
【長編小説】 第5話:気づかれた、が気になって仕方ない 【転生したら、私が監修していた世界の神様でした】
転生したら、私が監修していた世界の神様でした
あらすじ
ゲームの監修者だった私が目を覚ますと、そこは自分が作り上げた世界だった。
しかも、私が世界を管理する神様?!
世界の運命は、私の『仕事』次第らしい。
第5話 気づかれた、が気になって仕方ない
「秘書さん」
「はい」
「さっきの人、なんで気づいたの?見てただけなのに」
「『おいしそう』と、おっしゃっていましたね」
「え、声に出してた?」
「はい」
「じゃあ、それが原因ってこと?」
「そこまでは、わかりかねます」
食い気味の割に、内容がない返しだった。
言ったこと自体は把握してるくせに、理由は分からないらしい。
無闇に憶測で話さないところは、有能なんだと思う。
でも、こっちとしては、テキトーでもいいから何か言ってほしい時もある。
「わかりかねますって」
「本当にわかりかねます。前例がありませんので」
前例がないっていうけど、私に関することは大体前例がない。
あるわけない、初代だから。
地図を見渡すと、何人か、淡く光っている人影がある。
「秘書さん、地図の中で光ってる人たちは……」
「祈っている方々ですね」
さっきの人には、気づかれた。見ていただけのつもりだったけど、独り言も漏らしていた。
どっちが原因かは分からない。
でも、可能性があるなら減らしておいた方がいい。
さっきまで見ていたのは、ただの日常だった。
夕飯の支度、洗濯物、他愛もない生活の一コマ。
盗み見ているような、少しの罪悪感はあったけど、それだけだった。
相手に届けようとしているものじゃないから、気軽に見ていられた。
でも祈りは、違う。
祈りは、誰かに向けて放たれた声だ。
宛先のない手紙みたいに、届くはずのない相手に向かって、それでも投げかけられている。
つまり、これは「私」宛てだ。
日常を見るのは、ただの傍観。
祈りを見るのは、望まれて、期待されて、受け取ってしまうこと。
見た瞬間、その願いに応えるかどうかを、こっちが背負うことになる。
日常を見るのと、祈りを見るのとでは、背負う重さが違う。
見るだけなら、気づかれないかもしれない。でも確証はない。
なら、さっきの「おいしそう」みたいな、軽率な独り言はやめておこう。そうしよう。
つい、出ないように気を引き締めてかかろう。
そう思いながら、次の人影を見てみることにした。
――今日も一日、無事に終われますように。
年配の男性が祈っていた。しばらく見つめてみる。
……反応、なし。
別の人影を見る。
――子どもの熱が、早く下がりますように。
これも、黙ったまま見ていたけど何も起きない。
「秘書さん、今の、二人とも気づいてないよね」
「そのようですね」
「……声、出してないからだ、たぶん」
「かもしれません」
歯切れは相変わらず悪いけど、否定はされなかった。
つまり、見るだけなら気づかれない。独り言さえ我慢すれば、たぶん平気。
さっきの「おいしそう」は、本当に余計だった。
そういえば、と、初日に説明された仕事内容を思い出す。
一つ目、雨を降らせる
二つ目、奇跡を起こす
三つ目、勇者を導く
四つ目、住民の祈りを見る
内容に奇跡を起こす、ってやつがある。
それなら、さっきの願いも叶えられるんじゃないか。
「そういえば、奇跡を起こすのも仕事だったよね。
さっきの願いそれで叶えたりは」
「個人の願いのためには、使えません。
一つ叶えれば、他の祈りや起こる事象との整合性が取れなくなります。
誰かを助ければ、神の力で誰かを害することにもつながりかねません」
「じゃあ、今見てたこの人たちの願いは」
「個人の願いですので、対象外です」
つまり、私にできるのは聞くことだけ。
叶えられない願いを、それでも聞き続けるのが仕事だなんて、想像していたよりずっと無力な役職だった。
まだいくつも光った人影の残る板の隅に、つい目が行く。
赤い数字が、表示されている。
998日。この前より減っている。
「……これ、何の数字なの?」
「追って、ご説明いたします」
「今知りたいんだけど」
「追って、と申し上げました」
はぐらかされた。
神様だっていうのに、秘書より何も知らないなんて、ひどい話だ。
全知全能とは何だったのか。
というか、これ秘書だけで回るのでは?神様、いる?
……とはいえ、ぼやいてても何にもならない。
気を取り直して、地図を眺める。
光っている人影がいくつもある中、ひときわ強く光っている人影が目に入った。
他のとは、明らかに光り方が違う。
「秘書さん、これは」
秘書の視線がわずがに揺れた気がした。
「勇者ですね」
「勇者の祈りって、そんな光り方するの?」
「いえ。通常は、もっと弱い光です」
「じゃあ、これは」
「かなり強い願いが、込められているものと思われます」
強い願い。
嫌な予感がした。
見るべきか、少し迷う。
でも、指はもう、光の方に伸びていた。
あとがき
読んでくださりありがとうございます!
プロットを詰め直したら、大体20話くらいの話になる予定になりました!(長いな)
完結してから読もうって方も、ぜひ反応💞だけでも残していってくれたら嬉しいです。
いつもスキありがとうございます!励みになってます🙌