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私の旅は、遠ければ遠いほど良いねんな。

    1年ぶりに一人旅をした。

    一人旅は、大学生の頃から始めて、コロナを除けば半年に1回ほどのペースで続けていたのだが、昨年3月に北海道へ行って以来、辞めていた。北海道が一人で行ったことのない最後の都道府県で、制覇すると熱が冷めてしまったのだ。行きたい場所はたくさんあるが、行動に移すことができなかった。

    そんな私が1年ぶりに一人旅をするきっかけになったのが、JR西日本の広報誌「西Navi」だった。そこに「6月はライチョウを見る絶好のタイミング」と書かれているのを見て、重い心がギギギと動いた。「ライチョウを見てみたい!」と思い立つと、居ても立っても居られなくなった。嫁さんに一緒に行くか聞くと「行くのが大変そうなのでパス」とのことだったので、一人で行くことにした。

    ライチョウは、日本アルプスの高山地帯に生息する、特別天然記念物および絶滅危惧種である。天敵から身を守るため、夏は地面と同じ焦茶色になり、冬は雪と同じまっしろになる。長野、富山、岐阜の県鳥に選ばれており、地域から愛されている鳥である。

    ただ、ライチョウを見に行くのは少し難儀だ。

    先に言った通り、ライチョウがいるのは日本アルプスの2000m級の高山地帯。私の住んでいる大阪から行く場合、電車、ロープウェイ、バスを乗り継ぎ、片道5回の乗り換えで、時間にして7時間程度かかる。座っているだけだとはいえ、体力的にキツい。

    当日、朝の4時半に起きて始発で出発し、ライチョウのいる日本アルプスに着いたのは13時だった。気温は、30度越えの地上とはガラリと変わり、10度前後。日差し以外は冬そのものである日本アルプスは、もはや別世界だった。

    私の旅行の満足度を上げる要因の一つに「遠さ」がある。

    遠さには「物理的な遠さ」と「時間的な遠さ」があるが、どちらでも良いので遠い方が満足度が増すことが、今までの旅行で判明している。同じような都会の景色であっても、大阪より東京の方が、東京よりオーストラリアの方が、降り立ってその景色を見た時に、心が晴れやかな気持ちになる。また、同じ場所に行くにも、電車よりも自転車で行く方が達成感があり、同じ景色に見えないほど輝いて見えるのだ。

    きっと、頑張れば頑張るほど、それにより得られたものに価値を見出してしまうタチなのだろう。思い詰めていたり、モヤモヤしている時には、とりあえず遠い場所に行けばスッキリするのだから、私の性格が単純で良かったなと思う。

    今回も、遠くまで来たこともあってか、ライチョウのいる「室堂」という場所に着いた時は、心からワクワクが溢れるのを感じた。

    まだ残る真っ白な雪、日本で唯一氷河として認められている立山の山肌、地上とは全く違う植生など、目に映るもの全てが新鮮だった。室堂の景勝地である「みくりが池」という池は、一部がまだ分厚い氷で覆われていて、氷の隙間から透き通る青色の水が見えた。もう6月なのに、こんな景色が見えると思わず、感動した。

    そして、みくりが池のほとりに、ライチョウがいた。

    鳩くらいの大きさで、目の上まぶたが赤く、頭からお腹半分くらいまでは焦茶色になっているが、お腹の下の方は冬の白い毛が残っていた。ライチョウのことをちゃんと調べていかなくても「こいつやん!」わかるくらい特徴的だった。事前の調べで、ライチョウは天敵を恐れて、朝か夕方に活動すると聞いていたが、昼間でも見られたことがラッキーだった。

    ライチョウを見た後、みくりが池を一周し、室堂を後にした。7時間かけて来た場所の滞在時間は45分。心が晴れて目的が達成されたら思い残すことは何もない。私の一人旅らしいスケジュールだった。

    1年ぶりの一人旅。

    最後の旅行から時間が空いていたからこそ、旅行が自分の栄養になることを再確認できた。頻繁に行くとマンネリ化するだろうが、半年や1年空けると、日常の刺激になって良いのかもしれない。それも、遠ければ遠いほど。

    余談だが、ライチョウを見た後に入った居酒屋さんで聞いたところによると、室堂に行けばライチョウはだいたい見られるものらしい。そうなんや、というか、言うてほしくなかったな、というか。オチも含めて素敵な旅行だった。

     
     

    まる

     
     
    京都が大好きな大阪在住のアラサー男。趣味は一人旅。くすっと笑ってほしい。

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