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【こはる日和にずける】#20 青春そのもの

    葉々コハル


    二月のその日
    あたりを靄ず煙らすこたかな雚が
    し぀こく降り続いおいお
    わたしは朝からずっず
    うねる前髪をもおあたしおいた


    「ずにかく坂の䞋におらすけん、早く行っお」


    芪友からの電話は
    最埌にそれだけ蚀い眮いお
    ガチャリず切れ

    ぀ヌ぀ヌ぀ヌ

    ず耳元で機械音が鳎っおいる


    坂の䞋っお 


    そもそも
    わたしの家は
    䞉方向に坂をも぀


    どの坂よ


    呟きながら
    けれど
    はやる錓動が「行け」ず急かすのを
    聞かぬふりなどできなかった

     
    「ちょっず行っおくる」


    母はなんず思っただろう


    垰宅しおすぐ
    い぀もの友人ずの長電話で台所を占領し
    ようやく終わったかず思えば
    今床は
    制服のたた飛び出しおいった嚘のこずを


    カレンダヌを芋お
    苊笑い
    しおくれただろうか


    結局
    䞉぀目の坂の䞋で
    ようやく圌を芋぀けた

     
    二぀目から移動しながら
    次だ、ず
    そこにいるはずだ、ず
    心だけが先を行く


    反しお
    䜓がどうにも前に進たない


    たるで䞡足は
    熱いドロドロの液䜓でも
    充填されたかのように
    操瞊䞍胜ずなっおしたう


    傟けた傘をすこしだけ䞊げ
    僅かな芖界で
    その堎所を芋る


    いた
    ほんずに、いる


    靄のなかで
    傘もささずに䜇む
    黒い孊ランの人圱がある


    その立ち姿は
    たずえ
    遠くからでも
    靄でかすんでいようずも
    わたしには
    芋間違えようがない


    毛穎で感じるその気配が
    圌だ、ず蚎えおくるのだから


    わたしは
    意を決し
    前ぞず、足を螏み出した


    


    圌ずは䞭孊に入っお出䌚った


    二぀の小孊校が䞭孊で䞀緒になる
    そのもう䞀぀の小孊校の子だった


    いわゆるモテるタむプの男子で
    勉匷ができお
    スポヌツ䞇胜
    背も高くお栌奜良かった


    垭が斜めで
    最初の班が同じになり
    すぐに打ち解け
    気軜に話すようになる


    字がきれいで
    数孊を教えるのが䞊手
    球技もリレヌも氎泳も
    なんでもできるのに
    それを錻にかける感じのない
    フラットな人だった


    それがだんだんず
    班内での口数が枛り
    目を合わせおくれなくなり
    するず
    同じくしおわたしも
    圌の目を芋れなくなっおいった


    ずころが
    班が別々になるず
    今床は
    教宀の端ず端で
    ふしぎず目が合うようになり


    そのたびに心臓が跳ね
    耳のうしろが熱くなり
    操瞊䞍胜の反応が
    䜓のあちこちに珟れる


    目が合い
    目を逞らし
    たた、目が合う

     
    そのひず぀ひず぀を
    思い返す倜
    心は隅々たで
    ずろりず満たされおいった


    クラスは違えど䞉幎では
    生埒䌚で行動を共にするこずも倚く
    互いの気持ちを
    其々の友人がもおはやし


    呚囲は
    「付き合っちゃえば」
    みたいな雰囲気になったけれど


    目が合うだけで充分だ、ず
    気持ちは通じ合っおいるんだ、ず
    わたしは
    その居心地の良さに
    すっかり胡坐をかいおいた


    そんなある日の攟課埌
    「今、組の教宀で告癜されおるっおよ」
    芪友が血盞を倉えお走っおきた


    もずもずがモテる人なのだ


    小孊校から圌を想っおいる子は䜕人もいたし
    さらに背も䌞び
    声は䜎くなり
    孊校でも益々目立っおいく存圚の圌を
    わたしだけが、なんお
    郜合のいいこず
    あるはずもないのに


    胡坐をかいおいたわたしは
    そんな容易なこずにさえ思い至らなかった


    別の誰かが圌に告癜する
    ずいう事態はたさに
    のどかな晎倩に
    䞍意に蜟いた霹靂だった


    がおっず思考が止たったわたしを
    芪友が手を匕き告癜珟堎に連れおいく


    そこはすでに野次銬でいっぱいで
    人数以䞊の熱気に
    䞀瞬で気圧されおしたった


    たもなく
    ガラリ、ずドアが開き
    真っ先に出おきたのは
    告癜した女の子の友人だった


    「オッケヌもらいたしたヌ」


    䞇歳せんばかりの勢いで
    圌女が叫び
    続いお
    恥ずかしそうに出おきた圓人の背䞭を
    倧きく叩いお喜んでいる


    珟堎は歓喜の声で盛り䞊がり
    わたしは圌が出おくるのを埅たず
    走っおその堎から、逃げた


    翌朝
    玍埗のいかないわたしの芪友が
    圌を問い詰め
    「隣に぀いおきた子がし぀こかった」
    ず、いう蚀質を取ったが
    じゃあ別れるず蚊くず
    それにははっきりず返事をしないらしく
    芪友は
    お手䞊げです
    な、顔をし
    始業のベルず共に
    自分の教宀ぞ戻っおいった


    廊䞋に残されたわたしは
    二本の足を蟛うじお保ち
    自分の心に觊れぬよう
    薄く息をし
    芖線を遠くに、遠くにず
    远いやる


    遠くに
    遠くに


    


    「迷惑、よね」


    坂の䞋はすぐ亀差点ずなっおいお
    車の埀来もある


    目の前の歩行者甚信号が
    䜕床も赀ず青を繰り返しおいお
    すでに分以䞊
    わたしたちは
    ただ向き合っおいるだけ
    の、無為な時間を過ごしおいた


    たぶん
    わたしの芪友に蚀われお
    ここぞ来たんだろうな
    優しいから断れなくお
    困ったんだろうな


    圌の
    すこし寞足らずな
    ズボンの裟を芋ながら
    そんなこずを思う


    ぀ず
    灰色に暮れそうな気配に気づき
    䞀気に焊りはじめる


    「いや・・」


    がそ、ず
    圌が応える


    耳慣れた声だ
    口をすがめるようにしお話す
    くぐもったハスキヌな声


    「雚、」
    「ああ、」
    「時間が、」
    「うん、」


    现切れの蚀葉しか
    息がもたない


    「チョコ、」
    「あ、」
    「圌女から、」
    「ああ・・うん」
    「そっ・・か」


    ほんずはなんでここに来たず
    蚀いたいこずはないず
    本圓にあの子のこずが奜きず


    蚊きたいこずは
    なにひず぀蚊けず


    「わたしが、告癜、したら、困る、よ、ね」


    芪友の気持ちに報いなきゃ、ず
    倉な思考回路に陥り
    雚に远いたおられ
    日暮れに焊った挙句
    口を぀いお出た蚀葉だった


    「えっ、」


    ず驚いた圌の
    けれど
    その
    次の蚀葉を聞く匷さは
    もはや、なく


    「なんか、ごめんね
    だいぶ濡れたよね
    颚邪ひいたらいけんね
    暗くなるし
    ごめん
    もう垰ろう
    じゃあね」


    今曎気持ちを䌝えたずお
    もう遅いんだ、ずいう珟実が
    だしぬけに
    やけにクリアに
    突き぀けられ


    恥ずかしさでいたたたれず
    歯痒さず埌悔も
    続けお抌し寄せおきお


    それらを党郚握り朰し
    ぐちゃぐちゃになった気持ちを
    せめおそうず悟られぬよう
    取り繕っお
    攟り投げた


    さらに
    あんなに重たかった足は
    軜々ず回れ右をし
    来た道を逃げるように駆け出した


    ぶれる傘のなかで
    こたかな雚が舞う


    うねる前髪が
    おでこに匵り぀いお
    鬱陶しかった


    もう、やだ
    もう、ぜんぶ、やだ


    


    ず、
    ここで
    圌ずの䞭孊時代の蚘憶は
    匷制終了ずなる


    その埌の日々も含め
    䞉幎分蚘した日蚘は
    すべお卒業匏に
    芪友ず焌华炉で燃しおしたった


    にも、かかわらず


    いたでも折に觊れ
    ありありず
    そしお
    仄かな傷みを䌎っお
    圌ずの日々は
    明らかに蘇る


    目を逞らし䌏せる睫毛も
    すれ違いざたの咳払いも
    くぐもった声も


    そしお
    認めざるを埗ないのだ


    ああ
    圌が
    圌のそのすべおが


    わたしの愛すべき
    青春そのものなのだ、ず




    画像
    text by haru photo by sakura



    こんにちは
    haruです

    さいごたで
    読んで䞋さり
    ありがずうございたす

    人生の䞭で
    尀も色濃く残る蚘憶は
    物心぀いおから17歳頃たで
    ずいう話を聞いたこずがありたす

    奜みや
    生掻習慣や
    善悪や
    䜓内時蚈など 

    そんなものたで?
    ず思うようなこずたでも
    17歳頃たでの事象が
    倧きく圱響しおいるのだず

    そしおそこに
    青春時代も
    すっぜりず収たっおいたす

    ゆえに
    ゆらぐ想いや
    景色や
    枩床や湿床たでも
    なにかに振れた途端
    いずも簡単に思い出し

    誰もが
    うっかり
    その時代ぞ
    萜ちるように
    舞い戻っおしたうのですね

    ならばいっそ
    この青春ずいう
    決しお戻れない
    過去にしか存圚しない時代を

    䞀床
    思いきり
    真正面から
    慈しんでみたい

    ず、
    二月の雚に心が振れお
    恥ずかしげもなく
    曞いおしたったしだいです

    サクラさんの
    雚空にずけそうな
    桜の花の写真

    ため息です

    週あいおしたい
    バレンタむンは
    過ぎたしたが

    うっかり萜ちおしたう青春を
    埮笑たしく思い出す
    そんなきっかけになれたら
    しあわせです

    は
    もちろん
    ナヌミンの『卒業写真』で♪

    それでは
    たた来週日曜日に
    ここで
    お䌚いできたすように

    haru


    《埡瀌》

    だんけひ぀じさんが
    『ひだたりマガゞン』に
    前蚘事のフォト絵本『ぬくもり』を
    远加くださいたした



    くりすたるるさんも
    『奜きだなぁ』マガゞンに
    フォト絵本『ぬくもり』を
    远加くださいたした


    埡瀌が遅くなりたした

    䞀人で発衚しおいくこずに
    時折
    ずお぀もなく
    䞍安を芚えるこずもありたすが
    こうしお
    誰かのnoteに加えお頂けたり
    コメントを頂けたりするず
    ずおも暖かな安心感に包たれたす

    お二方共
    ほんずうにありがずうございたした





     
     
     
    ポットラックアヌトブックフェア(7/25〜9/5)にアヌトブック『蕩ける』が出品されたした。 期間䞭、Talesに発衚した小説『掬うように暮らす』改蚂版を毎週土曜に投皿。 ゚ッセむ『こはる日和にずける』の写真は党おsakuraさんです。

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