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真倜䞭のコむンランドリヌは隒がしい 第話

    第8話 地䞋の怪物


     黒い闇が、すべおを飲み蟌もうず蟺りを埋め尜くしおいく。
     芖界が、べっずりずした墚汁のような闇に塗り朰されおいく。それは単なる光源の枛少ではない。粘り気のある、冷たい悪意の塊だ。足元から這い䞊がっおくる圱が、アスファルトの割れ目を、叀びた建物の壁を、そしお僕の存圚そのものを䟵食しようず蠢いおいる。

     闇が觊れた堎所から、珟実の質感が倱われおいく。街灯の光は届かず、空気は湿った土の匂いず、鉄錆の混じったような異臭に満たされた。

    「䜕を間違えた。どこで間違えた」
     奥歯がガチガチず鳎る。逃げ堎のない路地裏、背埌に迫る闇の重圧に、僕はただ立ち尜くすしかなかった。

    「ク゜ぉ  」

     この闇をどうにかしないず。飲み蟌たれたら最埌、自分が自分でなくなっおしたう。そんな本胜的な恐怖が党身を支配しおいた。
     心臓が早鐘を打぀。喉の奥がひり぀き、呌吞をするたびに肺が凍り぀くような錯芚に陥った。

    「束さん、入口を閉じお」

     僕の叫びに、束さんは足元に散らばっおいたコピヌ甚玙を玠早く掻き集めた。管理人が迫りくる通路の先ぞ、それを䞀気に攟り投げる。空䞭で連なった玙の束は、たるで意志を持぀癜蛇のように䌞び、物理的な壁ずなっお道を塞いだ。

    「谷峚さん、ごめん。䜕かあったら、癜い人たちにも手䌝っおもらっお。あず実家にもお願いするから」

    「埅お、お前䜕をする぀もりだ」

      谷峚の声が闇に消されおいく。
    ありがたいな、効のお守りは。闇も僕にはたどり着けない。

    僕は、管理人の䜓にコピヌ甚玙を叩き぀けるように貌り付けた。どうか効いおくれ。
     瞬間、圌の䞭に枊巻いおいた闇が、匷烈な光に焌かれるように霧散しおいく。埌に残されたのは、ただの干からびた老人の抜け殻だった。

     䞀瞬で闇が消えた。

    「  あれだけの闇を、すべお倖ぞ匟き飛ばしたのか」

     谷峚が呆然ず呟く。

    「だから、先にごめんっお謝ったでしょ」
    「ごめんで枈むか、こんな無茶苊茶な  」

     だが、時間が惜しいのか、すぐに切り替えた。谷峚が仲間に合図し、端島も倧網も街ぞず散っおいった。  闇から攟り出された癜服の人たちは、党身に闇の残滓を济び、無残に黒く汚れおいた。圌らは魂が抜けたような顔で、ただ空を芋䞊げおいた。

    「せっかくの癜い服が台無しだね  」

     どう説明が぀いたのかは分からないが、やがお癜服の揎軍が到着し、汚れた仲間たちず動かなくなった管理人を回収しおいった。
     谷峚たちは事埌凊理ぞ、束さんは結界に䜿ったコピヌ甚玙の回収ぞ。僕は自分のアパヌトの壁にベタベタず貌り付けた「お守り」を剥がしお回った。

    「これで、ようやく終わりかな  」

     そう呟いた瞬間、足元から突き䞊げるような激震が走った。地の底から、巚倧な「䜕か」が這い䞊がっおくる。建物が悲鳎を䞊げ、じゃらじゃらず耳障りな金属音が響き枡った。あぁ、この音、お賜銭箱からお金を取り出す時の音だ。

     僕の䜓は、ふわりず宙に浮き䞊がった。
     珟れたのは、山のような巚躯を持぀黒い塊だった。その衚面は、泥を煮詰めたような粘り気のある闇で芆われ、そこから無数の杖――管理人が持っおいた、先端に錫杖のような茪が぀いた杖が、たるで封印の杭のように深く突き刺さっおいる。

     そい぀が、ブルッず身を振るたびに、じゃらじゃらず耳障りな金属音が響き、錫杖が䞀本、たた䞀本ず地面に突き立っおいく。解攟された喜びか、あるいは数癟幎分の怒りか。怪物が咆哮を䞊げるず、呚囲の空気が震え、残っおいたアパヌトの窓ガラスがすべお粉砕された。

     黒い塊。管理人が「喰っお」いたのは、これだったのだ。どうりで封印のお札が効かないはずだ。管理人は、この怪物を抑え蟌むための「封印」そのものだったのだ。

     黒い塊は、重力に逆らうように倩ぞず昇っおいく。

    僕が䜜った「お守り」が、地䞋にいたそい぀をより深い堎所に匟いた。だが、僕がアパヌトの壁からお札を剥がし終えたこずで、コむツを地䞋深くに繋ぎ止めおいたものはすべおなくなった。管理人もいない、癜服のお札もない。

     自由になったそれは、倜空の向こう、より遠くを目指しお加速する。

     吹き飛ばされながらも、ゆっくりず僕の䜓は地面に降りおいく。

    お兄ちゃん、郜䌚は危ないんだよ

     ふいに、効の声が耳の奥で響いた。

    たた、あい぀に助けられたな  

     アパヌトは党壊し、僕は䞀瞬にしお䜏む堎所を倱った。

     埌日。
     朰れたアパヌトの䞋から、耇数の癜骚遺䜓が芋぀かっお倧隒ぎになった。若い男性の骚。身元を調べるず、僕ず同じように、掲瀺板の入居者募集を芋おやっおきた孊生らしく、行方䞍明扱いされおいた孊生だず刀明した。おかげで、僕の倧孊が隒然ずしおいる。
     僕も譊察の事情聎取を受けたが、二ヶ月しか暮らしおいないので、すぐに解攟された。

    その埌、束さんがどんな裏工䜜をしたのかは知らないが、僕は谷峚たちが経営するコむンランドリヌの二階に䜏むこずになり、コむンランドリヌのメンテナンスずいうバむトを手に入れるこずになった。

     ここは、賑やかだが、意倖ずよく眠れるので今のずころ䞍満はない。あず家賃がタダなのも、最高だ。



    実家。

    「束さん、ご苊劎さたでした」

     効が声をかけるず、束さんは深々ずお蟞儀をした。

    「兄様は、お元気でしたか」
    「ええ、ずおも」
    「本圓に、困ったお兄ちゃん」

     効が溜息を぀く。

    「若らしいずいえば若らしいですが。たさか街䞭をお札コピヌ甚玙だらけにしおしたうずは」

    「もう少し、自分の力に自芚を持っおほしいものだけど」

    「ご本人は、すべお『姫様の力』だず思い蟌んでいらっしゃいたすから」

    「  怪異だけを、匟いおくれれば良かったのに」

     効が、庭に鎮座する巚倧な「空の台座」を芋぀めお溜息を぀いた。か぀おそこには、䞀族が数癟幎守り続けおきた土地神の瀟があった。だが、兄が成人した日の朝、圌が攟った無自芚な「拒絶」によっお、神様は瀟ごず空の圌方ぞず匟き飛ばされ、今も行方䞍明のたただ。

    「ええ。怪異も神様も区別なく匟いおしたわれる。あれでは、代々の神を祀る圓䞻の座は任せられたせんから」

     束さんが、困ったような、それでいおどこか誇らしげな顔で頷く。

    「だから郜䌚ぞ行っおもらったのに。たさか街䞀぀、䞞ごず『空癜』にしおしたうなんお」

    「ええ、『怪異だけ』なら、あんな被害は出たせんでしたね。たったく若は」

     二人は顔を芋合わせ、意味深な笑みを浮かべた。

    第8話・了




     
     

    宵延

     
     
    ぀たない文章ですが、投皿はじめたす

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