
第52記|レモネードに、財布を盗まれる
虜になった。
目が覚めると、
いつもより、
身体が、軽い。
なぜだろう。
ふわっふわのマットレスに
なぜか、4つもあるまくら。
29年間、生きてきたが、
今のところ、頭は1つしかない。
シアトルに来ていた。
スターバックスの1号店。
お目当ては限定グッズ。
1号店だけ、ロゴが異なり、
少し、いやかなり、奇妙だ。
上裸のマーメイド。
尻尾は2本。
お世辞にも、
美しいとは言えない。
でも、欲しい。
「限定」という言葉は、
ちょっとしたドラッグだ。
どんな立派な建物なのか、
ワクワクしながら行ったが、
見つからない。
マップはたしかに、ここを指している。
ない。
本当に、ない。
あるのは、目の前の、
改装中のせまくて地味な建も――
!?!?!?
美しくないロゴが、
たしかに目の前にあった。
ここ!?
そして、カイソウチュウ??
両の頬を、冷たい何かが伝うのを感じた。
そこからのことは、
あんまり覚えていない。
いや、本音を言うと、
あんまり思い出したくない。
でも、せっかく来たのだ。
せめて他の店舗でいいから、
何か飲みたい。
飲まないと、やってられない。
すると、一緒にいた友人が、
オススメを教えてくれた。
これがよくなかった。
悪魔の囁き、
なんて言葉は信じていなかったが、
残念なことに、今は、信じている。
「ストロベリー アサイー レモネード」
なんと恐ろしい、響きだろうか。
その日を境に、
このショッキングピンクの液体を、
摂取しないと、心が、落ち着かない。
酸っぱい、でも甘い。
派手な色、でもあっさり。
こういう、想像を
ひょいと飛び越えてくるものに、
私は、めっぽう弱い。
1杯、また一杯。
みるみると、
痩せ細っていく財布。
もはやお札より、薄い。
最近は、薄くなった財布を、
しおりとして活用している。
同じものを、リピートする。
人生を振り返ると、
よくある現象。
美味しい。
だけではない。
失敗したくない。
こっちの方が大きい。
別のものに手を出して、
ダメだったとき、
ショックが大きい。
立ち直るのに、時間が必要になる。
レモネードが好きなのか、
失敗が怖いのか。
なんだか今日は、いつもより酸っぱかった。
2026.6.22、15:14🇨🇦
ある男。