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#4終 青鷺ブルヌノ さよなら、青鷺の階士

    それから䞀週間埌、父は怜査ず䜓調の回埩具合から退院し、家に垰れる事ずなった。家に父ず私達が垰っおくるず、心配した父母䞡方の祖父母も家に来おいお、その日の倕方、退院祝いの食事䌚のようなものをした。

    祖父祖母らがあたりにも沢山の食事を持っおくるものだから、今床はお腹がはちきれお入院するんじゃないかなどず冗談を蚀い、久々に家族党員笑い合った。


    そしお私は次の日の朝、ふず早く目が芚めお靎を履き玄関から衚に出お、朝日に照らされる䞀面の田んがず山を眺めおいた。

    䜕気に久々な、秋田の実家。田園颚景ず、山ず自然に囲たれた穏やかな田舎の颚景。戻っおきお玄䞀週間、雪がそんなに降らず、せっかく積もっおいた雪も党郚溶けおしたっおいた。ただ冬のはずなのに、倖はそんなに寒いずいうわけではなく、むしろ少しだけ、朝日が暖かく感じる䞀月だった。そろそろ私の冬䌑みも終わる。


    私に喝を入れおくれた春子にも、父が退院したこずをトヌクアプリで䌝えた。春子も良かったず䞀安心しおくれた。あず春子から秋田のお土産が気になるやら食べおみたいやら、せがたれたため、青鷺垂に垰るずき、しっかりお土産を買っおいこうず思う。


    そろそろ寒くなっおきたず思い、家の䞭に匕き返そうずした瞬間、ふず、懐かしく、あの優しい声がした。


    「良かったですね、倏暹さん」

    「ブルヌノさんっ  」


    振り向いたちょっずその先に、朝日に照らされたあの柔らかい笑顔の男性が立っおいた。私は圌に歩み寄る。

    「どうやっおここたでっ  」

    「私ず──っずあなたのそばにいたしたよ」

    銀髪オヌルバック、私より背が高くガタむの良い、それでいお玳士で、その割に柔らかい笑顔が特城的な圌は、ケラケラず笑っおいる。私は意味が分からず、銖をかしげる。


    「ずっずあなたが郚屋で泣いおいたずきも、勉匷を熱心にしおいらっしゃる時もずっずそばにいたした。」

    「えっ  じゃあ泣き顔も、私が勉匷䞭、眠くお涎が垂れそうになっおたずきもずっず  」

    「うヌん、さすがにあの時は隠れおいないで起こしおあげようかずも思いたした  」

    「うわっ  はっずかしっ  」


    たさかそんなこずになっおたなんお、党く思わなかった  顔が異垞に熱くなっおくる。マゞで恥ずかしすぎる。朝日に照らされる䞭、私は恥ずかしさで真っ赀になった顔を䞡手で芆い隠した。その様子を芋たブルヌノさんはやりすぎた、すたないず謝りだす。


    私が恥ずかしさのあたりうんうんず唞っおいるず、ブルヌノさんはふず䞀瞬、はっずした顔をするず、腰に掛けおいた小さなショルダヌのようなものから䜕かを取り出し、ゆっくり私の顔から匕き剥がした手の平に、優しく眮いた。


    手のひらに眮かれた゜レは、アパヌトに眮いおきたはずのがた口財垃だった。䞭に䞀䞇円もそのたた入っおいる。


    「倧切なものなのでしょう私のためにわざわざそんな倧切なもの、眮いおいかなくお良かったのに。」


    「でもブルヌノさんのご飯は  」


    「私、幜霊ですよ今曎䜕蚀っおるんですかそれにほら、芋おください私の服装」


    そういうずブルヌノさんは、ぐっず背筋を䌞ばし胞を匵り、私に誇らしげな笑みを芋せる。


    朝日に照らされキラリず茝く青鷺の王様の瞁。ブルヌノさんが、甲冑を着おいる。あの青鷺の装食が斜された甲冑を  い぀も灰色のシャツのような、薄着の衣服を着おいたから、朝日で光が反射するたでわからなかった。


    そしお、やはり  圌は階士だった。展瀺されおいたあの青鷺の甲冑がぎったりずフィットしおいお、尚䞔぀圌が着るこずで茝きが、矎しさが増しおいた。博物通で展瀺されおいた時より、はるかに矎しく、そしおブルヌノさんが、ひたすらかっこよかった。


    でも私は気づいおしたった。あの甲冑は、既に保管庫の火事で燃えおしたっおいるはずなのだ。それなのに今、圌は確かにそれを纏っおいる。これはきっず、甲冑の「幜霊」なのだろう。物に宿った魂ずいうのなら、そういうものがあっおも䞍思議ではないかもしれない。䞃癟幎以䞊、圌ず共にあり続けたのだから。


    「最埌にこの姿を、あなたに芋せるこずができお  本圓に良かった。」


    朝日に照らされるブルヌノさんの顔に、目に涙が浮かぶ。


    「私、あなたのそばで䞀緒にいお思ったのです。あなたず出䌚ったのは偶然なんかじゃなかったんじゃないかなぁっお。あなたず、あなたのお父様を芋お確信したした。」


    圌の頬に涙が䌝う。気が぀けば私の芖界も涙でかすかに歪んでいた。圌の䜓が、昇る朝日でより䞀局茝き、矎しい光を生み出す。


    「あなたのおかげで、私の未緎も果たせたした  これたでの生掻、あなたずの䌚話、芋おきた景色  どれも玠晎らしいものでした。あず、生きた青鷺も芋れたしたからね」


    「えっ」


    私の蚀葉ず共に突然、埌ろからばさばさっず音がしお、咄嗟に私は埌ろを芋る。倧きく長い銖を瞮め飛び立ったその鳥は、迷うこずなく朝日に向かっお飛び去っお行った。圌はずおも満足そうにする。


    「今たで本圓にありがずう。」

    「  こちらこそ。」


    圌は、い぀ものお埗意の優しい笑顔を芋せる。私も涙をぬぐい、今䞀番の最高の笑顔を芋せる。


    「これからも、あなたのこずを芋守っおいたすよ。お元気で  Miss ナツキ」

    「ありがずう、あなたもお元気で。ブルヌノ卿。」


    そしお圌は、朝日の䞀番たぶしい光ず共にゆっくりず䜓が透けおいき、ゆっくりず飛び行く、シャボン玉のような矎しさず共に消えおいった。


    私はしばらくそこから芋える暖かく、そしお優しい朝日の光を济びながら、この䞍思議な䜓隓を䞀生忘れたいず心に誓った。


    これで私ず青鷺の階士ずの、䞍思議で、それでいおずおも枩かく優しく、楜しい日々は冬䌑みず共に幕を閉じたのである。


    それから早数幎、私は無事倧孊を卒業し資栌も手に入れ、地元の病院に運よく就職した。そしお奜きになった盞手ができお、いよいよ入籍するこずになった。たさに順颚満垆の日々を送っおいる。そしお二月の土曜日、晎倩の今日。久しぶりに、倧孊時代に知り合った䞀番の友人、春子ず、この青鷺垂の駅で埅ち合わせをしおいる。


    「ごめヌんなっちゃヌんたったヌ」


    振り返るず懐かしいポニテの、薄ピンクずベヌゞュが良く䌌合う、私より背の䜎い女性がこちらに走っおくる。


    「春ちゃん、五分遅刻―」

    「たじごめヌん」


    䌚うや吊や私たち二人は笑い出す。圌女ず䜕幎ぶりに䌚うのだろう


    冬䌑みが明けた埌から、圌女は思い切った行動に出た。私が倧孊䞉幎になった時、突然倧孊を䞭退した。そしお、迷うこずなく東京のむラスト系の専門孊校ぞず進路を倉曎した。そこから専門を卒業し、目指しおいたゲヌム系の䌚瀟で、システムを匄るこずもあれば、䜕枚も絵を描いお忙しく働いおいるらしい。そしお今は有䌑をもらっおわざわざ、なかなか時間の合わない私のために䌚いに来おくれたようで  本圓にすごい友達だず思う。心から尊敬しおいる。


    街を芳光しおいる間、䌚っおいなかった分、沢山話をした。二人の仕事の話から、愚痎も聞き合ったし、お互いの圌氏の話もした。そしお私達が青鷺城跡の博物通を通り過ぎようずしたずき、ふず芋芚えのあるものがあるこずに気付き、䞀人立ち止たった。


    西掋ファンタゞヌ展。
    私はどうしおもそのポスタヌから目が離せなかった。個人的な趣味ずいうのもあるが、思い出のこず  私は、急遜春子にせがみ、寄っおもらえるこずになった。そしお迷うこずなく、吞い寄せられるように展瀺宀に向かった。


    䞭に入るず、倚少配眮や物の説明は倉わっおいたものの、あの時ずほが倉わらない懐かしい雰囲気が挂っおいた。どれも  そう、五幎前、あの人ず芋た景色。真剣に芋お回る私に察しお、春子はあんたらしいず笑っおいた。


    そしお私達は、ずうずうあの堎所に぀いた。青鷺の甲冑。だが䜕か違和感があった。


    「これほんず綺麗だよね。あれでしょニュヌスでやっおたや぀」

    「ニュヌスでやっおたの」

    「えっ芋おなかった系」

    「どういうこず」


    春子に話を聞いお私はやっず、違和感の理由がわかった。私達が今芋おいるものはレプリカの甲冑らしい。レプリカの青鷺の甲冑。


    五幎前、この博物通の展瀺物が保存されおいた保管庫が䞍審火にあった。

    たた䞍運なこずにその保管庫の火灜報知噚には故障があり、火に気づくのが遅れおしたった。建物数個を巻き蟌んだが、䜕ずか鎮火するこずができたものの、展瀺物のほずんどが燃えお無くなる、たたは欠けた状態になった。その䞭に、この甲冑も  青鷺の、ブルヌノさんの甲冑も含たれおいお、完党に無くなっおしたったのだず。


    その火事が起きたのは五幎前の秋頃。ブルヌノさんが突然おかしな行動をずり始めた時期ず䞀臎しおいた。倜䞭に䜕床も倖に出おいたのは、自分の倧切な甲冑を探しに行っおいたから  あるいは、燃えおいく姿を最埌に芋届けようずしおいたからなのかもしれない。テレビのニュヌスをがヌっず眺めおいたのは、火事の報道が流れおいたから。窓の倖を静かに芋぀めおいたのは、䜕かを自分の䞭で敎理しようずしおいたから  


    そしお最埌の別れの日、圌が甲冑を着おいたのは、もう圢のなくなった甲冑の魂だけが、最埌に圌のもずぞ戻っおきたのかもしれない。


    「なっちゃん  」


    はっず我に返る。気づけば春子が私の顔を芗き蟌んでいる。私は目じりが熱くなるのを感じ、ぎゅっず抑える。


    「春ちゃん、今から垰りたでちょっず䞍思議な話しおいい」


    「おっずヌ語り郚なっちゃんの話、面癜いから䜕でも聞くよヌヌ」


    「ありがずう、春ちゃん。」


    私は垰りの電車たで、春子に五幎前の出来事、私があの展瀺䌚で出䌚った軌跡を、青鷺甲冑ブルヌノさんずの䞍思議な日々の話を、いっぱい、隅々たで話した。圌女は自身のゲヌム䌚瀟でのアむデア案に圹立ちそうだず、半ば面癜がっお、真実だず思っおくれおいないようだが、私は圌、ブルヌノさんの存圚を人に教えるこずができたこずに嬉しさず懐かしさを感じおいた。


    圌もきっずあの笑顔で、元気にしおいる。そんな気がする。


    出䌚ったのは偶然ではなかったず、圌は蚀っおいた。私も今ならそう思う。あの甲冑の前で足を止めたのも、博物通での出来事も、あの倜の倧惚事も、党郚繋がっおいたのかもしれない。䞃癟幎の時を越えお、ただ誰かず話したかった階士ず、創䜜話を誰かず共有したかった私が、たたたたあの堎所で亀わったのだず思う。


    今日もたた、私たちの居るこの町の、青い青い広倧な空を、ゆっくりず青鷺が飛んでいく。


    ──青鷺ブルヌノ  完 ──

     
     
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