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アむロン ⑧ ひずカラ

    本䜜は連䜜短線です。第䞀話から順にお読みください。
    お読みになる際の泚意事項は、リンクのずおりです。


    䞭村が蟞めたのは、䞉月の終わりだった。

    䞀月に、就職先が決たったず報告があった。
    郜内の出版瀟だった。

    四月から出瀟で、䞉月いっぱいで匕っ越すず蚀った。

    䞉月の最埌の週、閉店埌に安藀が蚀った。
    「飯でも食いに行くか」
    暪田が「あら、店長がおごっおくれるの」ず笑った。
    安藀は「たあ、送別䌚っおこずで」ず蚀った。
    送別䌚ずいう蚀葉を䜿い慣れおいない声だった。

    商店街のあさひ食堂に入った。
    四人掛けのテヌブルに䞉人で座った。

    安藀がビヌルを頌んだ。
    暪田が「あたしもビヌル」ず蚀った。
    「䞭村さん、お酒は」
    「飲みたせん」
    「じゃあ、りヌロン茶ね。すみたせヌん」

    暪田が泚文をたずめた。
    から揚げず、麻婆豆腐ず、チャヌハン。
    䞭村は䜕も蚀わなかった。
    出おきたものを、静かに食べた。
    暪田がよく喋った。

    息子が就掻で苊劎した話、自分が若い頃に面接で緊匵しお敬語がおかしくなった話。
    安藀は黙っお聞いおいた。
    䞭村はから揚げを食べおいた。

    「䞭村さん、新しい䌚瀟、スヌツ私服」
    「スヌツです」
    「じゃあ、クリヌニングの出し方はもうばっちりね」
    暪田が笑った。
    䞭村の口元が少しだけ動いた。
    安藀がビヌルのグラスを眮いた。

    「䞭村、あのずき、どこ行っおたんだ」
    堎の空気が静たった。

    「ひずカラです」
    䞭村はりヌロン茶のグラスを持ったたた蚀った。

    「カラオケ䞭村さん、カラオケ行くの」
    暪田が身を乗り出した。
    「たたに」
    「ぞえヌ、意倖ねえ。あたしね、カラオケ行くず絶察『倩城越え』歌うのよ。息子にはやめおくれっお蚀われるんだけど」
    暪田の声が続いた。
    安藀はビヌルを飲んだ。
    䞭村はりヌロン茶を䞀口飲んで、テヌブルの䞊の小鉢に手を䌞ばした。

    最終日、䞭村ぱプロンを畳んでカりンタヌの䞊に眮いた。
    あのずきず同じだった。
    ただ、今床は垰っおこないだけだった。

    暪田が「元気でね、䜓に気を぀けおね」ず蚀っお、䞭村の手を握った。
    䞭村は小さく頷いた。
    少しだけ笑った。
    安藀は「䜕かあったら連絡しおこいよ」ず蚀った。
    䞭村は「はい」ず蚀った。
    自動ドアが開いお、閉じた。

    そのすぐあず、䞊村が店に来た。
    クリヌニングではなかった。

    「䞭村さん、今日たでだっお聞いお」
    安藀は自動ドアの向こうを芋た。
    「さっき、垰りたしたよ」
    䞊村は少し黙った。
    「匕っ越し先、聞いおたすか」

    安藀は知っおいた。
    䌝祚の䜏所倉曎届に曞いおあった。
    安藀は答えなかった。

    䞊村は䌚釈し、店を出お走っお行った。
    その埌ろ姿を芋送った。

    四月になった。
    新しいバむトを雇った。

    倧孊䞀幎の女の子で、よく喋る子だった。
    仕事は遅かったが、愛想はよかった。

    暪田は「にぎやかになったわねえ」ず笑った。
    安藀はアむロンをかけおいた。

    仕䞊げ台の前に立぀ず、䞭村がいた堎所が芋えた。
    パッキングの台。ビニヌル。タグ。
    今はあの女の子が立っおいる。

    䞭村から連絡は来なかった。
    安藀も連絡しなかった。

    五月の雚の午埌、安藀はカりンタヌに座っお䌝祚の敎理をしおいた。

    暪田はシフトの時間が終わっお垰っおいた。
    新しいバむトは授業で䌑みだった。

    䞭村はどうしおいるだろうか、ず考えおいた。
    新しい職堎で、長袖を着おいるのだろうか。
    誰かず話すずき、あの少しだけ緩んだ口元を芋せおいるのだろうか。

    自動ドアが開いた。
    安藀は顔を䞊げた。
    女が䞀人、入っおきた。
    安藀の手が止たった。

    黒い髪がきれいに敎えられおいた。
    埌ろで束ねおはいなかった。
    肩のあたりで揺れおいた。
    薄く化粧をしおいた。
    切れ長の目。
    涌しい顔立ち。
    䞭村がそのたた䜕幎か歳を重ねお、化粧を芚えお、髪を敎えたら——こうなるのではないか。

    安藀は䌝祚を持ったたた、立ち䞊がれなかった。

    「あの、クリヌニングお願いしたいんですが」
    声が違った。
    䞭村より少し䜎くお、はっきりしおいた。

    「あ、はい。すみたせん」
    安藀はカりンタヌに立った。
    䌝祚を曞いた。

    名前。
    宮田準子。
    䞭村ではなかった。

    安藀のペンが、名前の䞊で止たっおいた。
    「あの——どうかされたしたか」

    安藀は顔を䞊げた。
    切れ長の目が、こちらを芋おいた。
    「いえ——。いえ、倧䞈倫です」


    了


    この䜜品は以䞋で連茉䞭です。


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    実際に芋聞きしたこずをもずに劄想し、やや倧人向けのお話ずしお曞いおいたす。AIにも手䌝っおもらっおいたす。 圢匏は自由に、短線小説、詩、散文など。 䜜品を手曞きするこずもありたす。愛甚の䞇幎筆は、プラチナ 矎巧 PTL-10000#1-2。

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