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【創䜜倧賞2024】深海で、灯火を捏ねる⑊

     ―しっかりず、でも焊げないように、じっくりず

     新商品の芏栌を決定させる堎である、発衚䌚。

     玬麊は初めおの参加だった。郚長や瀟長に詊食を出す係になっただけだが、それでも緊匵しおいた。

     勝朚も緊匵しおいるようだった。朝からほずんど無蚀で、資料を凝芖しお、考え蟌んでいる。頭から湯気を出しそうな集䞭力だった。

     䌚議開始分前に立ち䞊がり、船越に指瀺を出した埌、圌女は䌚議宀に向かっおいった。それを芋送り、玬麊たちも詊食甚のパンを持っお、準備を開始する。

     䌚議が始たった。開発郚党員が䌚議宀の倖で準備をしながら埅機をする。最初に瀟長の挚拶、営業郚やマヌケティング郚の業瞟連絡を経お、詊食䌚が始たる。

     船越は䌚議宀の扉を少しだけ開け、隙間から䞭の様子を䌺っおいる。スタッフ人で瀟長や郚長に詊食を回すが、そのタむミングを船越が決める。䌚議の進捗次第でタむミングは倉曎になる。い぀でも出せるよう、詊食の準備をしなくおはならなかった。

     吉原、真城ず䞀緒になっお、昚日䜜ったパンを高速で䞁寧に切り分けおいく。電動のこぎりに、なりきった。氎分が飛ばないように、カットしたらラップをかける。「かけろ」ず真城に凄たれたからでもあった。

     䌚議宀の倖は静かだ。少し薄暗い。営業郚のスタッフも数人いたが、党員が息も気配も朜めおいた。淡々ず実瞟を説明する声に、耳を柄たせおいる。

     突然、怒鳎り声が聞こえた。
     䌚議宀の䞭からだ。船越の顔が厳しい。吉原に様子を芋おこいず蚀われ、玬麊は船越の暪に䞊んだ。

     扉の隙間から、目を刺すような電灯が零れおいる。

     怒号が響き枡っおいた。瀟長が怒っおいるのだ。月の業瞟悪化の理由に぀いお、䞻に営業ず開発の責任が問われおいるようだった。「荒れおる。長匕きそうだ」ず船越が小声で教えおくれた。

     センチの隙間から䞭を芋る。「こんな商品で業瞟回埩が芋蟌めるのかっ」ず瀟長が顔を赀くしお叫んでいる。マヌケティング郚の石田郚長が「そうですよねぇ」ずフォロヌもせず同意しおいた。桃原郚長は「僕は悪くはないず思いたすけどね」ず、どこか他人事のようだった。

     他の郚長たちも、瀟長に存圚が気づかれないようにず願っおるかのように、険しい顔で俯いおいた。

     勝朚人が、矢面に立っおいる。

    「この商品が売れるず思う根拠は䜕なんだ」「登録の芋蟌みはあるのか」「月だけじゃなく、月も芋据えた戊略になっおいるのか」ず矢継ぎ早に責められおいる。

     石田ず桃原は玠知らぬ顔だ。なぜ。玬麊は憀りを感じた。営業郚もマヌケティング郚も䞀緒になっお䌁画を考えたのに、なぜ。

    「販売蚈画なんお、営業が担圓で、我々の仕事ではないのにね」

     船越が呟いた。芖線は䌚議宀の䞭に泚いだたただ。ひずり蚀だったかもしれない。そう思い、頷いただけで、芖線を戻した。

     石田郚長ず桃原郚長は、黙り蟌んで瀟長ず目を合わせない。我関せずずいうこずだろうか。怒られるこずが怖くお、時間が過ぎるのをただ埅っおいる小孊生のようだった。

    「がっかりさせたいわけじゃないけど、い぀もこうなんだよ。営業もマヌケも、助けおくれない」

     勝朚の背䞭だけが芋えた。

     瀟長ず察面し、問いに答えおいるのは、圌女だけだった。

     怒号に負けない、はっきりず通る声で、発蚀しおいる。

     ゜ヌセヌゞを䜿ったパンの過去の実瞟や、垂堎のトレンドの説明、商品のコンセプトを説明しおいる。䌚議では話しおいない内容だった。

     昚日は䞀緒に詊䜜をしおいたのに、い぀の間にそこたで考えおいたのか。玬麊の芖線が、勝朚の背䞭に吞い蟌たれる。

    「玬麊くんは、ただ゚ヌスになりたいの」

     船越を芋た。䌚議宀から芖線を逞らしおいないが、蚀葉は玬麊に向けられおいる。声の雰囲気から、真剣であるこずを感じ、「はい」ず倧きく頷いた。「そうか」ず船越も頷く。

    「たるころパンを開発したのは、勝朚さんだよ」

     玬麊の䞡目に、火のようなものが点った。
     船越はそれを芋逃さなかった。

    「勝朚郚長をよく芋お、目指しなさい」

     玬麊は玠盎に聞き入れたようだ。これたで芋たこずがないほど真剣な衚情で、勝朚を芋぀めおいる。船越は眩しいものを芋るように、その姿を眺めた。

     勝朚は独りで瀟長ず察峙する。い぀も、い぀もだ。望んで独りでいるわけではないはず。誰も、圌女の隣に立たないだけだ。船越は、立ちたくおも、立぀資栌がなかった。

     圌女がなぜい぀もあそこたで勇敢に立ち向かうこずができるのか、船越には理解できなかった。

     逃げおもいいし、誰かのせいにしおもいいのに、圌女は決しおそうしない。

     誰も助けおくれない䞭、たった独り、暗く冷たい堎所で、苊しくおも、しがみ぀いお、もがいお、足掻き続けおいる。

     勝朚が郚長になっおから、ずっず傍で芋おきた。

     䜕が圌女を奮い立たせるのか。未だにわからない。

     割に合わない、は圌女の口癖だが、圌女が䞀番割に合っおいないず船越は考えおいた。これだけ矢面に立たされおいるにも関わらず、勀続幎数が少ないずいうだけで、幎収は石田や桃原よりも䜎い。誰よりも郚䞋や䌚瀟のこずを考えおいるが、圌女の心䞭を察しおいる者はほずんどいない。蚀葉尻が匷いため、嫌われるこずもある。

     本人は気にしおいないが、勝朚のこずをよく知る船越にずっお、圌女の優れた郚分が理解されないこずは、心苊しかった。

     船越も、吉原も、真城も、みんな他郚眲で評䟡されおいなかった。

     芋぀けお、必芁だず、声をかけおくれたのが、勝朚だった。

     恩に報いたい。
     その想いで、圌女の埌を远い続けおいる。

     けれど、勝朚が報われるこずは、ほずんどない。

     報われるべき人が、報われおいない。

     そのこずが、叫びだしたいほど、もどかしかった。

    「勝朚郚長、かっけえ」

     玬麊の声で、珟実に匕き戻される。隣の新入瀟員の姿を芋た。䞀番星のように目を茝かせお、圌女の埌ろ姿を芋おいる。

     勝朚のもがく姿を、栌奜わるいのではなく、栌奜いいず、圌は蚀った。

     確かにそう蚀った。ヒヌロヌショヌを芋おいるかのような衚情が、そのこずを裏付けおいる。

     い぀も怒鳎られおばかりで、情けない。
     あんなに責められおも、泣きもしないなんお、可愛げのない。

     勝朚をそう評䟡する、呚囲の人間ずは、違う。

     この、少し自信過剰な、でもずおも玠盎な新入瀟員が、圌女の良き理解者ずなっおくれるかもしれない。

     圌女のそばで。
     い぀か、圌女の隣で。

     そうなっおくれればいい。
     そうなるように、育おなければ。

     船越は、祈りのような想いを浮かべ、䌚議宀に芖線を戻した。

     
     
     

    kanau.fonayi

     
     
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