女性(XX)細胞と男性(XY)細胞の両方を持つキメラ人間!!性別はどちら??(キメラシリーズ3/5)
(アイキャッチ画像は2枚ともpixabayのフリー画像より引用 右:ギリシア神話の怪物キメラ)
今までの記事で2つのDNAを持つキメラについて書いてきましたが、その3つ目になります。
キメラとは分かりやすく言うと、2つの命が1つになる現象です。
厳密には、異なる受精卵に由来する細胞が1つの個体の中に共存している状態またはその個体を指します。
この状態が生じるメカニズムの代表的なものは発生初期における受精卵の融合です。
本来は二卵性双生児として発生するはずだった二つの受精卵が初期段階で融合します。
例えば……
黒(+白)と茶(+白)と2匹で生まれるはずが、融合して1匹で生まれたのがキメラの三毛猫です。
血液型が(例えば)A型とB型の二卵性双生児として生まれるはずが、融合して1人として生まれると、2種類の血液型を持つ人となる場合があります。
今回は、男の子と女の子の二卵性双生児として生まれるはずが、融合して1人として生まれた場合についてです。
このような場合の性別はどちらになるのでしょうか?
論文ではXX/XYキメラと表現していることが多いですので、この記事でもその表現を使います(/の代りに+も)。
XX/XYキメラでは、1人の体の中に女性型(XX)と男性型(XY)という異なる染色体を持つ細胞が共存します。
そう説明すると、「体の部位ごとに女性か男性かに分かれている」とイメージするかもしれません。
しかし、実際にはそのような単純でなくもっと複雑です。
キメラの本質は、「分かれていること」ではなく「混ざっていること」にあります。
1.臓器ごとに異なる女性細胞と男性細胞の割合
キメラでは、異なる受精卵に由来する細胞が発生初期に融合し、その後の細胞分裂を通じて全身に拡大します。
XX/XYキメラでは女性細胞と男性細胞の分布が均一ではないということが重要になります。
ある臓器では女性細胞が優勢になり、別の臓器では男性細胞が優勢になります。
さらに1つの臓器の中でも、女性細胞と男性細胞が混在することがあります。
表現を変えて説明すると……
女性細胞と男性細胞が体内で混在し、臓器は女性細胞と男性細胞のどちらかのみの由来になることもあれば、両方の細胞に由来する場合もあるとされています。
つまり、体はパッチワーク状に構成されます。
リンク先:サイエンスダイレクト
2.実際の例:血液が男性だが正常に出産した女性
実際のXX/XYキメラの例を紹介しましょう。
その前に……
前回の記事で血液キメラの話をしました。
そこでは2種類の血液型があっても、半分ずつではなく、どちらかが多いことも書きました。
それは造血幹細胞が一方の細胞に由来する場合が多いからです。
キメラであっても完全に一方の細胞で造血幹細胞が形成されれば、1種類の血液型になります。
血液では男性型染色体を持ちながら(つまり、Y染色体がある)、卵巣機能を持ち正常に出産した女性の報告です。
この人の場合は血液だけが男性で、他の臓器も調べた限り女性のようで、性機能は出産したくらいですから完全な女性です。
詳しくはそのサイトをリンクしていますので、興味のある方は参考にして下さい。
(英文ですのでブラウザの翻訳機能を使って下さい)
リンク先:サイエンスダイレクト
XX/XYキメラのイメージは個人的にはこのサイトを読むまでは違っていました。
3.細胞の分布のメカニズム
既に書いた通り、女性細胞と男性細胞の混在は、臓器単位で分かれるとは限らないとされています。
1つの臓器の内部でも、2種類の細胞が入り込むことがあります。
例えば、哺乳類で生殖器においても、2種類の細胞が同時に存在することが確認されています。
こちらのサイトは人でなく、牛の研究ですが、参考にリンクしておきます。
リンク先:PubMed
また、別の研究報告では、血液中の細胞でも女性細胞と男性細胞が混在し、その割合が大きく変動することが示されています。
リンク先:Karger Publishers
つまり、キメラとは単純な「臓器の入れ替わり」ではなく、細胞レベルでの混合状態が全身に広がった存在です。
この複雑な分布は、発生初期の細胞分裂のタイミングと位置によって決まります。
受精卵同士が融合した直後、それぞれの細胞がランダムに増殖し、発生の過程で特定の領域を占有していきます。
このときどの細胞がどの組織に入り込むか、どの細胞が優先的に増殖するかは偶然性に強く依存します。
そのため、XX/XYキメラであっても、個体ごとに全く異なる分布を示します。
それで、先ほどの完全な女性に見えるXX/XYキメラもあるのです。
これは性が反対でもありえますし、0~100%の割合で存在します。
4.XX/XYキメラの性はどのようにして決定するか?
女性細胞と男性細胞の分布の違いは、生殖器の形成にも直接影響します。
人の性分化は胎児初期に決まりますが、その際に重要になるのは、女性細胞と男性細胞のどちらがが優勢かです。
もし、女性細胞が優勢であれば、卵巣形成が進みます。
逆に、男性細胞が優勢であれば、精巣形成が誘導されます。
しかし、キメラでは細胞が混在しているため、性腺の中に女性細胞と男性細胞が存在し、性分化が不均一になります。
その結果として、典型的な男性と女性どちらでもない構造が形成されることがあります。
まとめ
XX/XYキメラの本質は、「男性部分と女性部分が分かれて存在すること」ではありません。
それはむしろ、女性細胞と男性細胞が全身にわたって複雑に混在する状態です。
臓器単位で分かれる場合もあれば、1つの組織の中に両方の細胞が共存する場合もあります。
この現象は、「1人の体は1つのDNAで構成される」という常識が、必ずしも正しくないことを示しています。
そして、同時に人の発生がいかに偶然性と多様性に満ちた過程であるかを示しています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は5月18日(月)午前10時です。
また、キメラの続きで、人と豚のキメラについてです。
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