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【 短編小説 】 朝帰り

    久しぶりに朝帰りした。

    「君ももう中堅なんだからしっかりなっw」
    上司に太ももをべったり触られて
    絶妙にセクハラって言いにくい年齢になったなあ、てか中堅って何年目から何年目までなんだろなんてぼんやり頭では考えながら、張り付いた偽物の笑顔でヘラヘラ「はーい。がんばりまあす」と適当な相槌をした会社の飲み会の後、
    私はどこで会ったか歳下の彼と飲み直したんだっけ。

    そんなことも思い出すことに特に意味はない。


    メイクが絶妙に崩れ
    一日のいろんなものを纏ったカラダで
    鍵は開けっ放しにしていくね、と
    寝ぼけて聞いてるのか聞いてないのかわからない
    目を閉じた綺麗な顔が頷くのを横目に
    シャワーを浴びずにそのまま
    ドアを開け出ていく。

    来るときに一度通ったはずなのに
    薄暗い中ほろ酔い気分で歩いた数時間前と
    仕事に行くための防具のスーツを纏った人々や
    働く車が行き交う正解の道になっている明るい道の今とでは、全然違う。

    冷静な時に見たら、彼らだって
    私と対して変わらないだらしない面がたくさんだって思えるのに
    今の自分の体たらくがそう思わせてくれない。

    久しぶりにこの情けない気持ちになった。

    そうか。
    最近は彼らの背中をただ見送って
    私はしわくちゃになったひとりの寝床で
    さっきまでの出来事を大切になぞることもなく
    またも欲望のまま二度寝をしていたから。

    自分の領域に入れてくれないことは
    心を見せてくれないことと思って
    悲しいことと思っていたけれど
    別に恋人になってくれない人たちの
    利害関係の一致で生まれるだけの
    青春ごっこの現場は
    相手の物理的なテリトリーに入る必要性なんてないのかも。
    心の結びつきがない関係、
    ってほどドライではないけど
    その場しのぎの関係値で相手の家に行ったところで
    別に心の隙間は埋まらない。

    若い頃よく朝帰りしてた。
    あのときはだらし無さより
    もしかしたらっていう期待の煌めきのほうが強くて
    でも惨めさもあのときの方が強くて
    流石にこんなことばかりしてるから
    久しぶりとはいえもう飽きたな。

    彼らもいつもはこんな情け無い自分を見つめながら
    帰路についてるのかな。

    いや、そんなことないだろうな。笑

    少しだけ夢を見させてくれてありがとう。

    人ってすぐに変わる。
    最初は好きだ好きだというけれど
    手に入ったら狩りが終了したのか
    当たり前のように保存食として食す。
    ときには保存してたの忘れて腐らせる。
    分かりやすく態度に出してくれたから
    わたしはもうあのときより大人だから
    楽しかったよありがとうって出来た。

    頭の中でとあるシンガーソングライターのある歌の冒頭。

    好きじゃなくていいから
    もう一回やらせて!

    が響いた夜。

    だらしなすぎて既に明け方か。笑

    もう誰でも入れるあの扉を開けることも
    あの道をだらしない気持ちで通ることはないだろう。

     
     
    縁の媒介者になりたい人です。

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