絵本になる前の物語 「ラブとママ」〜看板犬から働くママへのエール〜
これは、まだ絵本になる前の“ことば”たち
復職を控えた私が、“まだ絵本になっていないことば”を綴りました
ラーメン屋の看板犬ラブが見つめるのは、ひとりのママの毎日
育児、仕事、自分のことなんて後回し___
そんなママがふと見せる笑顔に、ラブは何を感じたのか
『 ラブ と ママ 』

俺の名前はラブ
ラーメン一番、大将に飼われてる看板犬だ
最近、気になる人がいる
いつも、女の子を抱っこして、うちの店の前を通る
女の子はその人を『ママ』と呼んでいた
来る日も来る日も
ママは女の子を抱っこしている
もう大きく抱っこ紐からはみ出た足
重たそうだな
よく他の赤ちゃんが乗ってる車みたいなやつ
あっちの方がずっと楽そうなのになぁ
俺は首をかしげた
大将が久しぶりにドックランに連れて行ってくれた
俺がうれしくて走り回っていると
大きな泣き声が聞こえた
ママと女の子だ
芝生に頭をこすりつけて女の子が泣いている
ママはどうしていいのかわかないという顔で、一緒に 静かに 泣いていた
俺はやりきれない気持ちでその場を後にした
春。桜が咲く頃、大将と散歩の帰り道
ママがひとり心配そうに門の中をのぞきこんでいた
門の向こうで、女の子が泣き叫んでいる
ママも泣きそうな顔で小さく手を振って、
涙いっぱいの顔を見られまいと素早く背中を向けて歩き出した
なんだかとても辛そうだった
その次の日
ママがひとりで店に来た
「醤油ラーメンひとつ…」
ママは迷わずラーメンを注文した
大将のラーメンは確かにうまい
でもそのときのママの顔は
この世でいちばんの“ご馳走”を味わってるみたいだった
その美味しそうなママの笑顔が見れてほっとした
ある雨の日
遠くに走っていくママの姿が見えた
「はい、もうすぐ迎えに行きます」
って誰かと話をしている
そんなに急いで、どこに行くんだろう…
気づいたら足が勝手に走り出してた
俺は店をぬけてママを追いかけた
ママが向かったのは、この前女の子がいた場所だ
女の子は風邪を引いて熱を出したらしい
ぐったりとした様子で
ママから1ミリも離れようとしない女の子
「だっこー、だっこー」
とママに泣いて訴える
ああ、そうか
ママがいつも抱っこしていたのは、こういうことだったのか
俺は納得した
家に着くと女の子は少し落ち着いた様子で
ごはんを食べていた
楽しそうにテーブルの色んなところを触る女の子
ママは、服についたご飯粒をぬぐいながら
やっと女の子にごはんを食べさせると
自分は冷め切ったごはんをかきこむように食べた
そうだったのか、
座ってゆっくり食べるラーメンは
ラーメンだけじゃなくてあの〝時間〟が格別だったんだな
俺はまた、納得した
それから俺は、大将にしかられて
しばらく散歩に連れていってもらえなかった
勝手に店を抜け出したことがバレたらしい
店の入り口で
ぼーっとあのママのことを考える
ずっと重たい女の子を抱っこして
どうしようもないくらいに泣き叫ばれて
ゆっくりご飯も食べられない
俺はなんだかあのママが
かわいそうになった
ようやく散歩が解禁された日
また、あのママがいた
女の子はもう、しっかり歩いていて、
ママと手を繋いでいた
歩きながら
鳩とか鯉なんかをみつけては
楽しそうにキャッキャッと笑っている
鳩とか鯉とか
なにがそんなに面白いんだか・・と思っていると
ふとママが女の子を抱きしめて
〝ぎゅーーーーー〟っとした
そのときの笑顔を見て俺は気づいたんだ
そうか
女の子と一緒に笑っている時間が
この人にとって
なによりもしあわせなんだと
ずっと“ママ”って呼んでたこの人は、
—— “お母さん”だったんだな
お母さんの顔は
とても美しくキラキラ輝いていた

これは明日育休から明ける自分自身の今の気持ちのようなものですが、
絵本になる前のこのストーリーがみなさんに届いたらいいなと思い、noteに残しました
働くママたちへ、そしてかつてそうだったあなたへ
この物語が、小さなエールになりますように
またnoteでお会いしましょう☺︎
ai to u
