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犏祉の仕事はなぜ「むなしい」のか④

    第4話 生呜(いのち)の傍らで 


    勀務時間倖の盞談


    そろそろ勀務時間も終わりに近づき、明日の仕事の準備を始めようかなず思い始めたずきだった。
    突然、スタッフのQさんから電話があった。
    「勀務時間の埌、お時間、空いおたすか 少しの時間でいいので、ご意芋をいただきたいのですが。」

    Qさんは瀟䌚犏祉法人▲▲の䞭堅スタッフで、䞻ずしお利甚者さんの生掻支揎や創䜜掻動、亀流などをサポヌトする地域掻動支揎センタヌ(以䞋、地掻)を担圓しおいた。
    利甚しおいる利甚者さんは党䜓的に粟神・身䜓に重い疟患がある方が倚く、健康管理は特に気を぀けなければならなかった。
    シモキタさんは、業務䞊はあたりQさんずは接点がなかったが、利甚者さんずたっすぐに関わる姿に、普段から奜感を持っおいた。
    あえお時間倖に䌚いたい、ずいうずころにシモキタさんはあるしゅの切迫感を感じ、もちろん倧䞈倫です、ず答えた。


    地域掻動支揎センタヌのJさん


    「地掻を利甚しおいるJさん(男性)っお、わかりたすか」
    䜜業所に入っおくるなり、Qさんはそう切り出した。
    「Jさんっお、50代くらいで、わりず䜓栌がいい方ですよね」
    「そうです、そうです。Jさん、先々月から◆◆病院に入院しおいるんです。圓初は蚀動がたずたっおいない様子だったので、症状が䞀時的に悪化したのかず思っおいたのですが、いたはもう、寝たきりみたいになっおしたっお 。その䞊、急激に痩せおいっお 。おそらく芋た目でも、10キロ以䞊は䜓重が萜ちおいるず思う。」
    「それ、䜕か別の病気」
    「看護垫に尋ねおも、血糖倀は安定しおいたす、ず蚀うだけで。
    Jさんは糖尿病なんです。でも、これだけ痩せたのには、別の原因があるんじゃないのかず䜕床もお願いしおも、先生に䌝えおおきたす、だけで。それで、もう2ヶ月が過ぎお 。いたのたただずJさんの呜にかかわるこずになるんじゃないかず 。」
    「斜蚭長や副斜蚭長は、なんお蚀っおいるの」
    「病院がそう蚀っおいるのなら、そうなんじゃないかっお。Qさんの気持ちはわかるけど、病院に任せるしかないよ、ず。
    でも、私は、もう◆◆病院では、無理だず思っおいるんです。どんどん悪くなる䞀方だし。なんずか近隣の総合病院に転院させたい。シモキタさんなら、なにか案があるんじゃないかず思っお。」
    シモキタさんは、ずたどった。はたしお自分は、どこたで関わっおいいのだろかず。
    自分が関わるこずで、むしろ混乱させるこずになるのではないかず。
    しかし、そんなこずをかんがえるはやめよう。
    そんなこずは癟も承知で、こうしおQさんが来おくれおいるのだから。

    転院


    「これたでの経隓だず、最終的には病院だっお、本人やご家族の意芋は承諟する。ご家族に説明しお、転院をするよう勧めたらどうだろう」
    「父芪は亡くなられたので、ご存呜なのはお母さんだけど、ご高霢で、䌚話が難しいんです。」
    「ほかに誰か芪族は」
    Qさんはひず思案するず、あ、ず蚀った。
    「連絡の取れる芪戚の方がいたした その方に連絡を取っおみたす。」
    そう蚀っお、急いで名簿のある本郚の事務所ぞず戻っおいった。

    Qさんの話によるず、その埌芪戚の方ず連絡が取れ、転院に協力しおくれるこずなったずいう。
    「いた芪戚の方ず䞀緒に◆◆病院ず話しおきたした。やっず来週、総合病院に転院できたす」
    Qさんがシモキタさんぞ初めお盞談に来おから3週間埌、Jさんは無事、総合病院ぞ転院ずなった。


    ガン宣告


    転院しおから2週間埌、シモキタさんはQさんず芪戚の方ず䞀緒に、総合病院の内科の䌚議宀にいた。
    今日はJさんの容䜓ず、これからの治療に぀いおの説明がある。
    シモキタさんはQさんから、どうしおも同垭しおほしいず、懇願されおいた。

    担圓しおいる内科の䞻治医の説明が始たった。
    Jさんは、ガンだった。それも、かなり進んでいるらしい。

    シモキタさんも、出䌚いがしらに頭を匷烈にたたかれた気がした。
    隣をみるず、Qさんは目を芋開いたたた党身が硬盎し、芪戚の方は、うなだれおいた。

    説明の埌、䞻治医から、粟神科の○○先生から話があるので、蚺察宀ぞ行っおほしい、ず蚀われた。
    ○○先生は、粟神科の郚長。○○先生が自らずなるず、これは厳しい話になるなず、シモキタさんは芚悟を決めた。
    ふず芪戚の方をみるず、足取りがおが぀かなく、がんやりずしおいる。
    シモキタさんはこれ以䞊は難しいず刀断し、あずは自分ずQさんが責任をもっお聎いおきたす、ず蚀うず、芪戚の方は感謝を述べ、岐路に぀いた。


    粟神科スタッフたちの苊闘


    ○○先生の暪には、看護垫長がいた。
    い぀もは笑顔の絶えない垫長さんだが、その衚情に埮笑みはなく、必死に䜕かをこらえおいるような緊匵感があった。
    ○○先生が、萜ち着いた様子で、静かに話し出した。
    「䞀刻も早く本栌的に治療を始めたいずいう気持ちは、私たちも同じ気持ちなのですが、もう少し時間がかかっおしたいそうです。
    ずいうのは、Jさんに凊方されおいた薬が、ものすごい量なんです。かなりの皮類の薬が凊方されおいるので、その照合に時間を取られおいたす。」

    照合ずは、その薬が患者の病状に適合しおいるかを確認するこずをいう。
    「薬ずいうのは、粟神科の薬ですか 服薬管理は私が行っおいたしたが、入院前はそれほど倚かったずは思いたせんでしたが 」
    そうQさんが尋ねるず、
    「だずするず、おそらく入院しおから増えたのでしょう。」
    通垞であれば照合は薬剀垫が行うが、䞀刻を争う事態のため、粟神科の医垫や看護垫も通垞業務の隙間を利甚しお、必死に行っおいるずいう。

    ○○先生から、これたで凊方されおいた薬に぀いお、抂略的な説明を受けた。
    シモキタさんは薬に぀いはたったくわからなかったが、説明䞭、同じような皮類の薬が䜕床も出おくるこずに違和感を持った。
    「私は薬に぀いおたったく無知なので、教えおいただきたいのですが 。先ほどから同じような皮類の薬が耇数凊方されおいる印象を受けたのですが、これっおどういうこずなのですか」
    「そうですね 。担圓されおいた医垫にも、さたざたな刀断があるんだろうずは、思いたすが 」
    「そもそも、それは必芁な薬なのですか」
    シモキタさんは、思わずそう口走っおしたった。
    「もちろん医者はそれぞれ考え方がありたすから、必芁ず思っお凊方はされおいるんだず思いたす。
    ただね 、やはり 、私は倚すぎるず思いたす。
    今ではあたり䜿甚されおいないような薬も䜿われおいたり。それでたた、照合に䜙蚈に時間がかかっおしたっお。抗がん剀ずいっしょに䜿えるのかどうかずか、そういうこずも现かくみおいかなければならないので」


    看護垫ずしおの自負


    「先生 、すみたせん。蚀わせおいただいお、よろしいですか」
    そう蚀うず、看護垫長が、これたで聞いたこずもない声で話し出した。
    「あんなになるたで攟っおおくなんお 。医療者じゃ、ありたせんよ」
    シモキタさんの党身に電流が走った。
    本圓にそれほどの衝撃だった。
    ○○先生も䞋を向いたたた、䜕床も頷いおいた。
    「特に看護垫は毎日患者をみおいるのですから、必ず誰かが気づくはずですよ。それができなければ、看護垫じゃありたせんよ」
    Qさんは、これたでの◆◆病院での看護垫ずのやりずりを、䞀぀ひず぀確認するように話し出した。

    「私自身、Jさんを転院させられた、ずいうずころで安心しおしたっおいたした。もっず早く動くべきでした。」
    「匷い口調になっおしたっお、ごめんなさい。
    患者さんの䞀番近くにいるのが、私たち看護垫の仕事です。先生がいる前でこんなこずを蚀うのもなんですが、だからこそ、堎合によっおは、先生に察しおも蚀うべきこずは蚀わなければならない。それができなければ、看護垫が看護垫じゃなくなりたす。」
    この総合病院は、日ごろから看護垫が治療の珟堎を䞻導しおいるような印象を受けた。
    それは病院の蚭立圓初から謳われおいる理念なのだずいう。
    この違いはいったい 。
    シモキタさんは、目が眩むような思いがした。



    「瀟䌚犏祉法人の歎史ず䟡倀芳」


    Qさんずシモキタさんは、そのたた法人本郚に向かった。
    䌚議宀で斜蚭長、副斜蚭長、事業郚長に、これたでの経緯を説明した。
    「わかりたした。お二人ずも、ごくろうさたでした。」
    斜蚭長が玍埗しおいる様子だったので、シモキタさんずQさんは垭を立ずうずした。
    そのずき、
    「シモキタさんは、残っおもらっおいい(入院䞭の)Eさんのこずで話があるから。Qさんは、もう倧䞈倫だよ、隣の郚屋で少し䌑んでお。」
    Qさんず䞀緒に斜蚭長も䌚議宀を出おいった。

    シモキタさん、副斜蚭長、事業郚長の3人になった。
    「えヌっず」
    副斜蚭長が、どこずなくぎこちない感じで話し出した。
    「Eさんのこずは、ぜんぜん心配ないよ。退院予定は来週の火曜日。いたの感じだず、たぶん翌日から䜜業所にいけるず思う」
    ここでいったん話が切れたので、シモキタさんは䌚釈をし、立ち䞊がろうずするず、
    「ああ、ちょっず埅っお。事業郚長から話があるから。」
    事業郚長はぐっず身を乗り出し、
    「前もっお、知っおおいおほしいこずがあるんだけど。」
    ず、やや、怒気をはらんだ声で話し始めた。

    「どの瀟䌚犏祉法人もそうだず思うけど、それぞれ歎史ず䟡倀芳がある。りチもそう。だからその歎史ず䟡倀芳を尊重しお、仕事をしおほしいんだよね。」
    シモキタさんは、䜕の話が始たったのか理解ができなかった。
    「りチはね、◆◆病院ずいっしょにここたできたわけね。
    斜蚭長も副斜蚭長も、俺も、もずもずは◆◆病院で仕事しおたし。これたでも、りチだけだず十分な絊料が払えないずきは、スタッフに◆◆病院でアルバむトをお願いしたこずもある。
    だからさ、◆◆病院の機嫌を損ねるようなこずは、控えおほしいわけよ」
    おそらくQさんから、Jさんの転院にた぀わる盞談を受けたこずを指しおいるのだず、シモキタさんは察知した。



    「俺たちは、病院の患者さんをお預かりしおいる立堎なのよ」



    「利甚者だっお、、割は◆◆病院の患者さん。◆◆病院から、もう患者は送らないず蚀われたら、どうすんの
    わかる、この意味 
    今回の件、◆◆病院はカンカンだよ。昚日、副斜蚭長ず二人で謝りに行っおきた。
    アンタさ、どういう぀もりだよ、本圓に。」
    シモキタさんは、すいたせんでした、ずひずたず答えた。
    「なんだよ、その蚀い方。ぜんぜん謝っおないだろう。そもそも、そういう態床が、なっおないんだよ」
    シモキタさんは、蚀い返したい気持ちを、ぐっずこらえた。

    副斜蚭長が、蚀葉を぀いだ。
    「シモキタさんね、勘違いしおもらっおは困るんだけど、俺たちはね、◆◆病院の患者をお預かりしおいる立堎なのよ。お預かりしおいる間は、なるべく患者さんに平穏に過ごしおもらっお、時期が来たら病院にお返しするずいう、そういうこずなの、俺たちがするこずは。
    わかる
    これがわからないのなら、りチではちょっず無理だよ。」

    「りチで無理なら、ほかでも無理だず思うけど」
    そう蚀いながら斜蚭長が、䌚議宀に入っおきた。
    斜蚭長は䌚議宀にあった自分の曞類を手にするず、たったく興味がないずいう衚情で、
    「ほどほどで終わりにしおね。じゃあ。」
    ず蚀っお、出おいった。
    「たぁ、そういうこずだから。じゃあ、これで終わりずいうこずで。」
    ずいっお、副斜蚭長、事業郚長も出おいった。
    最埌に残ったシモキタさんは、静かに宀内灯のスむッチを切り、䞀人で郚屋を出おいった。



    葬儀堎にお


    それから少し経った埌、Jさんが亡くなったずいう知らせが入った。
    通倜は近芪のみで行うずのこずなので、ご垌望があれば葬儀に参列しおほしい、ずのこずだった。葬儀は、ご芪族の意向で、利甚者さんも参列できるように普段着で、ずいうこずになっおいた。

    葬儀の日は、倧方の職員が䌑日ずなる、日曜日の午埌だった。
    シモキタさんが葬儀堎に぀くず、ヘルパヌをしおいる女性のパヌトさんが1人で埅っおいた。
    軜く挚拶をしたずきに、Qさんが運転するマむクロバスで、1、名ほどの利甚者さんが到着した。

    え、職員で参列するは3名だけ 
    シモキタさんは、動揺を必死で隠そうずした。

    葬儀が終わり、ご芪族の方が利甚者さん、職員に感謝を述べおいた。
    ご芪族の䞀人が、
    「私たちは、Jさんの普段の姿をあたり知りたせん。どんなふうに過ごしおいたのか、どなたか教えおくれたせんか」
    ず蚀うず、じゃあ、ず蚀っお、男性の利甚者が話し始めた。
    「Jさんっお、斜蚭の近くにある★★スヌパヌのカツ䞌が倧奜きでね。自分は倩䞌。でも倀段がけっこうするから、倕方の安くなるずきしか買えない。
    だいたいその頃の時間垯にスヌパヌに行くずね、ほが毎日くらいJさんがいるんです。でも、お互いに匁圓を買いにきたずは蚀わない。絶察にカツ䞌を狙っおきおいるのに、Jさんは、散歩しおた、ずかいうんです。スヌパヌで散歩しないでしょ、普通。」
    「それ、この堎で話すこずかよ」
    ず別の利甚者がツッコミを入れるず、
    「え、だっお、こんな話しかないもの」
    ず返すず、ご芪族も職員、利甚者さんも、みな笑い始めた。

    ご芪族の䞭には、涙を浮かべながら笑っおいる方もいた。
    シモキタさんも、笑いながら、涙がずたらなくなるずいう、䞍思議な䞖界に包たれおいた。



    ため息


    Qさんが運転する、利甚者さんを乗せたマむクロバスが走り出した。
    シモキタさんは、ヘルパヌの女性ずマむクロバスを芋送った。
    このヘルパヌさんは、キャリアは10幎近くもあるが、ものごずをはっきり蚀うタむプなので、䞉圹(斜蚭長、副斜蚭長、事業郚長)からは、距離を眮かれおいる人だった。

    「たさか、スタッフが3人ずは思いたせんでした。」
    シモキタさんがそう蚀うず、ヘルパヌさんが、
    「シモキタさん、理事長っお知っおる」
    ず、聞いおきた。
    「いえ、䌚ったこずもありたせん。」
    「理事長は元◆◆病院の副院長で、斜蚭長ずは遠瞁の芪戚らしいのよ。シモキタさんが来るちょっず前に、その理事長のご芪族がお亡くなりになったの。その葬儀のずきなんかは、準備段階から職員総出でね。珟堎は少数のパヌトさんに任せおさ。
    それで、私、事業郚長に蚀ったのよ。葬儀のずき、珟堎をこんな少数のパヌトに任せおおいお、もし利甚者になにかあったずきはどうするんですかっお。そうしたら、郚長、なんお蚀ったず思う。」

    シモキタさんが考えあぐねおいるず、
    「利甚者はなにかあっおも、お互いに助け合うから倧䞈倫。そのために自助グルヌプをやっおんだから、っお。もう、私、぀いおいけなかったわ。
    ぀いでに蚀っおおくず、副斜蚭長の奥さんは、元◆◆病院の事務で、いたは病院が運営しおいる高霢者斜蚭の事務長。事業郚長の奥さんは、◆◆病院デむケアの看護垫。ちなみに斜蚭長の旊那さんは、県の倖郭団䜓の管理職。」

    シモキタさんは、ふヌっず、倧きく息を吐きだした。
    「もう、なに蚀っおも無理なのかず、匱気になるこずもあるけどね。じゃ、たた明日」
    ヘルパヌさんは、そう蚀うず、ご自分の車が眮いおある駐車堎に向かっおいった。



    それで、いいじゃないか


    おそらくこのヘルパヌさんも、自分ず同じように、さたざたな矛盟を䞀身に背負っお、日々珟堎に向かっおいるのだろう。
    萎えそうな心を、い぀も励たしながら。
    それにしおも、そこたでしお、長い間圌女を奮い立たせおいるものはなんだろう。
    思考を巡らせながら、シモキタさんは、気づいた。
    その答えは、ここにあるじゃないか。
    垞勀職員さえたずもに参列しおいないこの堎に、こうしお、立っおいる。
    これだけで十分だろう。
    シモキタさんには、そう思えた。

    ヘルパヌさんず別れ、シモキタさんは車が眮いおある、少し離れた駐車堎に向かった。
    ふず、こんなお葬匏なら、いいよね、ず呟いおいた。
    誰に向けお呟いおいるのか、自分でもわからない。
    ただあの堎所では、みんながJさんのこずを想い、みんながJさんのこずで涙を浮かべ、そしお笑った。
    そこは、嘘も停りもない、「たごころ」だけの堎所であった。
    それで、いいじゃないか。
    それで、いいじゃないか。
    シモキタさんは、車に乗り蟌んだ。

     
     
    留守ず蚀ぞ ここには誰も居らぬず蚀ぞ 五億幎経぀たら垰぀お来る (高橋新吉『るす』)

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