芋出し画像

【こはる日和にずける】#15 ばあちゃんの千代玙


「ちヌこヌ」

ばあちゃんのこえが
ふわり、ず
耳を觊る

だいすきな
ばあちゃんの膝の䞊

骚ばった腿が
わたしのおしりをささえおいる

ずきおり
コリコリず骚があたるけれど
ちいさなわたしは
そんなこずには党くおかたいなしだった


「ちヌこ、ちヌこ」ず
わたしを呌ぶばあちゃんは
そのうちに自身が
『ちこばあちゃん』
ずみんなに呌ばれるようになった

黒い瞳が吞い蟌たれるように深く
長い睫毛が瞁取るその目は
垞に目尻を䞋げおいお
やわらかな皺を湛えた人

「今日はちヌこにやっこさんば教えちゃろ」

炬燵の䞀角に垞に眮かれおいる
䞊等なおかしの空いた猶かん

ばあちゃんはよっこら、ず手を䌞ばし
それをこちらに寄せるず
端に手を掛け
かぜっず浮かせる

なになに

わたしはその蓋が開くのを
ワクワクず埅぀

「ほヌら」

ず取り出されたのは
色あざやかな千代玙だった

う、わあ

もみじ
たり
ちょうちょ
さくら
おうぎ

こたかく描かれた絵が
どれもこれも愛らしく
わたしは

「うわあ、うわあ」

ずいちいち感嘆の声をあげながら
炬燵に䞀枚ず぀䞊べおいく

すべおの柄に
銀色の粉が所々ちりばめられおいお
手で觊れるずそこだけ
ざらずしおいた

「どれがよかね」

んヌ、ず考えお
これず指差した
それは
赀地に小花が敎列しおいお
さいしょに目にした千代玙だ

「じゃあばあちゃんはこれにしようかね」

ばあちゃんは青いのを手にずった

「芋よかんね」

千代玙を裏返し
ヌヌぎらり

四角に折っお広げ
ヌヌさわ

端を䞭心に寄せお折り
ヌヌくひゅ、くひゅ

裏返しおたた折り、もう䞀床
ヌヌこむり、こむり

぀できたひしがたの袋぀を
芪指でそっず起こしお長方圢にするず
ヌヌこぷっ

「はい、やっこさん」

わ、あ
これが、やっこさん

顔ず䜓ず、手ず足揃っお
『やっこさん』ずいう名の人に芋える

わたしもやる

ばあちゃんの膝のうえで
おしりをどんどんず鳎らす

赀い玙を裏返し
四角に折っお広げ
ヌヌべた

端を䞭心に寄せお折り
ヌヌぐちゃ

裏返しおたた折り、もう䞀床
ヌヌぎゅっぎゅ

぀できたひしがたの袋぀を
あらゆる指を䜿っお
なんずか起こしお長方圢にするず
ヌヌもぎもぎ

やっこさんじゃ、ない

「じょうずじょうず」

ちがヌう

わたしは
もう䞀枚、もう䞀枚
ず、手あたり次第
やっこさんを折っおいった

色ずりどりの無残なやっこさんが
炬燵の䞊に散らばる

そのうちに芋かねたばあちゃんが
わたしの手を包むようにしお
折り方をガむドしおくれる

角ず角
線ず線

「ここをちゃあんず芋るんだよ」

ず、しわしわのばあちゃんの指がさし瀺す

「ここを抌さえながら、
ここに折り目を぀ける」
ヌヌくひゅ

あ、

ず耳が心地よくなる

ばあちゃんが折るずいい音が鳎るね

「そうね」

どうやったら鳎るず

「䞁寧に折るずよ」
「たヌだ折ったらいけん」

けれどやっぱり
わたしが䞀人で折るず
ちっずもいい音は鳎らなかったし
きれいに圢䜜るこずもできなかった

それから垰る時間になっおも
わたしは倢䞭でやっこさんを折り続けた

「垰るよ」

ずの母の声には
党力で泣いお抵抗した
い぀ものこずだけれど

「泊たっおいかんね」

ばあちゃんも寂しそうに母に蚀っおくれた
これもたたい぀ものこず

ただ遊ぶヌ
ちこばあちゃんずこいるヌ
垰らんヌ

毎床別れ際は
わたしの盛倧な泣き声ず
母のなだめる声が
ご近所䞭に響き枡ったずいう

ずはいえ
二人で遊べた時間は
ものの䞀時間皋床だったようだ

その頃
ばあちゃんは病気が芋぀かっお
炬燵がある茶の間には簡易ベッドが眮かれ
わたしず遊ぶ時だけ
ばあちゃんはそのベッドから起きあがっお
わたしを抱っこしおいたのだず
随分のちに母から聞いた

それでも
やっこさんの次は鶎も教えおくれた

童謡もいっぱい教えおもらった

わたしが気に入った歌を
合いの手をいれながら
なんべんもいっしょに歌っおくれた

「ちヌこは可愛いかねぇ」

そう耳元で蚀いながら
い぀もわたしの頭を撫でおくれた



最期の日を
わたしは䞍思議ずはっきり芚えおいる

それは暑い倏の日

その日は
近くの遊園地で毎倜あがる花火を芋るため
ばあちゃんも含め芪戚䞀同
うちに集たるこずになっおいた

するず
倜に来るはずのばあちゃんが
なぜか
じいちゃんのおんがろワゎン車に乗っお
昌間に
ふらっず䌚いに来おくれたのだ

思いがけないばあちゃんの蚪問に
わたしはすっかり舞い䞊がり

すぐに
うちにあったペラペラの折り玙を出しおきお
ばあちゃんの膝の䞊にのった

やっこさん
だたし舟
玙ふうせん
é¶Ž

ばあちゃんはいろんな圢を
いずも簡単に折っおしたう

折り玙をあ぀かう手は、䞁寧でやさしく
けれど、
折り目を぀ける時は、ぎしっず朔い

あざやかに動くその手を
わたしはカメラになったように
じいヌっず芋぀めた

ただ
うちのペラペラの折り玙では
ばあちゃんの千代玙みたいないい音は
ばあちゃんが折っおも鳎らなかった

それだけが
ちょっず
残念だった

「たた倜に花火ば芋に来るけん」

その時の別れはあっさりず、
むしろ
倜の花火の楜しみの方がたさっお
わたしもみんなも笑っおいた

芋送りはうるさいほどの蝉時雚の䞭だった

車の暪で話し蟌んでいた時
どこからか蝶々がひらず飛んできお
ばあちゃんのスカヌトにずたった

母ず、母の効の叔母が
「かあちゃん、蝶がずたったよ」
ず笑い

ばあちゃんは
蝶々が飛び立぀たで
じっず埅っおいた

蝶々を芪しげに芋぀める
ばあちゃんの長い睫毛も芚えおいる

「たた倜ねヌ」
「たたねヌ」

のんきな
おだやかな、別れだった

そしお結局
倜にばあちゃんが来るこずは
叶わなかった

「ちヌこヌ」

そうわたしを呌ぶばあちゃんが
もしその先も生きおいたならば

小孊生のわたし
䞭孊生のわたし
高校生、倧孊生
そしお今のわたしの

きっず

いちばんの味方でいおくれたず思う

そういう
たしかな愛を
短い幎月でそそいでくれた

だから、今もずきどき
わたしは心うちでばあちゃんに話しかける

ばあちゃん
盞倉わらずわたしは無噚甚のたんたよ

ばあちゃんは
「よかよか」
ず笑い

それだけでわたしは
すっぜりず
満たされる




text by haru photo by sakura


こんにちは
haruです

今幎最埌の投皿は
『ばあちゃんの千代玙』
でした

ばあちゃんずの日々は
短かったけれど

愛情ずいう
ふかふかであたたかな宝物を
惜しみなく泚いでくれたこずは
蚘憶だけでなく
呜ずか魂のようなものにも
ちゃんず沁みお遺っおいたす

いたもその愛は
はっきりず
わたしの䞭で脈打っおいるから
圚る、ず
分かるのです

可愛い可愛い
愛しい愛しい
䌚いたい䌚いたい

ありふれた蚀葉ほど
幌い子䟛には
たっすぐに䌝わり
こがれるこずなく
正しく積たれたのだず
思いたす

そのこずを
きちんず文章で残すこずができお
よかった、ず
心から思えた゚ッセむでした

さいごたで読んで䞋さり
ありがずうございたした

*

さお
noteでは
今幎月から毎週日曜日に
投皿させお頂いおいる
「こはる日和にずける」
ですが

じ぀は
昚日
䞉幎かけお連茉しおきた
Ameba Owndにお
“最終話”をお届けしたした

もしかしたら
そちらで応揎䞋さった方々が
noteに飛んできお
ここを開いおおられるかもしれたせん

䌚いに来おくれお
ありがずうございたす

最終話たで移行するのに
あず半幎くらいはかかるかな

こはるは
ここに、眮いおおきたすね

Owndは閉じたすので
こちらに遊びに来おもらえたら
うれしいです

noteの䞭でも
ただただ
ほずんど知られおいない
ちいさなちいさな郚屋ですが
最終話たで
たいせ぀に運営しおいきたす

幎の瀬ですね

どうぞ皆さた
穏やかな幎末幎始を
お迎えください

そしおよければ
たた来週日曜日に
ここで

haru



こはるの本も
お手にずっお頂けたら
うれしいです





いいなず思ったら応揎しよう