
自由律短歌
自由律短歌
1
夢の中でしか会えない君は駅前を少し探せばしれっといそうな気がしてならないんだけどな
2
何年も使ってる電車なのに一回も降りたことがない駅があるのだけど、それはあの人の最寄り駅でぼくは無意識に避けているのかもしれない。
3
「なんだか自殺前だね」と彼女は嬉しそうに笑った。それはとてもとても嬉しそうに。水面にゆらゆらと反射する彼女の笑顔が死神のようで僕は一瞬ゾクっとしたけど本物の彼女は天使のようで。
4
君の音で飾る思い出。いまだにでてくるおすすめ欄のバンドは投稿日が14年前になってあの日からどんどん距離が大きくなってしまう。この距離が縮むことは決してなくて再生するたびに音は大きく、君の声は遠く、思い出は飾られる。
5
欠点を欠点として愛おしく思いたいのに「それも個性!ポジティブ!ポジティブ!」な輩が多すぎる世の中ぶん殴りたい。
6
・気を抜いたら踊り出してしまいそうな夜。回るアルコール、絡まりもつれる脚と指。23時。人が溢れる渋谷のスクランブル交差点で僕らは世界に二人。そんな錯覚の中、今夜が何かの起点になるんじゃないかと心躍らせては足元を確認する。
7
彼女と何を話したかなんて覚えていない。仕事の話とか、好きな本の話とか、大学の話とか、そんなことだったと思う。ただ、何より重要なのは彼女が楽しそうに聞いてくれていたことであり、ぼくはそれが嬉しくてベラベラ喋りまくったことである。
8
恋人繋ぎで階段を駆け足で降る。絡まる指、もつれる脚、人がまばらな終電間近の地下通路で、ぼくらは酒と恋に酔いまくる。「バカップルだなー」なんて思いながらも、今日だけはいいやと手は解かない。
9
ずっと読んでいるけどいまだにストーリーが掴めない小説が何冊もある。適当に開いたページを読んでは閉じて、しばらくしてまた適当に開いて、を繰り返しているからいつまでもストーリーが繋がらないし、完結しない。
10
どんなに立派な外面でも最終的に行き着くのは自己愛だろう。ビーガンもそうだ。動物愛護も行き着くところは自己の快感だ。ボランティアもだ。人のため、動物のため、はたまた地球のため、子孫のため、それらは例外なく自己の快感に行き着く。「ーしてる自分が気持ちいい」なのだ。
11
流れ星というにはロマンチックすぎるが流しそうめんというとダサすぎる。
12
夢の中、草原で手を引かれ、惹かれ。
君は誰かと問う僕に君は。
誰でもいいじゃんと答える君に僕は。
13
君がチョコミントのアイスが好きなのは知っていた。なぜか。夢のかでしか会えないはずで。「うちチョコミントが好きなんや」と今初めて言われたのに。なぜかずっと昔から知っていた。そんなことがまるで何回もあった、気がした。
14
顔も名前も知らないのに全てを知っている気持ちになるのはなぜだろう。握られた手に懐かしさを感じるのはなぜだろう。同じ制服を着ているからだろうか。大きな入道雲と、肩まで伸びた夏草がサーサーと揺れ僕らはどこに向かうのだろう。
15
「どこに向かうの?」と聞いたら「どこでもいいでしょ」と返ってきて「確かに」と思った。どこでもいい。どこでもいい。君となら。そう思った。手を引かれ、惹かれ、僕は君に身をまかせ、草原をゆく。
16
ゆらゆら変わりゆく世界の中で君だけは変わってほしくないと願うのは世界で1番傲慢なことだと思うけどそれでも思ってしまう。
17
夢から持ち帰った感情に戸惑うことがある。彼女は誰なんだろう。知っているようで知らない。でも僕はあの時、中学の制服を着ていて、彼女も同じだった。でも知らない人だった。
18
なんでだろう。朝起きた時に涙が止まらない時がある。僕だけなんだろうか。もう二度と会えないと思ってしまう。肩まで伸びた、どこまでも続く、夏草の中を駆け回った彼女を。
19
君の小さく、大きな手が僕の手を引く。ひと通り駆け回った後に手を繋いだままドサっと寝っ転がると僕らは夏草にスッポリ隠れてしまう。世界に2人。「ここどこなんだろうね」と聞くと「どこでも良くない?」と言うので「そうだな」と思った。うん、どこでもいい。君がいればどこでもいいと本気で思ったんだ。
20
世界がどうなろうと、なんていうと主語がデカすぎるけどホントそう。君がいればいいと思った。
21