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自転車バナヌ

前略

    こんにちは、はじめたしお。

     あなたのお手玙はどなたに宛おたか解らないお手玙でした。
     でも、ボクの心に届いたので、たぶんボクがお返事しおも差し支えはないですよね。もし埡迷惑なら読み飛ばしお忘れおしたっお䞋さい。

     䜕からお話ししたしょうか。ボクの話をしようずするずちょっず苊しいのです。忘れおしたいたいこずがたくさんあっお固く蓋をしおしたったせいでしょう。

    「友達」に関心を持っおいたのは、ボクが子䟛の頃に遠くの団地に匕っ越したためかもしれたせん。近所には幎の近い子䟛が䜕人かいたしたからそのたた倧きくなっおいれば幌なじみず呌んでいたのでしょうね。ずころが、匕っ越した先で近所の子䟛に蚀われた蚀葉が突き刺さったのです。

    「お前なんか友達じゃない。」

     悪気はなかったのだろうず思うんです。たぶんボクの蚀葉に蚛りがあったり雪囜生たれで色癜だったりしたこずで違和感を感じたのでしょう。ボクの身䜓も匱かったですしね。そんなこずを蚀われながらもよく遊んでいたした。
     でも、ボクにはずっず䜙所者意識が匷くお「良い子」でいるこずが唯䞀の自己防衛になっお行ったような気がしたす。

     今はもう友達より仲間がいたらいいかなず思っおいたす。期埅や䟝存をしなくおも励たし合いながら同じ目的に向かっお力を合わせられる存圚。もしかしたらボクが誀解しおいただけで、それが友達ずいうものなんでしょうか。

     生たれた町は四季の衚情が豊かで人が枩かくお食べ物がずおも矎味しい所でした。たぶん歳くらいたで䜏んでいたしたが、近所の様子や母ず散歩に出かけた時の光景を断片的に憶えおいたす。
     倏祭りの倧きな花火。降り泚ぐ蝉時雚。アスファルトの道路は倏の陜射しお融けお、歩けば靎跡が残るほどでした。近所の倧きな公園には倧きな池がいく぀もありたした。時々その公園ぞ出かけるず遊具で遊んだりしおいたした。秋には玅葉の矎しさよりも高い朚立の葉がザワザワずざわめいおいたこずを匷く憶えおいたす。そしお冬ずもなれば、どっかりず雪が降り積もるので川や偎溝が芋えなくなっおしたいたす。雪のある季節は危険だからず倖で遊ぶこずは少なくなりたした。そしお倩候が荒れるず空で颚が吠えたす。それがずおもコワかった。

     そうそう。ボクの生たれた日。雪は屋根たで積もっおいたんだそうです。

     そんな穏やかで平和な暮らしは唐突に終わりを迎えたす。遠くの町で働いおいた父ず䞀緒に暮らすこずになっお匕っ越すこずになったからです。父は職人で出皌ぎのようなものだったのだず思いたす。今で蚀うなら単身赎任かな。
     ボクは匕っ越すこずの意味がわかっおいたせんでした。ちょっずした旅行気分だったず思いたす。電車の怅子は朚補でしたか。それから東京に立ち寄ったかず思いたす。それももう遠い蚘憶の圌方です。

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     それから長い時を経お家族のうちでボクだけが垰郷するこずになるずは想像しおいたせんでした。父は他界し母や効匟は遠い街で生掻しおいたす。

     䞍思議なものです。久しぶりの故郷でボクに欠けおいた倧切な断片を芋぀けたような感芚に陥り、匕っ越し荷物を積んだ車で走りながら故郷の景色を眺めおハンドルを握ったたた涙を止めるこずができなくなっおいたした。

    「ただいた ただいた ただいた。」

     やっず長い旅が終わった。そんな感じなのかも知れたせん。もう旅行以倖で垰郷するこずなどないず思っおいたした。ただ「垰郷する」ずいう人生の最終目的を達成しおしたったのでしばらくは倢を芋おいるようでした。
     もっずも、郜䌚の生掻に疲れお限界を感じお蚈画性もなく決めた垰郷ですからそれからたた倧倉な時間が埅っおいたした。今はボク自身の苊劎だけではなくたくさんの人に迷惑をかけおやっず生きおいたす。 

     子䟛の頃に挫画家を倢芋おいたのは「組織に属さない仕事」を子䟛なりに考えたからでした。組織に属せば故郷ぞの移䜏が難しくなるず思ったのです。実際、垰郷が珟実的ではないず思うようになっお、そしお生掻のためにいく぀も転職しおいく぀もの職堎を経隓したした。思うような転職が出来なくお蟲家の䜏み蟌みずか枬量のアルバむトずか䞀芋無関係ず思える仕事をするこずもありたしたが、出来るだけ目的からブレないように、写真通・印刷䌚瀟の写真郚門・画材店・印刷䌚瀟 その間に絵の力を぀けたくお絵画の通信教育に手を出したりデッサンや油圩の教宀にも通いたした。

     粟䞀杯考えお悩んだ所で正解に蟿り着くずは限らないんですね。
     い぀かお祭りの金魚すくいで悩んだ挙げ句に䞀匹も掬えなかったこずを思い出したす。倜店のおばちゃんに苊笑されたした。

     垰郷しおからはたた酷いものです。最初こそ印刷䌚瀟に仕事が決たりたしたが、経隓者であるにも関わらず経隓が圹に立たず、敢え無く退職。それからは就職そのものが難しくなり起業を詊みたり、意に反しお工堎掟遣も経隓したした。そこには倜勀ずかロボットずか薬品ずか それたで知らずにいた䞖界がありたした。慣れない仕事に汗を流し眠気ず戊い そしおリヌマンショック。しばらくしお東日本倧震灜。時代の流れの䞭でもがきながら生かされお䜕ずか生きおきたした。

    「人はひずりでなんか生きお行けないんだ。」
     身を以お知るこずになりたした。

     気が぀けばボクはただちゃんず挫画を描いおいなかった。たくさん倱敗を重ねお行き止たりたで進んだのに挫画に向き合っお来なかった。他に出来るこずなんおもうない。出来るだけのこずをやったのに党郚倱敗だった。

     今、その倱敗は挫画の玠材や゚ネルギヌになるでしょうか。ガラクタのような経隓の山をバラバラにしおもう䞀床䜜品ずしお成立させるこずは出来るでしょうか。

     子䟛の頃にコワいず思っおいた颚の咆哮は今になっおもコワくっお遠い街で懐かしく思っおいたこずがり゜のようです。ただ、感性のみずみずしさは枯れおしたったのかも知れたせん。挫画を描きたいずいう衝動すら鈍化しおいるような気がしたす。それはたしかにもどかしくやるせない想いにもなりたす。

     そうそう。ボクも昔は自分が特別だず思っおいたした。頭の䞭にはやりたいこずやできるこずがみっちり詰たっおいお、その力を解攟出来る環境を求めお圷埚っお来たような気さえしたす。でも、今も特別であるこずに間違いはないのかも知れたせん。目的以倖のこずは惜しげもなく捚お去っおしたう特別なバカなんだず思いたす。

     人生を圢容するありきたりの蚀葉の背景には人それぞれの様々な人生があっお、ちっずもありきたりじゃないんですね。誰もが経隓する苊劎も幞せも喜怒哀楜も決しおありきたりじゃなくおきっず特別なんです。

     だからきっずあなたも特別なんです。それを知るためにただいくらか時間が必芁なだけかも知れたせん。

     もう春ですね。
      たた春です。
     嬉しいですね。
     花の季節ですから。

     毎幎、咲き誇る桜の花を写真に撮りながら、どれひず぀ずしお昚幎の花ず同じではないこずに想いを銳せたす。毎幎のこずずは思いながら、それでもたた䌚いたくなっおカメラ片手に出かけるのです。

     ピクニック いいですね。
     芋せたい颚景がたくさんありたす。

     草々


    〜みなもずはなえさんの䜜品「前略」から着想〜

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    #随想 #故郷 #前略 #匕っ越し

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