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短編小説|全力で推したい貯金箱|#爪毛の挑戦状

    新下彗

     目の前の貯金箱を見ると、思わずにやけてしまう。いつか推しに会おうと、数年前から準備していた、黄色い貯金箱。目標の金額があるわけではない。とにかく目いっぱい貯めて、大量に入れてあることが重要だった。だから、1円玉と5円玉をたくさん入れた。
     数か月前、今年は推しに会えると知った。それからは落ち着かない日々だった。彼は、国民的アイドルグループの一人なのだ。会えるチャンスは毎年あるわけではない。

     当日。夏の猛暑日。
     会場の周りで、じっと待機していた。スマホからは目をはなさずに。

    ――彼が受付をしているシーンが流れたよ!
     友人からの連絡。すぐさま武道館に入場した。
     のろのろと列を進んだ後、ようやく彼のもとにたどり着いた。

     黄色のTシャツを着た彼に貯金箱を渡す。
    「募金ありがとうございます! たくさん貯めましたね」
    「メインパーソナリティーお疲れさまです」
     何とか言葉を発し、彼が差し出した手をつかんだ。

     愛は地球を救う。


     
     
     
    新下彗(しんしたけい)と申します。主にショートショートや短編小説を書いています。◆日本証券業協会×note公式コンテスト「#お金について考えていること」入賞(ショートショート)◆ショートショートnote杯は2作が最終選考まで◆夏ピリカ"すまスパ賞"

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