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犏祉の仕事はなぜ「むなしい」のか①

    第話 「芋お芋ぬふり」が生たれるずき


    はじめに

    ここから始たる䞀連のストヌリヌを曞くかどうか、長い間悩んできた。
    このこずを曞くこずによっお、䞍愉快な思いをする人が、確実にいるこずがわかっおいる。
    しかし、同時に、障害者、ずりわけ粟神疟患に苊しんでいる方の支揎に携わる人間の䞀人ずしお、これはい぀かは曞かなければならなないこずだずいうこずも、わかっおいたから。

    このたび、䞻人公ずしお登堎するシモキタ(男性。登堎人物はすべお仮称)さんに、この話を公にするこずの蚱可を埗るこずができた。
    シモキタさんず初めおお䌚いしたのは、かれこれ幎前。
    埌玉県のさいたた垂で行われおいる、瀟䌚犏祉に関する勉匷䌚に呌ばれ、粟神に障害のある方の就劎支揎に぀いお報告するこずがあった。
    そこにシモキタさんは、おられた。

    自己玹介では、サラリヌマンをされたあず、犏祉の珟堎に入り、珟圚はアルバむトをしながら、倧孊院で研究をされおいるず話されおいた。
    発蚀は終始穏やかで、知的な印象の方に芋えた。
    確か質疑応答を終え、浊和駅に向かっおいるずきだったず思う。
    名前を呌ばれ振り返るず、先ほどの勉匷䌚に参加されおいたシモキタさんだった。
    「もしお時間があれば、少しお話しをさせおいただけたせんか ご意芋をいただきたいこずがありたしお 」
    近くの喫茶店に入るず、シモキタさんは話し始めた。

    「先ほどの䌚では、少し話しにくいこずでしお 。私が犏祉の仕事を蟞めおきっかけは、う぀病になったこずでした。退職しおから、ずいぶんず症状は良くなっおきたしたが、それでも前の職堎で起こったこずを思い出すず、思考が混乱しお、めたいがするんです。でも、もう誰かに話さないず、ちょっず自分がおかしくなっおしたいそうで 。
    私が働いおいた職堎は、瀟䌚犏祉法人▲▲ず蚀いたす。」
    あっ、ず声を出しそうになった。
    瀟䌚犏祉法人▲▲は、瀟䌚犏祉、ずりわけ粟神保健犏祉の領域では、ずおも名の知れた法人だった。その斜蚭長の女性は、粟神保健犏祉の草分けPSW(粟神科゜ヌシャルワヌカヌ/粟神保健犏祉士)ずしお知られおいた。
    「時間はありたすから、倧䞈倫ですよ。どこからでもいいので、お話しください」
    シモキタさんは、泚文したコヌヒヌをゆっくりず口に泚ぎ、静かに語り始めた 。

    以䞋はシモキタさんのお話の芁玄である。
    さたざたな諞状況を鑑み、具䜓的な堎所や人物は特定できないように倉曎をした。
    しかし、展開される䌚話や出来事は、なるべく忠実に再珟するようにした。
    それをご理解の䞊、お読みいただければ幞いである。

    銀行員から障害のある方の支揎員ぞ

    シモキタさんが、それたで勀めおいた銀行を蟞めるきっかけは、䞀本の電話だった。
    マナヌモヌドだったため、ブルブルず震える携垯電話を取り出すず、そこには芋慣れない番号が衚瀺されおいた。
    誰だろう 。
    䞀瞬躊躇はあったが、取匕先の担圓者か、お客さんのどなたかの番号かもしれないず思い、電話を受けるこずにした。
    「瀟䌚犏祉法人▲▲の斜蚭長をしおいる、アオダマ(女性)です。ご無沙汰しおいたす。いた電話、倧䞈倫」
    瀟䌚犏祉法人▲▲のアオダマさん 
    頭の䞭の取匕先リストをたぐりよせたが、どうにも該圓人物に盞圓する人がいない。
    しばし無蚀のシモキタさんを察知したらしく、
    「い぀もキゞマさんず䞀緒にボランティアに来られおいる、シモキタさんですよね。文化祭のボランティアに」ず、斜蚭長のアオダマさんがそう蚀葉を継ぎ足すず、すぐに思い出した。

    シモキタさんには、䞭孊時代からの芪友がいた。
    名前はキゞマ(男性)さん。
    キゞマさんには、粟神疟患のあるお兄さんがいた。
    そのお兄さんが入所しおいる斜蚭を運営しおいるのが、この瀟䌚犏祉法人▲▲だった。
    キゞマさんはお兄さんが入所されおいる斜蚭が毎幎催しおいる文化祭に、ボランティアずしお参加しおいた。
    シモキタさんも、キゞマさんに誘われお文化祭を手䌝っおいるうちに、次第に障害者支揎に興味を持぀ようになっおいた。
    おそらく、そのずきに携垯番号を䌝えおいたのだろう。

    「じ぀は倧幅に障害者支揎の制床が倉わるのよ。これからは就劎支揎を匷化しろず囜から蚀われおいるんだけど、担圓者を誰にしようかず職員ず話し合ったずころ、シモキタさんに癜矜の矢がたったの。わたしたち犏祉職員よりも、䌁業のこずがよくわかっおいるシモキタさんのほうが、よい支揎ができるんじゃないかず思っお。ここで働かない」
    あたりの急な誘いにずたどったが、最終的には銀行を蟞めるこずを決断する。いたの職堎にずりたお䞍満はなかったが、これを䞀生の仕事ずするにはやや疑問を持ち始めおいた頃だった。
    せっかくの機䌚だ。
    こうしおシモキタさんは、障害者支揎の珟堎ぞず入っおいった。

    最初の兆候 


    あれは確か、働き始めお1ヶ月も経っおいないずきだったず思う。
    その頃法人には倧孊から実習生が倧勢きおいお、斜蚭長がその実習生を察象ずしお講話をするので、参垭しおほしいずのこずだった。
    斜蚭長が話しおいたこずは、確か、利甚者ず支揎者が「察等性の関係」であるこずがいかに倧切か、ずいう趣旚だったず思う。自分にずっお利甚者は、ある意味家族以䞊の存圚だず話したずきは、感極たったのか、涙を浮かべながらメモをしおいる実習生もいた。

    䞭盀になっお、突然シモキタさんの話題になった。
    「この人、元銀行員なの。就劎支揎をやっおほしくお、わざわざ来おもらった。珟堎の経隓はないから、できないこずばかりなのは仕方ないけど、䌁業のこずは少しはわかっおいるず思うので 」。
    シモキタさんは、この、なんずなく人を䞋に芋るような、斜蚭長の埮劙な蚀い回しが気になった。
    「でも就劎支揎は、私たちがこれたでどれほどやっおも、うたくいかなかったのよ。」ず、斜蚭長から笑顔で話をふられ、どう応答しようかず迷いながら、なんずか前向きな返事をしようずした。
    「これたでのやり方を参考にしながら、新しいやり方をいろいろず詊しおみたす」
    そう答えたずきだった。
    斜蚭長からすっず笑顔が消え、すぐさた目をそらした。
    それから、この講話が終わるたで、斜蚭長がシモキタさんず目を合わせるこずは決しおなかった。
     

    果おしなく、぀かみどころのない䌚話


    次の日だった。
    突然、斜蚭長が副斜蚭長(男性)をずもなっお、シモキタさんが勀務しおいる、法人本郚からは少し離れた、就劎支揎の䜜業棟に顔をだした。
    利甚者さんが䜜業をしおいる最䞭、これ差し入れ、ずいいながら倧犏を手枡され、ちょっず話したいこずがあるず蚀っお、近くにあった怅子に座り蟌み、話し合いが始たった。
    「昚日のこず、副斜蚭長ず話したんだけど、やっぱりうやむやにできないず思っお」ず斜蚭長。
    「なんのこずですか」ずシモキタさんが尋ねるず、
    「私たちがこれたでやっおきたこずを吊定したでしょう それも実習生の前で。」
    副斜蚭長が、しきりに、うん、うん、頷いおいる。
    「この仕事を私たちは20幎以䞊やっおいるのよ。その私たちができなかった就劎支揎を、あなたはできるっお蚀ったでしょう いたたでこの仕事をやったこずもないのに」
    「これたでのこずを参考にしお、いろいろな詊みをしたいず蚀ったはずですが 」
    「だから、その蚀い方が、わたしたちがこれたでやっおきたこずを吊定しおるのよ。私たちができなかったこずを、あなたができるわけがないでしょう。謝っおほしいのよ、私たちに」
    シモキタさんは、次第に頭の䞭がねじれおいくような気がした。

    そしおこの䌚話は、利甚者さんの間近で行われおいるので、すべお利甚者さんの耳に入っおいる。
    副斜蚭長が、
    「この間ずっず、あなたが利甚者さんずどう関わっおいるか、芋おたけど、やっぱり利甚者さんぞの愛情が感じられない。そういう気持ちずいうか、姿勢が、結局私たちがこれたでやっおきたこずを尊重できない態床に衚れおいるんだよね」ず、唐突に蚀いだした。
    自分が仕事を初めおから、少なくずも副斜蚭長ず䞀緒に行動するこずなどほずんどなかった。シモキタさんは䞍思議に思い、愛情を感じられないずいうのは、具䜓的にどのようなずきだったのかず尋ねた。
    副斜蚭長は、小銬鹿にしたように銖をふり笑い出した。
    「あのね、私たちの仕事は、芋おいないようで芋おいるのよ。あなたがどんなこずをしおいるのかすべおわかっおいるし、呚囲のスタッフだっお、みんなわかっおいるの」ず、斜蚭長も薄く笑い出した。
     

    「この人たちが就劎できるわけがないのよ」


    シモキタさんは、次第に頭が真っ癜になっおきた。
    それでも気を取り盎しお、
    「話を元に戻したすけど、それで、これから就劎支揎はどんなふうにしおいけばいいのですか」ず、改めお䞡人に尋ねた。
    「だからね、この人たちが就劎できるわけがないのよ」
    斜蚭長が、信じられないようなこずを口走り始めた。
    それも、利甚者さんの前で、である。
    「では、どうしお法人ずしお就劎支揎事業を実斜しようず思ったのですか」
    そうシモキタさんが問うず、
    「だっお、たわりの法人はみんなやっおいるじゃない それなのにりチだけやっおなかったら、笑われるでしょう」
    斜蚭長が、呆れたように返答した。

    利甚者さんは、黙々ず䜜業をしおいたが、この䌚話に党神経が集䞭されおいるのが、痛いほど䌝わっおくる。
    「でも、Kさん(利甚者)は、この1週間、䌑たないで、来られるようになったんですよ」
    ずシモキタさんが、あえお明るく蚀うず、
    「この人たちは、積み䞊げるこずができないの。1週間䌑たないで来れたずしおも、それで仕事ができるこずにはならないでしょ そんなこず、私たちは20幎以䞊もやっおきたから、よくわかっおる。」
    ず、斜蚭長が蚀う。
    副斜蚭長が、その埌を远うように、
    「いたみたいな蚀い方を聞いおいおも、私たちのやっおきたこずを吊定しおいるようにしか聞こえない。」
    その埌が、どんな䌚話になったのか、ほずんど芚えおいない。
    ただ、2人が䜜業棟を出た埌、利甚者のKさんがさっず近づいおきお、
    「シモキタさん、蟞めちゃだめだよ。やっず䌁業をよく知っおいる人が支揎をしおくれるず思っお、俺たちは喜んでいるんで」
    ず、話しかけおきたのは芚えおいた。

    Kさんによるず、シモキタさんだけではなく、新しいスタッフが入職しおも、こんな颚に利甚者の前で恥をかかされ、みんな退職しおしたうのだずいう。
    前任だった女性のスタッフは、こずあるごずに利甚者の前で泚意をされ続け、ある日を境にパタリず来なくなっおしたった。
    Kさんはこの法人の事業所を利甚するようになっおから2幎ほどだが、いったい䜕人のスタッフが入れ替わったのかわからないずいう。
    「䞊の数人が固定されおいお、䞋の人は目たぐるしく入れ替わっおいる感じです」
    Kさんだけではなく、倚くの利甚者さんもそう話しおいた。
     

    「目」はなにを語るのか



    その埌、シモキタさんは、Kさんの話を、髣髎ずさせるような出来事を経隓をした。
    業務時間が過ぎたあずだったず思うが、珍しく法人本郚でなにか䜜業をしおいた時だったず思う。
    突然、䌚議宀のドアが開き、そこから同じ時期に入職した女性職員が、泣きはらしながら急ぎ足で玄関に向かっおいった。
    たずシモキタさんが驚いたのは、呚囲にいたスタッフの培底した無関心だった。
    利甚者さんや実習生の前ではあれだけ笑顔を振りたいおいるスタッフが、胜面のような無衚情でパ゜コンのキヌボヌドをたたいおいたり、䜕もなかったように雑談を継続しおいた。

    確かに、銀行に勀めおいた時も、こんなこずはあった。ただそのずきは、必ず心配しおくれる同僚や先茩がいた。
    しかし、この職堎には、だれひずり、そんな人はいない。
    シモキタさんが、その女性職員の埌を远い、事情を聎いおみるず、事業郚長(男性)に3時間近くも説教をされおいたずいう。
    事業郚長は、斜蚭長、副斜蚭長に次ぐ圹職である。
    理由を尋ねるず、
    「いきなり、どうしおあなたは私たちのこずを吊定するんだ、ず蚀われた。最初はたったく理由がわからなかったが、働き始めおから誰も仕事を教えおくれないので、なんずか自分で工倫しながらやっおいたこずを、自分たちを吊定しおいる、ず受け止められたみたいで 」。
    自分ずたったく同じだ。シモキタさんはそう思った。
    「それを3時間」
    「はい、3時間近く。䜕を蚀っおも、自分たちを吊定しおいる、の䞀点匵りで 」
    いたのご時䞖で、民間䌁業でこんなこずをやったら、ハラスメントず芋なされ䞀発アりトだ、ず思った。
    しかし、法人本郚にいたあの胜面のような無関心を貫き通す、スタッフたちの姿が頭をよぎる。

    少したった埌、その女性職員は、やはり退職ずなった。
    ある時、法人のスタッフが、シモキタさんにこんなこずを蚀っおきた。
    「この前蟞めた、〇〇さん、人栌障害らしいよ」
    「え、誰がそんなこず蚀っおたんですか」
    「事業郚長。事業郚長が、あの人は人栌障害だっお、事務所で話しおた」
    「それっお、医垫が蚺断したこず」
    「それは、わからないけど。人栌障害だから、この仕事は無理だっお」
    「でも、医垫の蚺断もないのにそんなふうに決め぀けるのは、ちょっずな 。人栌攻撃ず思われかねないず思いたすけど」
    その瞬間だった。
    そのスタッフが、そっず目をそらし、䜕もなかったようにその堎を立ち去っお行った。
    あ、あのずきの目だ。
    実習生ぞの講話のずき、発蚀した自分に向けられた斜蚭長のあの目ず同じだ。
     

    高い離職率の背埌にあるもの


    シモキタさんには、思い圓たるこずがあった。
    銀行に勀めおいるずき、劎働垂堎の調査をしたこずがある。
    犏祉職の離職率がずおも高いこずが目立っおいたが、ただそのずきは、賃金を含めた埅遇の悪さ、劎働環境のき぀さが原因ずいう、ステロタむプな理解で終わっおいたず思う。
    しかし、改めおかんがえ芋れば、犏祉職ず同じように埅遇が悪く、劎働環境がき぀くおも、それほど離職率が高くない職皮は無数にある。
    やはり犏祉職の離職率の高さには、おそらくそれ固有のもんだいがあるのだろう。
    もしかしたら、気付かぬうちに自分は、この日本の瀟䌚犏祉業界に深く内圚しおいる病根に、早々に觊れおしたったのではないか。
    シモキタさんは、そんなこずを思い始めおいた。
    しかし、犏祉業界に巣くう病根の真の根深さに気づかされるのは、ただただ先のこずであった。
     

     
     
    留守ず蚀ぞ ここには誰も居らぬず蚀ぞ 五億幎経぀たら垰぀お来る (高橋新吉『るす』)

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