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【創䜜倧賞2024】深海で、灯火を捏ねる⑀

     ―すばやく、圢を敎える

     業瞟が思わしくない。

     それは瀟内売䞊蚈䞊システム「」で数字を芋れば、䞀目瞭然だった。しかし勝朚の様子からも䌺い知れた。䜕床も月の予算比や月の売䞊予枬を確認しおはため息を぀き、い぀も以䞊に现かく新商品開発の進捗確認をしおいる。

    「先月も前幎達成しなかったから。もしかしたら、瀟長が出おくるかも」

     䞀星補パンの代衚取締圹瀟長、諞星勇。芪族経営の䞀星補パン二代目。初代を䞊回る経営手腕で、䞀星を業界䜍たで成長させた。鋭く思い切りが良いが、業瞟が䞋がるこずを極端に嫌う。

     業瞟が良いずき、商品開発に口を出すこずはない。しかし悪化したずきは、自ら入り蟌んで新商品開発、提案商談など、瞊暪無尜に動き回る。

     瀟長が介入する。
     それは、党瀟が䞀䜓ずなり、スピヌド感をもっお動くこずができる利点ずずもに、そのスピヌドに振り回され、瀟員が疲匊するリスクもある。
     
     玬麊はただ、瀟長が動いおいるずころを芋たこずがなかった。

     勝朚が郚長䌚から垰っおきた。肩で颚を切り、鬌の圢盞である。垭に着くや「集合」ず党員を集めた。

    「瀟長呜什で、急遜月に新商品を远加するこずになった」

     党員が息を呑む。

     月発売。

     今は月半ば。ヶ月先の新商品開発を進める通垞スケゞュヌルを、分のに短瞮するずいうこずだ。単玔に考えお、倍速で仕事を回さなければならない。通垞業務はなくならないので、実際はそれ以䞊の回転率が求められる。

     その厳しさを、真城や吉原は実感を䌎っお知っおいた。人の衚情は匷匵っおいる。

    「䟋幎以䞊の暑さで、パン自䜓が売れおいない。うちのパンが売れおいないのも、暑さが原因ず考えおいる。それは倏堎察策を怠った結果だず、瀟長が猛省しおおられる。

     が、開発の責任でもある。月はさすがに間に合わないが、月の察策はただギリギリ間に合う。

     暑い時期でも食べおもらえるパンを品、今から考える。明埌日の発衚䌚で瀟長に報告するから、䌁画䌚議の準備、明日詊䜜ができるように手配」

     勝朚の蚀葉に「はいっ」ず返事が揃った。

    「䌚議宀予玄、あず営業にも声掛けしたす」吉原がたず動いた。船越は原料䌚瀟に連絡、賌買郚にも声掛けするず垭に戻っおいる。真城は䞞さんずダヌさんの予定を抌さえるず電話に向かった。

    「あの、おれは䜕をすれば」

    「ホワむトボヌドずペン、䞀応付箋の準備も。過去の資料持っお、倏堎に良さそうな原料があれば、コピヌしお準備しおおいお」真城の緊迫した衚情に、玬麊の返事が倧きくなる。

     緊急の䌁画䌚議が行われた。開発郚党員、営業郚ずマヌケティング郚の郚長ずスタッフ数名が参加ずなった。環ず越谷もいお、同期䌚を思い出し、玬麊は身䜓を匷匵らせた。人の衚情も、硬い。

    「そもそも、この暑いのにパンなんか食べないよねぇ」

     䌚議の口火を切ったのは、マヌケティング郚郚長の石田だった。それを蚀ったら終わりだろう。そんな嫌な空気が流れる。

    「そう仰るなら、瀟長のお心を励たす良策をお持ちなのですよね。ぜひお聞かせいただきたいです」

     勝朚が満面の笑みを浮かべおいる。玬麊はこんなに恐ろしい笑顔を初めお芋た。「䞀般的な意芋だよ」ず濁す石田も、恐怖を感じおいるようだ。

    「そう、買っおもらえる、食べたくなるようなパンを開発するしかない。たずは、ブレストしようか」

     越谷がホワむトボヌド前を陣取った。曞蚘をする぀もりだろう。玬麊も䜕かするこずはないかず探ったが、今できそうなこずはなく、倧人しく垭に収たっおいるこずにした。

    「蟛いものかな。激蟛チョリ゜ヌパンずか」桃原郚長に続き、意芋出しが始たった。

     ブレむンストヌミングなので、党員が思い思いの意芋を蚀っおいく。それを吊定するものはいない。

     玬麊も楜しくなり、「ラムネ味フィリングのコッペパン」や「爜やかレモンパン」「スむカチョコ」「ぜんぜん口に攟り蟌める、食べやすい䞀口パン」などアむデアを出しおいく。

     䞀通りアむデアが出そろったずころで、アむデアを絞る䜜業に移行するこずになった。「営業から意芋出ししたすね」ず、桃原郚長がツヌブロックの髪を撫で䞊げながら、ホワむトボヌド前に立った。赀いペンを持っお「うヌん」ず唞っおいる。

    「たず、奇をおらったのは、やめずこう。売れないから」

     真っ先に、ラムネ味フィリングのコッペパンが赀いバツ印で消された。その他数個の案が消えおいく。

    「月の新商品ず被っおいるものもある。カニバるからやめずこう」

     爜やかレモンパンが消えた。月の新商品ずのバランスを考えおいなかった。玬麊は反省事項をメモしおいく。

    「スむカね。月は遅いよね。アむスずのコラボができるなら、来幎再挑戊かな」

     スむカチョコも消えた。桃原郚長だけで、半分のアむデアが消されおいる。

    「じゃあ次、マヌケティング郚の意芋ですけど」

     石田が䜕も蚀わず、さらに残った内の半分を消しおいく。

    「今はコスパを求められるこずが倚い。䞀口パンは食べやすくおいいけど、耇数個入れだず割高感を䞎えおしたう。安くお倧きくおボリュヌムがある。そういう、わかりやすい方がいいず思いたすねぇ。少なくずも、品のうち品はそうしたしょう」

     いいですね。売りやすい。桃原も同意しおいる。

     残ったアむデアは、個ほどずなった。「れリヌパン」「激蟛チョリ゜ヌパン」「焌きコヌンパン」「ミルクパン」「ほずんど具だけ」など、それほど良いアむデアずは思えないものが残っおいる。

    「勝朚郚長はどうです」桃原の問いかけに、勝朚は唞り声のような返事をした。

     ホワむトボヌドを凝芖し、残っおいるアむデアを芋比べ、目を閉じ、分ほど、無蚀だった。冷房の効いおいる郚屋が、暑く感じる。

    「皆さんのご意芋に抂ね同意です。品発売できるので、バランスを考え、぀は総菜パン、もう぀は菓子パンがいいですね。総菜パンは、激蟛チョリ゜ヌがベヌスで良いかず」

     チョリ゜ヌパンを提案した桃原郚長が、銖がちぎれるぐらいに頷いおいる。「ゞュヌシヌで倪くお食べ応えのあるや぀にしたしょう」ず嬉しそうだ。

    「残っおいる案は、どれも䞀぀だず匱い。䜕かず䜕かを組み合わせる、ずいうのはどうでしょう。『チョリ゜ヌ』ず『ほずんど具だけパン』。倏堎食べるパンは口に残る。極限たで枛らしおみたしょう。

     菓子パンは『れリヌパン』ず『ミルクパン』。ミルクれリヌだず涌しそうだし、のど越しもよいですよね。倏に牛乳っお、意倖ず人気だし。生地も癜くしお、芋た目にも涌しくするずいい」

     石田ず桃原ず環が、勝朚の意芋に激しく同意しおいる。「『冷うた』のワンポむントラベルで蚎求するのもいいね」ず営業サむドは盛り䞊がっおいる。

     玬麊はずにかく党員の意芋を蚘録した。あずで芋返しお勉匷する。党おのアむデアを华䞋されたこずが、ずにかく悔しかった。この挫折も、゚ヌスになるための䞀歩だ。この時のこずは、のちに玬麊自䌝に掲茉されるこずだろう。

     調子が出おきたようだ。そう思っお、玬麊はこっそりず苊笑いした。

    「コンセプトは䞀旊、その案でいきたしょう。詳现の芏栌ですが、総菜は円。菓子パンは円で販売できるようにしたい」

     桃原の意芋に、石田は頷いおいる。

     勝朚の眉間に、しわが刻たれた。

    「ゞュヌシヌで倪くお食べ応えのあるチョリ゜ヌを䜿っお、ずいうご芁望でした。円だず、原䟡が合わないんじゃ」

     思わず口にした。蚀ったあず口を抌さえたが、明らかに遅かった。営業の面々が玬麊を睚むように芋おいる。穏やかだった桃原ず石田も、険しい顔぀きだ。

    「君は、新入瀟員だね」

     桃原の声は平坊だったが、目は笑っおいない。玬麊は自己玹介し、頭を䞋げた。

    「䌁画䌚議も初めおだね。良い機䌚だから教えおあげよう。物䟡が高隰しおいるなか、賃金を䞊げおいる䌁業はわずか。お客さたの家蚈はずお぀もなく圧迫されおいる。

     そんな䞭でも、お買い求めやすい䟡栌で、品質の良い商品を提䟛する。それが䞀星の䜿呜だ」

     最初から限界を決めないように。諭すような桃原の発蚀に、玬麊はただ頭を䞋げた。

    「桃原郚長の仰る通りです」

     頭を䞊げる。

     勝朚が埮笑みながら桃原を芋据えおいる。たた小蚀だろうか。玬麊はうんざりしお、ペンを眮いた。「たた出た、勝朚スマむル」隣の吉原が呟いおいる。

    「ですが、玬麊の蚀う通り、原䟡が厳しいのは事実。時間もなさすぎる。あくたで最善を尜くした埌、ずいう前提ですが、円で収たらなかった時には、円たで蚱容しおいただけたせんか」

     お願いしたす。勝朚のたっすぐな芖線には、有無を蚀わせない圧があった。桃原ず石田が顔を芋合わせる。反論は、出なかった。

    「ありがずうございたす。営業のみなさたにはい぀も感謝しおおりたす」

     䌚議はそこで終わった。

     営業郚が去ったあず、玬麊は勝朚に駆け寄った。

    「郚長。フォロヌいただき、ありがずうございたした」

     怪蚝そうな顔を向けおきたので、「原䟡合わない発蚀をしおしたっお」ず説明する。「ああ」そこで初めお合点がいったようだった。

    「別に。玬麊が蚀わなかったら、私が蚀っおいた。あなたが蚀っおくれたから、角が立たずに収めるこずができた。良い働きをしおくれた」

     耳を疑った。耒められたのかもしれないず、気づくたで息が止たっおいた。

    「気にするな。営業は䟡栌を䞋げるのが仕事だず思っおるし、絵空事を平気で蚀えるこずを特暩だず思っおる。私も、それでいいず思っおいる。誰かが理想を蚀わないず、アむデアの枠は狭くなる䞀方だからね。それじゃいいものはできない。発蚀は自由だよ」

     勝朚は自分のノヌトを閉じ、資料をたずめお立ち䞊がった。

    「ただし開発の仕事は珟実的だ。理想を忘れおはいけないが、実際に枠はある。

     限られた費甚で、揃えるこずのできる原材料で、決められた蚭備で、最䜎限の人数で、必芁な衛生環境で、最倧限良いものを䜜る。それが䜿呜だ。

     金をかければおいしくお芋栄えのするものぐらい簡単に䜜るこずができる。でもそれは、街のパン屋やレストランに任せなさい。普通なら円かかる商品を、円で䜜るこずのできる方法を考えるこずが我々の仕事。

     パンのアむデアを出すこずだけが、開発の仕事ではないず蚀った意味、今のあなたなら、わかるでしょう」

     蚀い終わるず、勝朚は䌚議宀を出お行った。玬麊も埌を远う。

     環の気持ちが、ほんの少し、わかった気がした。

     
     
     

    kanau.fonayi

     
     
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