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秋倢

    この物語フィクションです。

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     ボクらが䞀緒に暮らすようになっおヶ月。

     ボクは朝の散歩を終えおがんやり倖を眺めおいる。
     すでに倜は明け、せわしく飛び亀う高原の鳥の声が響き枡っおいる。雲を切り裂いた陜射しが降り泚ぎ、霧のかかった山々は立䜓感を芋せ始めおいた。

     圌女は朝食の準備に䜙念がない。

     い぀もの朝。
     い぀もの食卓。

     キッチンの圌女が蚀う。
    「ねぇ、私たちがもう少し早く出䌚っおいたらどうなっおいたのかしら。」

     ボクもそんなこずを思うこずがある。
     もっず早く もう少し早く出䌚っおいたらどんな人生だったのだろうず。
     けれど、そんな莅沢なこずは蚀うたい。
     出䌚えたこず それだけでいいじゃないか。

    「昔、山登りした時のこずを思い出したよ。」

     的倖れな応えにも圌女はにっこり笑う。
     そう、い぀ものこずなのだ。

    「山登り楜しい思い出」

     圌女はサラダを盛り぀け食卓に持っお来た。
     ドレッシングは圌女のオリゞナルブレンド。ボクはよく知らないが、良い銙りのハヌブを䜿っおいる。

    「あぁ。故郷の山にひずりで登ったんだ。小孊生が遠足で登っおたよ。」

     あの山には䜕床か登った。
     倧しお高くない山だけれど、䜓力がない䞊に運動䞍足だったから、頂䞊たで駆け䞊がっおお匁圓を枈たせたらたた駆け䞋りお来る小孊生には敵いっこなかった。

     圌女は、野菜炒めず熱々の゜ヌセヌゞ、そしお目玉焌きを皿に盛り぀けお食卓に䞊べた。そしお瞳にいたずらっぜい茝きを芗かせながらその先を促す。

    「あなたの故郷は東北だったわね。」

     そう、暙高は1,000m皋床だったが、高䜎差が倧きく登山道の敎備も行き届いおいるずは蚀えない。それでも故郷の山ず蚀う愛着があった。

    「うん。その時に他の登山者ず䞀緒になったんだ。少し話したら同業の人でさ 急に芪近感が湧いたんだよ。」

     圌女は食卓にご飯ずみそ汁を䞊べ、い぀もの垭に぀いた。

    「さぁ、食べたしょうか。」

     ボクはにっこり笑っお蚀う。

    「うん。い぀もありがずう。いただきたす。」

     圌女の手料理をずっず昔から知っおいるような気がする。矎味しいだけではない。特別なメニュヌではないかもしれないが、自然に身䜓の隅々たで行き枡っお行く感じがする。

    「それでその人ずは」

     圌女も食事をし぀぀楜しそうに話の先を促す。

    「んあぁ。その時にね、猶ビヌルをもらったんだ。圌は猶ビヌルを本持っお登山しおたんだね。」

     圌女は少し驚いた衚情をしおボクの目を芋た。

    「山登りっおビヌル持っおするものなの」

     少なくおもボクはビヌルを持っお登ったこずはなかった。荷物が増えるし、酔っぱらっおトラブルになったら倧倉だ。

    「どうなのかなぁ。でも、そのビヌルが蚀葉にできない矎味しさでね。」

     突き抜ける爜快感 身䜓を䜿っお汗を流したからか、それずも山の空気が矎味いからなのか、思い掛けず仲間を埗たからなのか その味は栌別なものに感じたのだった。

    「ぞぇ 。」

     そう蚀っお圌女は少し考え蟌む。そしお瞳を茝かせお蚀った。

    「それっお私たちに䌌おるわね。人生っお蚀う山を登っお、ふたりで矎味しい食卓を囲んでる。」

     たぶん、圌女ず暮らすようになったのは、こんな颚に考えられる人だからだず思う。それはボクがこの話を始めた意図を芋事に射抜いおいた。

    「そうでしょ。だからね、ボクらは今出䌚っお良かったんだず思うんだよ。登っお来た人生ずいう山道の苊しかったこずや楜しかったこずを話せるじゃない。」

     䞀緒に登り始められたら、それも楜しかったかもしれない。苊しい時は助け合い、楜しい時はふたりで楜しむこずが出来ただろう。でも、ボクらはそれぞれの歩き方でそれぞれの人生ず蚀う山を登った。玄束も申し合わせもしおいないのに出䌚い、䞀緒にいられる。それは奇跡的な偶然であり感謝すべきこずなんだず思う。

    「そうね 。私たちの人生の話をたくさんしたしょうね。」

     圌女は嬉しそうに笑った。


     ボクらはお互いに70歳を超えおいる。
     あの山頂のビヌルの味を思い出しおいた。

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    もくじ

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