
【リアル】終わりの始まり 2017年10月 ロサンゼルス
【漫画】【小説】に続きリアル系は【リアル】にして分けてみました。ぱっと見分かりやすい、探しやすいを目指して改善を繰り返していく所存です。
アメリカ・ロサンゼルスで逮捕された4人の日本人の女

終わりの始まり:2017年10月 ロサンゼルス
2017年10月15日、午後11時45分。ロサンゼルスのダウンタウンは、乾いた夜風とネオンの光が交錯する無機質な空間と化していた。昼間の喧騒は嘘のように息を潜め、暗い路地裏には行き場を失った者たちの影が揺れている。スキッド・ロウから少し離れた人気のない工業地帯の路上に、一台の黒いSUVがエンジンをかけたまま停まっていた。
車内にいるのは、4人の日本人女性である。彼女たちは観光客でも、留学生でもなかった。彼女たちの正体は、国際的な麻薬密輸組織の末端で使い捨てられる「運び屋」である。
運転席でハンドルを握るのは、このグループのリーダーであるエリカ(28歳)だ。彼女は冷たい眼差しでバックミラー越しに後部座席を確認し、細い指で電子タバコを吹かした。甘ったるいベリーの香りが車内に充満する。助手席には、ひたすらスマートフォンを見つめて震えるミリ(25歳)が座り、後部座席には、虚勢を張るように窓の外を睨みつけるリオナ(23歳)と、状況を完全に理解していない様子のリカ(21歳)が並んでいた。
彼女たちの足元には、黒い大型のスーツケースが2つ、押し込まれている。中に入っているのは衣類や土産物ではない。精巧に作られた二重底の奥に隠されているのは、末端価格で数億円に上る高純度の覚醒剤とコカインであった。
堕ちていく過程:4人の背景
彼女たちがなぜ、異国の地で犯罪の片棒を担ぐことになったのか。その理由は、あまりにも平凡で、そして愚かなものだった。
エリカはかつて、東京の六本木で高級クラブのホステスをしていた。彼女は金回りの良い客たちと交際するうちに、違法薬物の取引に関わる裏社会の人間と接点を持った。自身の浪費癖から多額の借金を抱え、それを帳消しにする条件として「運び屋の元締め」という役割を引き受けたのである。彼女はSNSや夜の街のネットワークを駆使し、金に困っている、あるいは海外旅行という言葉に惹かれる若い女性たちを言葉巧みに誘い込んだ。
ミリは、美容師のアシスタントとして働いていたが、薄給と過酷な労働環境に疲弊していた。ホストクラブでのツケが膨らみ、首が回らなくなっていたところをエリカに拾われた。「ただ荷物を運ぶだけで、ハワイやロサンゼルスに無料で旅行ができて、しかも100万円の報酬がもらえる」という甘い言葉に、彼女は思考を停止させた。
リオナは、自称モデルであった。SNSでの承認欲求を満たすためだけに生き、見栄を張るためのブランド品や海外旅行の写真を常に求めていた。「VIP向けの特別な仕事」というエリカの誘い文句は、彼女の歪んだ自尊心を満たすのに十分だった。荷物の中身に薄々気づきながらも、彼女は「自分だけは捕まらない」という根拠のない自信を持っていた。