メインコンテンツへスキップ
見出し画像

連載恋愛小説-「秘密」②

    蒼あお

    続きです
                                                              (1911文字)

    ある土曜日の午後、友達五人が家に遊びに来てくれた。いっちゃんが家に来てから初めてのことだった。当時は近所で遊ぶ子どもが多かった。

    「いらっしゃい。」

    いっちゃんがTシャツにフレアースカート姿で玄関に現れた時には、皆、気恥ずかしい顔をして小さな声で「こんにちは」と言っていた。

    いっちゃんが一時、僕らと一緒に広い庭でかくれんぼをした時は、スカートをひらひらさせながら跳ねるように走り、たくし上げながら腰のあたりが見えたまま小さくなって隠れていた。汗をかいた後のジュースは美味しくて、いっちゃんの焼いたクッキーは皆のお腹と心を満たしてくれた。いっちゃんはこの日を境に子どもたちの人気者になった。 

    夏休みには、宿題、野球のキャッチボール、川遊び、網を持ってセミ捕り、いっちゃんはずっと家にいてくれたので、僕が友達と遊べない日はいつだって付き合ってくれた。いっちゃんの白かった腕が少しずつ赤くなってきて、僕のこんがり日焼けした細い腕と一緒に空を仰ぎ、まるで初めて遊ぶ子どものように、今日は裏山に行く?川遊びをする?って毎回はしゃぐ。何がそんなにいっちゃんを子どもにしていたのだろう。この頃の僕には分かりようもなかった。

    いっちゃんとの生活も一年が経とうとしていた。
    僕は春から三年生になる。いっちゃんがある夜、「ねぇ、和くん。和くんも春から三年生だよね。四月からは一人でお風呂に入ろうか。」
    そう、僕は、二年生の間、いっちゃんとずっと一緒に入っていた。
    「なんでだよー。」
    僕は僕の記憶にない頃は、産んでくれた母親で、
    三歳以降は、トキエさんやたまに家にいるお父さんや亡くなったおばあちゃんにお風呂に入れて貰っていた。いっちゃんはもしかしたら、最初、抵抗があったのかもしれない。小学校低学年っといっても赤の他人の男の子だ。
    初めてのお風呂の日、きっと、いっちゃんは戸惑っていたはずだ。
    「和くん、一人でお風呂に入れるかな?外から綺麗に洗ってあげようか?」
    最初は服を着たままズボンの裾を捲って洗ってくれていたけれど、何だかまどろっこしくなってきたのか、何回目からか、
    「私もお風呂、さっさと済ませちゃお。」
    っと言って、服を脱ぎ、さっさと洗い場に入ってくるようになった。おばあちゃん以外の女の人の裸を見たことがなかったので、僕はじーっと見るのをやめなかった。 
    「やだ、和くん、そんなに見ないの。」
    いっちゃんは鼻歌を歌いながら、僕の前にしゃがみ込み僕の全身に泡をつけている。僕は衝動にかられていっちゃんのおっぱいをキュッと握ってみた。
    「きゃっ。こらぁ〜。痛いじゃないか〜。」
    いっちゃんが僕の顔に泡を飛ばす。

    僕はお父さんの留守の日にはお風呂場で大きい声で歌を歌い、それにつられていっちゃんも歌い、「あぁ、楽しかった。」と、二人で浴槽を出る。洗面所では僕の体をチェックして肌の弱っているところにいっちゃんが薬を塗ってくれる。僕はその時間が大好きで、わざと可笑しなポーズをとっていっちゃんを手こずらせる。
    いっちゃんの手はいつだって優しくて、本当のお母さんの手もこんなのかなと、想像する。


    三年生になって僕の誕生日、いっちゃんが「プレゼントは何がいい?」って聞いてくれたので、
    僕は少し怒ったような顔で、
    「いっちゃんと一緒にお風呂に入りたい。」
    と、言ってみた。
    「まぁ、じゃあ、久しぶりに和くんがちゃんと綺麗に洗えてるかチェックするわよ。」 
    と言って、僕の念願は簡単に叶った。
    「僕、いっちゃんの体、洗ってあげるよ。」
    「あら、ほんと?じゃあ、介護の練習ね。」
    「かいごって何?」
    「なーんでもない。」
    いっちゃんは笑いながら、「お願ーい。」と言って体を差し出した。僕はタオルで石鹸を泡立てて、イスに座っているいっちゃんの前に立ち、首から下に向かってタオルを滑らせていった。いっちゃんは目を瞑り上を向いていた。
    「うん。気持ちいいわ。もう少し強く擦ってくれてもいいわよ。」
    僕のタオルがいっちゃんのおっぱいにたどり着いても、いっちゃんは何も言わない。いっちゃんが目を瞑っていることをいいことに、僕は目いっぱい、泡に包まれたいっちゃんの体を見つめた。泡の間から覗く、おっぱいの先っぽや泡と同じくらい白い肌や僕には生えていない薄い毛。

    「人に体洗ってもらうって気持ちいいのね。お股はいいからね。今度は背中、洗って。」

    僕はいっちゃんの背中がよりツルツルになるように、一生懸命、上下した。
    いっちゃんは
    「赤くなったんじゃない?」
    て、笑いながら振り向いた。


    続く

     
     
     
    初めましての方も、そうでない方も、こんにちは。 心の赴くままに小説、詩、たまにエッセイ等を書いています。 お立ち寄り頂ければ、嬉しいです。 *記事の著作権は放棄しておりません。 2026年4月8日まで、aonokutuで活動。 2026年4月8日からは「蒼あお」として活動。