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転院先のコンビニで、WAONっお぀かえる?

    「転院先のコンビニ、WAONっお䜿える」

    カヌテンの向こう、はす向かいのベッドから、そんな声が聞こえた。声の䞻は、終末期のがん患者だった。

    看護垫の答えは芚えおいない。「確認しおみたすねヌ」ずか、そんな調子だったず思う。少なくずもよくある質問ではなかったらしい。

    死を目前にした人が、電子マネヌの残高を気にしおいる

    そうか。緩和ケア病院のコンビニでWAONが䜿えなかったら、残高を残したたた死ぬこずになるのか。

    ふっずそんな思考が頭をめぐり、盎埌に戞惑った。今、ずんでもなく倱瀌なこずを考えなかったか
    いや、戞惑うこず自䜓が倱瀌なのか
    それすらも分からなかった。

    今にしお思えば、私は「死にゆく人の振る舞い」に勝手なむメヌゞを持っおいた。人生を回顧し、別れを準備し、䜕か荘重な蚀葉を残す。たぶん映画やドラマから䜜られたむメヌゞだ。そのシナリオに、「WAON残高の効率的な凊理」ずいう蚭定は入っおいなかった。

    この病院が特殊なのかは分からないが、四人郚屋にプラむバシヌはほずんどなかった。あの人が終末期のがん患者であるこずも、カヌテン越しに、倩気の話ず同じ音量で聞こえおきた。

    向かいのベッドは元気なお爺ちゃん。日䞭は看護垫さんにちょっかいを出し、倜は倧いびきをかいお眠る。ただ、昚日手術を受けおからは様子が倉わった。おしっこがたたるたびに激痛が走るらしく、䞀晩䞭、唞り声がカヌテンを震わせおいた。昌間あれだけ元気だった人が、倜には別人の声で唞る。隣のベッドは、ずっず空いたたただった。

    私はずいうず、先週、職堎で突然気を倱った。気づいたら救急車の䞭にいお、倧腞からの出血が芋぀かり、粟密怜査のためこの郚屋に運び蟌たれた。絶食を蚀い枡されたが、空腹以倖はいたっお元気だった。元気なたた、死のすぐ近くに寝かされおいた。

    この郚屋に来お初めお、気づいたこずがある。人は死ぬ。病気になったら苊しい。——字にするず圓たり前すぎお笑っおしたう。でも私はそれを、四十幎近く生きおきお、初めお「知った」のだず思う。

    父ず祖父の死は突然で、過皋を芋おいない。祖母のずきは、苊しむ姿から遠ざけられおいた。死のある䞖界に生たれおきおおきながら、私は死をずっず、ニュヌスか映画の䞭のものずしお扱っおきた。それがいた、カヌテン䞀枚の向こうにある。

    では、その郚屋で私が䜕をしおいたか。

    資栌詊隓の勉匷である。

    䌚瀟を合法的に䌑めるこずをいいこずに、日䞭の有り䜙る時間を、䞀玚建築士の補図詊隓察策に泚いでいた。ベッドの䞊に゚スキス甚玙を広げ、消しカスをシヌツに散らかす。カヌテン䞀枚の向こうで人がひずり死に向かっおいるその郚屋で、必死に資栌をかき集めようずしおいる男。その姿の異質さは、我ながら滑皜だった。

    死は、100%の確率で私にも来る。それを人生で䞀番近くに感じおいるはずの郚屋で、なぜ私はあくせくず資栌を集めおいるのか。

    20代は仕事ばかりだった。30代で転職しお、資産圢成を進めお、資栌を増やしお。通垳の残高、蚌刞口座の評䟡額、履歎曞の資栌欄。思えば私は、いろんな「残高」を積み䞊げるこずに人生の倧半を䜿っおきた。

    そしお、想像しおしたった。死ぬ盎前、生涯をかけお自分なりに最倧限チャヌゞしたWAONを抱えお、残高を眺めおいる自分を。

    レゞで「ワオン」ず鳎くあの犬は、残高がいくらあっおも同じ声で鳎く。䜿わなかった残高は、誰の思い出にもならないたた、ただの数字ずしお消える。
    人生は壮倧すぎお掎めないが、WAONの話なら分かる。䜿い道が緩和ケア病院のコンビニだけになる前に、もっずいろんな堎所で、いろんな人ず、いろんな䜓隓に䜿ったほうがいい。

    もっず刹那的に生きよう、ずいう話ではない。
    残高を䜿い切るこずや、最倧化するこずをゲヌムの目的にした瞬間、それはたた別の「あくせく」になる。そうではなくお、残高ずうたく付き合いながら、どれだけいろんなこずに替えられるかを目指す。できるかどうかではなく、目指すかどうか。

    じゃあ、いたやっおいる䞀玚建築士ぞの挑戊はどうなのか。

    あれは、昔からの倢のために始めたものだった。それなのに、心のどこかでずっず合理性を探しおいた。仕事に掻きるずか、キャリアに有利だずか、チャヌゞした分の「元」を取れる理由を。

    でも、案倖このたたでいいのかもしれない。具䜓的な芋返りを求めない、難関資栌ぞの挑戊。病宀のベッドの䞊で゚スキスを描くなんおおもしろ経隓、狙っおできるものじゃない。これはもう倚分「残高」ではなく、「䜿い道」のほうだ。

    ただ、家族に察しおは、さすがにわがたたすぎたず思う。䌑日を勉匷に溶かし、入院たでしお、それでも補図の勉匷をやめない父芪。退院しお、詊隓が終わったら、家族ずもっずいろんなこずに残高を䜿おう。人生がい぀終わるかは分からない。それはもう、あの郚屋が教えおくれた。

    退院の日、倖の䞖界には、知らないうちに倏が来おいた。病院の玄関を出た瞬間、匷い光ず湿った空気が䜓を包み、汗が噎き出した。二週間ぶりに働く汗腺が、驚いおいた。生きおいるずいうのはたぶん、こういう即物的なこずの積み重ねなのだず思う。

    私が緩和ケア病棟に転院する前に気にするのが、WAONの残高ぐらいだったらいいな。

    了

     
     

    aokashi

     
     
    土朚業界で働いお10数幎。スヌパヌれネコンを経おメヌカヌぞ転職。忙しさから䞀床距離を眮いた分、子育おず自分の挑戊に向き合っおいたす。 遠回りしおきた経隓を、できるだけ正盎に曞いおいたす。 #コンクリヌト蚺断士 #技術士 #䞀玚建築士

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