恋しないで、恋する ep.4(3)
きっかけは何気ないLINE。
ちょっと息抜きに
どこか行こうという流れになる。
行く先は、遊園地に決定。
ー
当日。
改札で待ち合わせ。
いつも見てる私服の彼だけど、
(なんか…ちゃんとしてる)
シンプルなのに、やっぱり“顔がいい”。
「おはようございます。」
少し照れたように笑う彼。
「おはよう。」
いつもの敬語が、少しだけよそよそしく感じる。
⸻
電車の中。
向かい合って座る。
「今日、なんか雰囲気違いますね。」
「そうかな?」
「うん、なんか…ちゃんとしてる。」
その言い方に少し笑う。
「それ、どういう意味?」
「いや、いつももちゃんとしてるけど。」
少し言い直す感じが、逆にリアルで。
なんとなく、距離が近づく。
⸻
遊園地に着くと、
人の多さと音で一気にテンションが上がる。
「何から乗る?」
地図を見ながら並ぶ、彼との距離が近い。
肩が触れそうで、触れない。
「やっぱり、あれかな。」
一番大きいジェットコースターを指す。
彼が一瞬止まる。
「…いきなり?」
少し笑ってしまう。
「怖い?」
「いや、乗れるし」
ちょっと強がる感じ。
「じゃあ行こ。」
⸻
並んでる時間。
他愛ない会話が続く。
でも時々、沈黙も混ざる。
その沈黙が、嫌じゃない。
ふと、彼が言う。
「こういうの、誰かと来るの久しぶり。」
「そうなんだ?」
「うん。ていうか…」
少しだけ言葉を探して、
「紬さんと来れてよかった。」
不意打ちみたいに言われる。
一瞬、何も返せない。
「…わたしも、かな。」
やっと出た声が、少しだけ小さい。
⸻
ジェットコースター。
安全バーが下りて、隣が近くなる。
上っていくときの静けさ。
「やっぱ怖いかも。」
彼が小さく言う。
思わず笑う。
「大丈夫、だいじょーぶー。」
そう言った瞬間、急降下。
思わず目をつぶる。
そのとき、隣から——
ぎゅっと、手を掴まれる。
一瞬、何が起きたかわからない。
でもそのまま、離されない。
風とスピードの中で、手の温度だけがはっきりする。
⸻
降りたあと。
少しふらつきながら歩く。
でも、まだ手は繋がれたまま。
「あ、ごめんなさい。」
彼が気づいて、慌てて離そうとする。
でも、
「…大丈夫だよ。」
思わず言ってしまう。
そのまま、ほんの少しだけ握り直される。
今度は、さっきより優しく。
⸻
そのあとは、
観覧車に乗ったり、食べ歩きしたり。
気づけば、最初のぎこちなさはなくなって、
でも、“まだ恋人じゃない距離”はちゃんと残ってる。
⸻
帰り道。
少し疲れて、電車に揺られる。
肩が、軽く触れる。
離れない。
「今日さ、」
彼がぽつりと言う。
「楽しかった。」
「…うん」
「また行こ。」
“また”
その言葉に、全部詰まってる気がする。
「…うん。」
沈む夕日を横目に
今日だけはいつもより少しでいいから
日が長くなればいいのにと思いながら
彼の横顔を眺めた。
ー
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