり。
腕時計を、左手首に、はめる。
ぱちん、と、留め金が、ちいさく鳴る。
鏡のなかの、あなた。 ──あ、ちょっと、いい顔、してる。
ふっと、笑けてくる。
だって、あなた、今夜のために、午後、髪も、切ってきたんだもん。
18時45分。
車のキーを、テーブルから、つかむ。
──行こう。
胸の真ん中が、とくん、と、ひとつ、跳ねた。
ね、ここで、ちょっと、止まろう。
ふとんのなか、あなたの心臓が、いま、ほんとうに、ちょっと、速くなってる。 妄想なのに。
わたしも、たぶん、おなじ。
ふしぎでしょう。
これが、ネヴィルの言う、「感覚は、現実化に、先立つ」ってこと。
身体が、もう、信じはじめてる。
このまま、いこう。
夜の、街。
19時、5分前。
彼女の、マンションの、地下駐車場に、車を、停める。
エンジンを、切る。
ふー、と、ひとつ、息を吐く。
──行こう。
エレベーター、5階を、押す。
スマホで、「着きました」と、ちいさく送る。
──既読。
エレベーターの扉が、ふっと、ひらく。
廊下を、歩く。
504、505、506......
彼女の、部屋の、前。
もう、ひとつ、ふー、と、息を、吐く。
19時、ちょうど。
チャイムを、押す。
ピンポン。
内側から、ちいさな、足音。
ガチャ、と、ドアが、開く。
そこに、彼女が、立っている。
ね、ここね、わたし、わざと、顔は、ぼんやりさせてる。
鼻が、こうで、目が、こうで、っていうの、決めなくていい。
だって、誰、にだって、なれるんだもん、彼女は、まだ。
ただ、雰囲気だけ。
紺色の、ワンピース。
肩のあたりに、ちいさな、白い、フリル。
耳元に、ちいさな、ひと粒の、ゴールドのピアス。
ちいさな、ヒール。
肩から、ちいさな、バッグを、斜めに、かけてる。
彼女が、ふっと、笑う。
「お待たせ」
「ううん、ぜんぜん」
って、あなた、ちょっとだけ、笑い返す。
彼女が、後ろを、振り返って、鍵を、しめる、ガチャ、という音。
廊下の、コツコツ、という、足音。
それだけが、いまの、世界の、ぜんぶ。
エレベーターのなか。
ふたりで、立っている。
鏡に映った、ふたりを、ちらっと、見る。
彼女も、おなじタイミングで、見ていて。
目が、合う。
──ふっ、と、ふたりで、声に出さずに、笑う。
これ、なんか、いいな。
まだ、なんにも、はじまってないのに。
もう、なんか、はじまってる感じ。
地下の駐車場、あなたの車。
そんなに、新しくない。
でも、ちゃんと、洗ってある。
昨日の夜、わざわざ、洗車場まで、行ってきた。
「助手席、どうぞ」
って、ドアを、開ける。
彼女が、すうっと、助手席に、すべりこむ。
すうっと、車内に、彼女の香りが、立ち昇る。
重くない。 なんか、白い花、のような、淡い、香水。
ちいさく、揺れた、彼女の、左耳。
ひと粒の、金が、駐車場の、白い光を、ふっと、はじく。
運転席に、まわって、すべりこむ。
革のシート、ちょっと、固め。
シートベルトを、しめる、カチッ、という音。 (あ、彼女のも)
「行きましょうか」
「うん」
エンジンを、かける。
きゅるるる、ぶおん。
ナビが、ぽつ、と、光る。
音楽を、選ぶ。
派手じゃない、しっとり系の、知らない曲。
ちょうどいい音量、ちょうどいい、しっとり感。
ハンドルを、握る。
両手の、ひらの、汗、ちょっとだけ、ある。
ふっと、笑けてくる。 ──いくつになっても、こういうの、緊張する、んだよね。
車が、しずかに、地下から、地上に、出ていく。
夜の、街。
ちらっと、助手席を、見る。
彼女、両手を、ひざの上に、ふんわり、置いて、窓の、外を、見てる。
ナビを、ちらっと、見て、ふっと、笑う。
「お店、どこですか」
「ちょっと、夜景の、見える、ところ」
「楽しみ」
って、ちいさく、口元が、ゆるむ。
赤信号で、止まる。
ふっと、彼女が、あなたの、左手の方を、ちらっと、見る。 ハンドルから、降りてる、左手。
──触ってもいい?って、無言の、視線。
あなた、ちょっと、笑って、左手を、ぽんと、ひざの上に、置く。
彼女の、右手が、ふっと、その上に、重なる。
ぎゅっ、じゃない。 ただ、置いただけ、みたいな、軽さ。
でも、その、軽さが、いい。
信号が、青に、なる。
「あ、ごめん」
彼女が、ちょっと、笑って、手を、引っ込めようとする。
「ううん、いいよ」
って、あなた、ちょっとだけ、笑い返す。
でも、運転、だから、ね。
彼女の、手は、ふんわり、ひざに、戻る。
左の、手の甲のところに、彼女の指の、ほんの少しの、温もりが、まだ、残ってる。
着いた、お店。
ビルの、5階。
階段を、上がって、ドアを開けたら、店員さんが、ちいさく、お辞儀をした。
奥の、窓際の席に、案内される。
窓の、外。
街の、灯りが、しずかに、ひろがっている。
高層ビルの、てっぺんの、赤い、ぽつぽつ、した、点滅。
遠くに、ちいさく、車のヘッドライトが、流れていく。
「わぁ」
って、彼女が、思わず、声を、漏らす。
「夜景、好きそうだったから」
って、あなた、ちょっとだけ、にっこり、する。
──え、なんで、知ってるの。
なんて、彼女、聞きそうになって、いや、いいや、と思って、ふっと、にっこり、する。
だって、これは、あなたの妄想だもん。
あなたは、ぜんぶ、知ってて、いいんだよ。
彼女の、好きな、ぜんぶを。
メニューを、開く。
字、よく、見えない。
それくらい、店の照明が、ふんわり、落としてある。
お任せコースを、ふたつ、頼む。
「ワイン、白で、いい?」
って、彼女に、ちらっと、聞く。
「うん、合わせて」
すうっと、グラスが、運ばれてくる。
ちいさな、結露が、ひとつ、ふたつ、ガラスの外側に、ふわっと、浮いている。
「乾杯」
カチン、ではなく、ちん、と、ちいさく、グラスを、合わせた。

ひとくち。
きりっと、辛い。
そのあと、舌の奥に、ふんわり、果物の、甘い、なごり。
「おいしい」
って、彼女が、目を、丸くする。
あなたも、彼女の顔を、見て、ちょっとだけ、笑う。
「よかった」
それしか、言わない。
でも、その「よかった」が、なんか、ぜんぶ、入ってる。
前菜。 スープ。 お魚。 お肉。
ひとつ、ひとつ、ゆっくり、運ばれてくる。
その、あいだに、ふたりで、ぽつ、ぽつ、と、話す。
仕事のこと、ちょっと。
最近、見た映画のこと、ちょっと。
小学生のころに、好きだった、お菓子のこと、ちょっと。
ぜんぶ、ちいさい、話。
彼女が、話す、たびに、あなたは、ちゃんと、目を、見て、うなずく。
スマホ、いちども、見ない。
──こういう人と、いっしょに、いたかったんだ。
ふっと、そう、思う。
そう思った、あなたの目を、彼女が、ふっと、覗き込む。
「なに?」
「ううん、なんでもない」
って、あなたが、ちょっとだけ、笑って、口を、つぐむ。
彼女も、それ以上、聞かない。
ただ、ふっと、笑って、ワインを、もうひとくち、含む。
──ね、見てる?
これ、ぜんぶ、いま、わたしと、あなたで、つくってる、シーン。
ふとんの、なかで。
ハンドルを握る手の、汗の、感じも、ネクタイの、首元の、ほんの少しの、きつさも、ワインの、辛さも、彼女の、目の、覗き込むときの、まつ毛の、長さも、ぜんぶ。
ふんわり、感じてくれてる、よね。
これが、ネヴィルの言う、「祈り」なんだって。
力を、抜いて、もう、それを、生きてる、ように、感じきること。
「叶えてください」じゃなくて、「もう、ここに、いる」を、ふんわり、味わうこと。
続けよう。
お会計を、すませて、お店を、出る。
エレベーターで、地上に、降りる。
地上の、街、もう、22時すぎ。
さっきより、ぐっと、人が、少ない。
「ちょっと、歩く?」
って、あなたが、聞く。
「うん」
並んで、歩く。
歩道の、街灯。 シャッターを、降ろした、お店。
ふと、見上げると、ビルとビルの、あいだに、せまい、夜空。
雲が、ない。
あなたの、右手と、彼女の、左手が、ふっと、触れる。
そのまま、するん、と、指が、絡まる。
ぎゅ、ではなく。 ふんわり、組んだ感じ。
あなたの、手の、骨と、彼女の、指の、骨と。
ぜんぶ、それぞれの、形に、ふんわり、収まっていく。
「あ、星」
って、彼女が、夜空を、指さす。
「ほんとだ」
って、あなたが、見上げる。
ふたりで、しばらく、止まって、空を、見ている。
風が、すうっと、ふたりの、あいだを、通り抜けていく。
ね、これ、もう、なんか、ぜんぶ、来てるよね。
って、あなたは、ちいさく、心のなかで、つぶやく。
車に、戻る。
エンジンを、かける。
「うちで、コーヒーでも、もう一杯、どう?」
って、あなたが、しずかに、聞く。
ハンドルを、握りなおして、ちらっと、助手席を、見る。
「うん」
って、彼女が、ちいさく、うなずく。
それ以上、なんにも、言わなくて、いい。
車が、しずかに、夜の街を、ぬけて、走っていく。
あなたの、部屋。
玄関、入って、すぐ、彼女が、ちいさく、笑う。
「片付いてる」
って。
「今日、ちょっと、がんばった」
って、あなたも、ちょっと、笑う。
──昨日の夜、ふっと、思って、焚いといた、お香。
木の、深い、落ち着いた、香りが、
リビング全体に、ちゃんと、馴染んでる。
「いい香り」
って、彼女が、ちいさく、つぶやく。
──よかった。
ソファ。
ふたりで、ちょっとだけ、距離を、空けて、すわる。
「コーヒー、淹れるね」
って、あなたが、立ち上がる。
キッチンに、立つ。
コーヒーミルを、両手で、握って、ごりごり、と、豆を、ひく。
深い、香りが、すうっと、立ち昇る。
ケトルに、水。
コンロに、かける。
カチッ、と、火が、つく。
しゅんしゅん、と、湯気が、上がりはじめる。
ちらっと、リビングの方を、見る。
彼女は、ソファに、すわったまま、しずかに、リビングを、見回している。 本棚の、本の、ならび、を、ちらっと、見て、ちょっと、笑った、気がする。
コーヒーを、ふたつ、持って、戻る。
彼女の、となりに、すわる。
さっきより、ちょっとだけ、距離が、近い。
カップを、両手で、彼女に、わたす。
ちょうどいい、温度。
ひとくち。
ほのかな、酸味。深い、苦み。
「おいしい」
「ね」
ふたりで、しばらく、黙って、飲んでいる。
時計の、秒針の、音。
冷蔵庫の、うなり。
窓の、ガラス越しに、遠くの、車の音。
それだけ。
ふっと、彼女が、髪を、耳に、かけて、あなたの、目を、見る。
あなたの、指先が、彼女の、頬を、すうっと、なでる。
彼女の、心臓が、ぽつ、と、跳ねたのが、頬の温度から、伝わってくる。
目を、合わせる。
近づいていく。
──キスをした。
しずかに。
ふんわり、唇が、重なって、すぐ、離れて、もういちど、しずかに、重なって。
それだけ。
それだけ、なのに、あなたの、ぜんぶが、ふっと、ゆるむ。
ね、ここ、いちばん、しずかに、感じてみて。
ふとんのなか、毛布のなか、わたしと、あなたが、いま、感じてるの、これ。
胸の、真ん中の、あたたかさ。
肩から、力が、降りる感じ。
お腹の、おく、ふわっと、ひろがる、ほのかな、ゆるみ。
これ、いま、ふたりで、感じてる。
ね、ふたりで。
これ、ぜんぶ、もう、あなたたちのもの。
朝。
あなたは、しずかに、目を、ひらく。
となりに、彼女の、ぬくもりが、まだ、シーツに、残っている。
でも、彼女は、もう、起きてる。
ふっと、リビングの方を、見る。
ベランダのドアの、むこう。
彼女が、立っている。
あなたの、白いシャツを、はおって。
朝のひかりの、なかで。
ベランダの、手すりに、両手を、置いて、街を、見ている。
朝の、6時すぎ。
空気が、まだ、青い。
下の道を、配達のバイクが、一台、走っていく。
となりのマンションの、ベランダで、おばあちゃんが、洗濯物を、干している。
世界は、いつもどおり、しずかに、動いている。
──でも、あなたの、世界は、ぜんぜん、ちがう。
ふっと、笑けてくる。
シーツを、押しのけて、起き上がる。
ガサ、と、ちいさく、音がする。
彼女が、その音に、ふっと、振り返る。
朝のひかりに、照らされた、寝起きの、笑った顔。
耳元に、まだ、ちいさな、ひと粒の、金が、ふっと、ひかる。
「もう、起きてたの」
って、ねぼけた、声で、あなたが、聞く。
「うん」
って、彼女が、ちいさく、うなずく。
ね、これ、もう、来てる。
ぜんぶ。
ぜんぶ、来てる。
ふとん、に、戻る。
目を、ひらく、ちょっと、まえに。
22時半の、ふとんの、なか。
あなたは、まだ、ここに、いる。
でも、なんか、もう、ちゃんと、ぜんぶ、感じた、あなた、として、ここに、いる。
シーツの、肌触り、ちょっと、変わった気がする。
枕の、ふくらみ、ちょっと、やさしい気がする。
おなじ、はずなのに。
ね、ふしぎでしょう。
これがね、ネヴィルの言ってた、
「叶っているように、感じきる」っていうこと。
未来を、引っぱってくる、んじゃないんだって。
未来は、もう、ある。
ただ、今夜、ふんわり、味わって、眠りに持ち込むだけ。
眠るときの感じが、明日の朝の、世界を、つくる。
潜在意識は、強引なの、嫌いらしい。
「絶対、こうなる」って、力むより、
「ね、もう、なってるよね」って、しずかに、感じる方が、ちゃんと、
聞いてくれるんだって。
恋人みたいに、ね。
電気は、消えたまま。
毛布を、もういちど、頭まで、引き上げる。
枕に、頬を、しずめる。
シャンプーの、ほのかな、匂い。
シーツの、清潔な、感じ。 両足の、すこしずつ、あたたまっていく感じ。
それと──
さっきの、ベランダから、振り返ったときの、彼女の、寝起きの顔。
耳元の、ちいさな、ひと粒の、金。
シャツの、しわ。
朝の、青い、空気。
キスの、ふんわりした、感じ。
ぜんぶ、まだ、ここに、ある。
ね、いっしょに、感じたまま、眠ろう。
目を、閉じて。
息を、もういちど、ゆっくり、吸って、吐いて、を、3回。
──ね、ね、待ち合わせ、しよう。
恋人と、出かけるみたいに、ね。
おやすみ。
おやすみなさい。
── この記事について ──
『As If』は、引き寄せの法則・潜在意識・妄想日記をテーマにした、読むアファメーション型マガジン。
ネヴィル・ゴダードの Living in the End を、毎晩ひとつの物語として、ふんわり書いていきます。
今夜の記事は、まだ会ったことのない彼女との、はじめてのデートを、
ふとんのなかで、五感ぜんぶで膨らましてみる──マニフェステーションの、恋愛バージョン。
潜在意識は、「絶対こうなる」と力むより、
「もう、なってるよね」と、しずかに感じる方が、ちゃんと受け取ってくれる。
アファメーションを、文字ではなく、シーンで。
願望実現を、未来ではなく、今夜の感覚で。
夜、ふとんに入る前に、開いてください。
あたかも、もう、叶っているように。
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