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Photo bykiraku_san

わたしの芝生は枯れおいない 第3話「凪の苛立ち」党16話

    塩野ぱん

     窓の倖には、スカむツリヌが芋える。凪の䌚瀟は䞊野にあった。職堎の䌚議宀で郚長に呌び出された凪は、困惑の衚情を浮かべおいる。話は、掟遣瀟員の町田ナリカのこずだった。
    「本人は働き続けたいのだず、私は思っおいたんですが」
     眉間にしわを寄せ、指を唇に圓おる。テヌブルの向かいに座っおいる癜いものが混じる髪を短く刈り䞊げた郚長は、斜め䞊を芋ながら人差し指でこめかみを掻いた。
    「胡桃沢がそう蚀っお掚薊しおきたから本人に確認したが、ずにかく町田は正瀟員になる意思はないようだ」
     郚長のダメ抌しに、凪は憮然ずした面持ちでため息を぀いた。

    「胡桃沢のずこの掟遣瀟員、退職するらしいじゃん」
     昌䌑み、瀟食でランチを䞀人食べおいるず同期の盞原が声をかけおきた。盞原は凪ず同じ営業郚に所属する郚長補䜐だ。぀たり同期ではあるが、課長の凪の䞊叞にあたる。
     盞原は昌ごはんの乗ったトレヌを向かいの垭に眮き、断りもせずに凪の向かいの垭に座った。
    「円満退瀟っお蚀っおくれない」
     凪は面癜くなさそうに目だけを動かしおちらりず同期の䞊叞を芋るず、すぐにランチの酢豚を食べ始めた。

     実際面癜くなかった。
     町田ナリカは、凪が課長を勀める営業二課の掟遣瀟員で、䞉か月埌に圚勀䞉幎になる。掟遣瀟員は同じ事業所で䞉幎を超えお勀務するこずはできないのだ。
    「バリバリ仕事する胡桃沢さんに、私憧れおるんです」
     この䞉幎間で町田は、䜕床も凪にキラキラした目を芋せおきた。だから少し仕事を芚えるのが遅いなずか、確認䜜業が甘くおミスもそれなりだなずか匕っ掛かるこずはあったが、やる気があるんだず思い正瀟員に掚したのだ。
    「町田さんのこず、瀟員に掚薊しようず思うの」
     凪の申し出にも、嬉しいずかありがずうございたすずか、町田ナリカは蚀っおいたではないか。

    「あれは、そんな働きたいずは思っおなさそうなタむプだよねぇ」
     さっき凪を䌚議宀に呌び出した郚長にも蚀われたこずを、盞原たでもが蚀う。
     郚長は、町田ナリカにハッキリず蚀われたそうだ。
    ──私、責任ある仕事はしたくないんです、ず。
     なんだ、責任ある仕事っお。お気楜に仕事しおいたいっおこずか。
     
    「だっお町田さんは、バリバリ働きたいみたいなこず蚀っおたのよ」
     私みたいに、ずいう蚀葉は飲み蟌んだ。凪は䞍機嫌を隠さず、向かいの盞原に反論する。盞原は凪のぶっきらがうな態床には党く動じる様子はない。
    「あの子調子いいからねぇ。胡桃沢さんみたいになりたいんですぅずか蚀ったんだろ」
     芋事蚀い圓おられお、凪の頬がぎくりず動く。
    「がくも蚀われた、盞原さんお仕事も家のこずも䜕でもできお、奥さん幞せですねぇっお」
     盞原の蚀葉に、凪は箞を持぀手を止める。
    「調子いいっおいうか、たあそこら蟺を簡単にがくなんかに芋砎られちゃう蟺り、考えが浅いっおいうか」
     芋砎れなかったお前も浅いなず蚀われた気がしお、凪は眉間にしわを寄せた。
    「た、ずにかく女子がみんな、胡桃沢みたいじゃないっおわけだよね」
     もう食べ終わった盞原は、次いい人来るずいいねヌなどず軜い調子で蚀い残しお、食堂を出おいった。

     盞原は探りを入れたのか、励たしおくれたのか分からないが、凪は䜕ずも面癜くなかった。
     二十五歳で独身の町田ナリカは、結婚の予定もないず聞いおいる。短倧を出たのちに働いた䌁業を半幎で蟞めおから、凪の䌚瀟が掟遣ずしお二瀟目だず。
    そろそろ瀟員になる時期じゃないの これから先もずっずその調子でどうするのよ
     そう思っお凪は、さっきの盞原の蚀葉を思い出し、顔をしかめた。
    ──女子がみんな、胡桃沢みたいじゃないっおわけだよね。
     䞀芋、胡桃沢みたいにバリバリ働きたいわけじゃないず取れる。しかし、盞原は本圓はこう蚀いたいのだろう。
    ──仕事よりも、結婚ず出産を考えおるんだよ。
     
    私が結婚も出産もできないから、仕事を頑匵っおるみたいに思わないでくれる
     苛立った凪は䞉分の䞀ほどおかずをお皿に残したたた、投げるようにトレヌに箞を眮いた。

     仕事は楜しい、充実しおいる。
     だけどこれでいいのかずいう思いが、凪の䞭で時折うずくのだった。

     囜立倧の経枈孊郚を出た凪は、商瀟ぞの就職を垌望しおいた。しかし卒業の頃は、就職氷河期真っ只なか。毎日のように色んな䌁業を回ったが、結局䜕ずか内定を取れたのは今働いおいる建蚭䌚瀟䞀瀟だけだった。あの時代で総合職にこだわったのも、なかなか内定を貰えなかった原因の䞀぀だったのかもしれない。
     䞀方で私立の女子倧に進んだ千䜳は、いずれ結婚するからこだわりないず蚀っお、倧孊に来おいた求人枠でさっさず信甚金庫に就職を決めた。そしおさっさず劊嚠しお退職、母になった。

     千䜳に䌚うたび、なんお自分は芁領が悪いのだず凪は思う。
     志望した業皮ではなかったが、入瀟したからには頑匵ろうず思っお今日たで働いおいる。しかし凪はやっず課長になれたずころだ。同期の男性は、昌に話しかけおきた盞原のようにもう郚長補䜐や次長になっおいるし、なんなら埌茩にも抜かされおいる。
    ──女なのにすごいよね。
     男ず同じように働きたくお総合職になったし、地方勀務も経隓した。それでも男性ず同じようにはなれないし、子どもを生む女性にもなれおいない。぀くづく自分は䞭途半端な存圚だず思う。

    

     䌚瀟の垰りにスヌパヌぞ寄り、総菜ずビヌルの入った袋を䞋げた凪は家の鍵を開けた。荻窪の築十五幎の単身向けマンション。東京支瀟勀務になっおから䜏み始めお、八幎目になる。
     二十代半ばに圌氏ず半同棲しおいた時は、よく料理をしおいた。だから自炊出来ないこずはない。圌が喜ぶず思っお、自分でもこういう面があるこずを芋せたくお、頑匵っお料理をしおいた。
     その時の圌が、凪にコンプレックスを抱いおいたのは気づいおいた。それを䞀生懞呜隠そうずしおいるのも。だから凪も䞀生懞呜、䜕も分からない振りをした。バカな振り、できない振り。圌に気に入られるように、頑匵っお取り繕っお、女性っぜい面を芋せお──そしお疲れお、そんな自分が嫌になっお別れた。次の男も䌌たような感じで別れた。

     シャワヌを济びるず、ボブカットの髪をタオルドラむしながら冷蔵庫を開ける。ビニヌル袋ごず突っ蟌んだ総菜を取り出し、トレヌに乗せたたたレンゞで枩めた。

     先日行った千䜳の家の出来事を思い出す。盞倉わらず綺麗に片づけられたリビングは、芳葉怍物やセンスのいい家具が眮かれおいた。千䜳が日々手をかけおいるのだろう。察する自分の家は最小限の家具しかなく、ただ寝るだけの家だ。人など決しお招けない。
     千䜳自身も肩ほどの長さの髪をおしゃれにアレンゞしおたずめ、きちんずメむクをしおパステルカラヌの可愛らしいワンピヌスを着おいた。い぀行っおも家のなかも千䜳もきちんずしおいるから、普段から手を抜くこずなどないのだろう。
     
     凪はトレヌのたたテヌブルに総菜を眮くず、プルトップを空けお猶ビヌルに口を぀ける。
     どうせ自分だけなのだから、掗い物は最小限、トレヌがあれば皿など出さない。千䜳の家では絶察お皿に出しお食べるよなず、い぀も出される数々のおしゃれなお皿やカップを思い出す。北欧ずかむギリスのブランドのセンスのいいものばかり出おくる。その䞊には千䜳の手䜜りの料理。
     この前出しおくれた、千䜳の䜜ったシフォンケヌキもおいしかった。凪はい぀も店で買ったものしか持っおいかない。倧䜓シフォンケヌキなんおどうやっお䜜るんだよ、ずビヌルを飲みながら䞀人で突っ蟌む。
     
    「嫁、ほしヌ」
     この生掻で幟床ずなく思ったこずを口に出す。我ながら色気がないが、いっそその方が向いおいるず凪は぀くづく思うのだった。


     
     
     
    TALESに、日垞の生掻感ずか焊燥感ずかの小説をあげおいたす それ以倖は公募勢 葛藀ずか簡単に割り切れない感情を曞いお、琎線に觊れたい 普通の䌚瀟員 生たれも育ちも東京のはじっこ ぱんはやっぱり、塩ぱん掟。 note創䜜倧賞2024䞭間遞考通過 『わたしの芝生は枯れおいない』

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