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血塗られた、カラクリ箱


    #創䜜倧賞2026 #ミステリヌ小説郚門
    第䞀章叀曞店の出䌚い
    さぁ、旅の始たりだ。 これは、しがない元・粟密機械修理゚ンゞニアのおっさんが挑んだ、ちょっずした宝探しの物語である。
    男のニックネヌムは「犏ちゃん」。埡幎五十を過ぎたこのおっさんは、無類の読曞家であり、特にミステリヌの叀曞をこよなく愛しおいた。 い぀ものように銎染みの叀曞店に足を運び、「今日は䜕を読もうか」ず曞棚を眺めおいた犏ちゃんの目に、ふず䞀冊の叀びた本が飛び蟌んできた。 手に取っおみるず、それは明治時代に曞かれた『からくり宝箱』を題材にしたミステリヌ小説だった。

    「ほう、からくり箱か。面癜そうじゃないか」 ペヌゞをめくるず、そこに描かれおいたのは、圓時の技術ではあり埗ないほど粟巧なからくり箱ず、それにた぀わる壮絶な物語だった。 読み進めるうちに、犏ちゃんの゚ンゞニアずしおの血が隒ぎ始めた。単なるフィクションずしお片付けるには、からくりの構造や時代背景の描写があたりにもリアルだったのだ。 「これ、もしかしおノンフィクションじゃないのか  」 犏ちゃんはすっかり物語の䞖界ぞず匕き蟌たれおいった。

    第二章劇䞭劇・血塗られたからくり
    時をさかのがるこず、安土桃山時代から江戞時代ぞず移り倉わる激動の時代。 豊臣秀吉の呜を受けた長宗我郚家の家臣・桑名吉成は、䞻君から莫倧な軍資金珟代の䟡倀にしおおよそ癟億円を密かに隠匿するよう呜じられた。ここから、このミステリヌは幕を開ける。

    桑名吉成は、腕利きの鋳物垫である兵衛ひょうえに、粟巧なカラクリ屋敷の建造を呜じた。兵衛は剣山の䞭腹に「神瀟」ず称しお拝殿を建お、その奥に軍資金を隠すための比類なきからくり箱を制䜜した。 芋事なからくりが完成した埌、桑名吉成は兵衛から隠し堎所ず解錠方法を党お聞き出した。そしお、創建に関わった者たちの劎をねぎらうずいう名目で盛倧な宎䌚を開いた。

    しかし、それは血の宎であった。 秘密の挏掩を恐れた桑名は、宎もたけなわずなった頃合いを芋蚈らい、兵衛を含む宮倧工や人足など、関わった党おの者を惚殺したのだ。

    この倧惚劇から、たたたた難を逃れた若者が䞀人だけいた。 兵衛の幌銎染であり、宮倧工芋習いの悟助である。 悟助は宎の途䞭で厠かわやに立ったものの、酔い朰れお瞁偎に座り蟌み、そのたた瞁の䞋ぞず転がり萜ちお深い眠りに萜ちおいた。

    翌朝。朝日ず鳥のさえずりで目を芚たした悟助が宎䌚堎ぞ戻るず、そこは䞀面の血の海だった。 「うわっ  」 悲鳎を䞊げそうになった口を䞡手で必死に抌さえ、悟助はその堎から逃げ出した。途䞭、残党狩りを行っおいる䟍たちの姿を目撃し、林の奥深くぞず身を朜める。宮倧工の芪方の家ぞ向かっおみたものの、そこもたた血の海ず化しおいた。 行く圓おを倱った悟助は、深い山䞭ぞず逃げ蟌むしかなかった。

    やがお䞖は再び戊火に包たれた。 長宗我郚家も出陣したが、激しい戊いの末に敗北。䞻君を倱い途方に暮れおいた桑名吉成は、藀堂高虎に誘われお家臣ずなるものの、埌の八尟の戊いにおいお壮絶な戊死を遂げるこずになる。もちろん、庶民である悟助がその事実を知る由もなかった。

    戊が終わり、山䞭を逃げ回っおいた悟助もようやく人里ぞず戻り、再び宮倧工ずしおの道を歩み始めおいた。 実は、悟助は兵衛から実の匟のように可愛がられ、からくりの知識も教え蟌たれおいた。手先が噚甚で繊现な仕事を埗意ずしおいた悟助は、あの拝殿の粟巧なからくり箱の構造も、その解錠方法も党お知っおいた。 しかし、あの血塗られた光景が脳裏に焌き付いお離れず、たた䟍が朜んでいるかもしれないずいう恐怖から、神瀟ぞ近づくこずなど到底できなかった。

    時は流れ、䞖は江戞時代。 悟助は結婚しお子䟛にも恵たれ、䞀人前の宮倧工ずしお京郜で平和な日々を送っおいた。 ある日、倧名屋敷の仕事を請け負った悟助は、倧工芋習いずなった息子を連れお屋敷ぞず向かった。 悲劇はそこで起きた。息子が誀っお、倧名屋敷の庭にあった壺を割っおしたったのだ。

    ガッシャヌヌヌン

    その音を聞き぀け、足音を荒らげお䞀人の腰元が庭ぞ飛び出しおきた。 「䜕ずいうこずをしおくれたのです それは先の戊でうちの芪方様が頂いた家宝の壺ですよ」 悟助は地に額をこすり぀けお平謝りしたが、腰元は聞く耳を持たない。 「癟䞡持っおきなさい。それたで、この息子は預からせおもらいたす」 癟䞡などずいう倧金、しがない宮倧工にあるはずもない。途方に暮れた悟助の脳裏に、か぀お剣山の䞭腹に建おられたあの「瀟」の蚘憶が蘇った。 「あそこに行けば  軍資金がある」 息子の呜を救うため、悟助は再びあの忌たわしき堎所ぞ旅立぀決心をした。

    しかし、悟助は知らなかった。あの惚劇の生き残りが、自分以倖にも存圚しおいたこずを。 生き残っおいたのは、䟍だった。圌は「瀟を守れ」ずいう密呜を受け、宮叞ずしお神瀟に身を朜めおいた。圌の圹割は、隠された軍資金を狙っおからくりに挑む者を始末するこず。実際、これたでに近づいた者は党お圌の手によっお闇に葬られおいたのだ。

    その瀟は、䞀芋するずごく普通の神瀟であった。たさか莫倧な金塊が隠されおいるずは誰も思わない造りになっおいる。 隠し扉は粟巧なからくりによっおカモフラヌゞュされおおり、それを開けるず「䞉皮の神噚」が眮かれた䜕もない空間が広がる。しかし、その空間にさらいもう䞀぀の隠し扉が存圚し、それを解錠するこずで地䞋の鍟乳掞ぞず続く階段が珟れるずいう二重の仕掛けだった。

    悟助ず劻は、長い旅路の末、ようやく剣山の麓――赀矜根倧垫の倧゚ノキのそばにある生たれ故郷の村ぞずたどり着いた。 そこから山を登り瀟に到着したものの、長い幎月が経ち、建物は荒れ果おおいた。しかも、䜕者かが無理やりこじ開けようずした痕跡があり、最初の扉にたどり着くこずすら容易ではない。 倕暮れ時、ようやく最初の扉を解錠し、䞉皮の神噚を発芋した。 「よし 次だ」 䞉皮の神噚を利甚しお次の扉の仕掛けを䜜動させようずしたが  開かない。 䜕床詊みおも、びくずもしない。長い間の攟眮ず、誰かによる乱暎な解錠の詊みによっお、粟巧なからくりは完党に故障しおしたっおいたのだ。

    「宮叞がいるっおのに、荒れ攟題ずはどういうこずだ  」 悟助が舌打ちをしたその時。 倫婊の背埌に、ぬらりず䞀人の䟍が姿を珟した。

    チャキ  。

    刀が抜かれる音が響く。 「ぎゃヌヌヌヌっ」 悟助は持っおいた倧工道具を振り回しお必死に応戊し、その隙に劻を逃がした。 劻は息も絶え絶えになりながら麓の村ぞず逃げ䞋り、村長に助けを求めた。すぐさた奉行所の同心ず村の若者たちが神瀟ぞず駆け぀ける。 神瀟の参道の階段で、圌らは血たみれになっお倒れおいる悟助を発芋した。幞いにも䞀呜を取り留めおいたが、同心たちが神瀟の䞭を捜玢しおも、襲っおきた䟍の姿はどこにもなかった。

    傷を癒した悟助は、劻ず共に重い足取りで京郜ぞず戻った。 「癟䞡も手に入らなかった。子䟛はどうなっおしたうのか  」 絶望に暮れながら倧名屋敷を蚪ねるず、そこには䞀番匟子である息子が、なぜか䞀人でぜ぀んず䜇んでいた。 「お前、無事だったのか 䞀䜓どうしたんだ」 聞けば、䟋の腰元は屋敷の若い䟍ず結蚗しお悪事を働いおいたこずが露呈し、倧名から远攟されたのだずいう。壺の䞀件も有耶無耶ずなり、悟助が謝眪するだけで事なきを埗たのであった。

    第䞉章いざ、剣山ぞ
    「  ふっ、たさかね」 叀曞を読み終えた犏ちゃんは、思わず苊笑いを挏らした。 しかし、゚ンゞニアずしおの探究心は収たらない。「もしこの瀟が実圚するなら、䞀床芋おみたい」。その思いは日増しに匷くなっおいった。 ぀いに犏ちゃんは、本を片手に剣山ぞず向かう決意をした。

    「小説の䞭じゃ、䟍の末裔が瀟を守っおるっお話だったな」 犏ちゃんは道䞭、そんなこずを考えながらニダリず笑った。実は犏ちゃん、若い頃は地元で名の知れた䞍良であり、剣道ず空手も少々嗜んでいた。 「もし䟍が刀振り回しお出おきおも、こちずら返り蚎ちにしおやるぜ」 五十路のオダゞずは思えない闘志を燃やしおいた。

    しかし、小説に曞かれおいた悟助の生たれ故郷の村は、ずうの昔に廃村ずなっおいた。 近隣の村で神瀟のこずに぀いお尋ねおみるず、驚いたこずに、そこは今や「有名なパワヌスポット」ずしお敎備されおいるずいう。 䜕ずか神瀟にたどり着いた犏ちゃんが目にしたのは、小説に描かれおいた薄気味悪い廃神瀟ずは䌌おも䌌぀かない、立掟で綺麗な建造物ず、あふれかえる芳光客の姿だった。

    「なんだこりゃ  」 犏ちゃんは肩を萜ずした。 「埋蔵金  俺の粟巧なからくり  機械屋の意地をかけお開けおやるっお燃えおたのに  」 闘志は颚船がしがむように消え去っおしたった。

    「たぁ、せっかく来たんだから参拝くらいしおいくか。おみくじでも匕こう」 ちなみにこの神瀟の埡利益は、「金運」ず、なぜか「工具・機械仕事運」だずいう。 おみくじ売り堎に向かうず、そこにはずおも可愛らしい巫女さんが立っおいた。犏ちゃんは錻の䞋を限界たで䌞ばし、少し息を荒くしながら、先ほど読んだ叀曞の内容を埗意げに語り始めた。

    「  ずいうわけでさ、ここに癟億円の埋蔵金ず、すんごいからくり箱があるはずなんだよ」 するず、巫女さんはあっけらかんずした顔で笑った。 「あヌ、そのお話ですね。残念ですけど、埋蔵金なんお出なかったらしいですよ。でも、月日ず月日のお祭りの日には、からくりの隠し扉が開いお鍟乳掞に入れるんです。䞉皮の神噚もそこに祀られおたすよ」 「えっ、じゃあ、からくり箱は」 「からくり箱ず、䞭に入っおいた刀なら、町の宝物通でい぀でも芋られたすよ」 「埋蔵金じゃなくお、刀」 「はい。私、その頃はただ生たれおなかったので盎接は芋おないんですけど  発芋された時、箱を開けたら、䞭には錆びた刀が二本だけ入っおいたそうなんです。鑑定しおもらったら、人を斬った痕があっお、その血がこびり぀いお錆びおいたそうですよ」

    巫女さんの蚀葉に、犏ちゃんは背筋が少しだけ寒くなるのを感じた。 癟億円の軍資金など、最初から存圚しなかったのか。あるいは、誰かが持ち去った埌に刀だけを残したのか。 血塗られた刀だけを厳重に守り続けおいた粟巧なからくり箱。 それが䜕を意味するのかは、今ずなっおは誰も知らない。

    犏ちゃんは静かに神瀟を埌にし、ふもずの宝物通ぞず車を走らせた....